2021年3月、美容エディターと化粧品ブランドPR担当をつなぐプラットフォーム「ビューティプレスボード」のver.3がリリースされます。開発したのは、アイスタイルグループ傘下の美容専門PR会社である株式会社メディア・グローブ。ビューティプレスボードの意図するところと、具体的にどのような場面で力を発揮するのか、メディア・グローブ代表取締役社長 小田直人に話を聞きながら、その全貌に迫ります。
ビューティプレスボードとは、これまで“人”に依存する面が強く、プレスリリースを紙で用意したり、貸出用商品を郵送したりと、全般的にアナログなコミュニケーションが多かった化粧品PRの世界を革新するものとして開発されました。化粧品PRに関わる人と情報を集約したワンストップのプラットフォームを構築することで、「美容エディターとブランドPR双方の負担を激減させ、新規参入ブランドは手軽にPRを始められ、既存ブランドは新たなメディアと出会える、そんな“化粧品PRへの入り口であり、マッチングの場となるサービス”を目指したもの」と小田は説明します。
株式会社メディア・グローブ
代表取締役社長 小田直人
美容エディターは、これまでブランド担当から配布される紙の資料に頼って最新の情報収集を行っていました。集められる情報数にも限りがあり、保管の問題やアップデート情報を得るための手間もかかります。また、ブランドPR側にも、貸出用商品の発送や問合せなどの労働集約的な業務の負担が大きいのが現状でした。そのうえ、双方にコネクションがなければ、お互いに得たい情報にたどりつけず、媒体との出会いの場が限られるなどの課題もありました。
この状況を解決するため、ビューティプレスボードは、新商品をはじめ、ブランド側がプレスに訴求したい商品情報の登録を可能にしました。一方、美容エディターはこのプラットフォームを通じて、ブランド名やメーカー名、キーワード、タグなどから化粧品の情報収集が簡単にでき、メディアへの掲載につなげることができます。ブランドPR側は、編集部との人脈がなくても、タグ付けなどの工夫で接点を持てるので、新たなプレスとのつながり創出にもなります。
同サービスのベーシックな機能は3つあります。
その1 商品情報の登録機能
ブランド側でプレスリリースや画像素材などの情報を登録・一元管理でき、プレスはそのデータベースから条件に合致する商品を検索可能。
その2 商品貸出機能
ブランドからプレスへの商品貸出機能で在庫のデータ管理から貸出受付、依頼状況の管理、将来的には掲載履歴のレポーティングまでが可能。
その3 情報配信機能
ブランドがプレスに対し、「リリース」や「発表会の招待状(※)」を配信することが可能。※搭載時期未定
これらの機能が全て1つのプラットフォーム上で完結するかたちで、オンラインで利用できる、それがビューティプレスボードです。
ビューティプレスボードが複合的にもたらす実務の改革は多々ありますが、とくに商品貸出においては、在庫管理から受付、依頼メディアの確認までの商品貸出にかかるプロセスをプラットフォーム上で行える点が注目されています。
小田は「撮影やテスターとしての商品貸出はブランドPRの基本的な業務だが、アナログ作業で工数がかかる。大手ブランドは取り扱う商品数も多く、在庫管理や問い合わせ対応に人的リソースが大きく割かれている現状で、ビューティプレスボードを利用すれば、こうした商品貸出業務の大幅な効率化が見込める」と話し、あわせて、商品貸出のオンライン化は、化粧品PR業務を請け負うPR会社にとってもメリットがあるとします。ビューティプレスボードを通じて、作業負荷が軽減されることで、従来以上に多くのブランドと契約ができるだけでなく、定型業務から広報戦略立案やプランニングなどのコンサルティング業務などに、より時間を割けるようになるからです。
また、美容エディターとブランドPRの一連のやりとりをログとして残せる点もポイントです。たとえば、ブランドPR側では商品貸出の記録から、どのメディアに何のアイテムが、いつどのようなカタチで掲載されたのか(※)、担当した編集・ライターが誰かなどの履歴が見られるようになります。※搭載時期未定
ビューティプレスボードの開発を指揮した株式会社アイスタイル データベース統括センター長でメディア・グローブ取締役でもある勝並明子も、「これまでプレスへの取材誘致やリレーション活動は、担当者の経験や勘に頼ることが少なくなかったが、ビューティプレスボードを利用すれば客観的なデータに基づいて、より効果的に行える」と指摘します。
こうしたPR業務の可視化により、前述以外にも業務効率化や付加価値の創出が期待できます。
3月リリースのver.3では、ブランドが商品ごとに管理タグを設定できる機能を搭載しており、プレスからの商品問合わせに対し、タグから一括で商品検索し回答することができるほか、スタッフの知識や経験の差による提案のバラつきもなくなり、作業効率化も実現します。さらに美容エディター側では商品ページから最新リリースのダウンロードも可能で、作業のスピードアップにつながります。
また、ビューティプレスボードに登録のある全プレスに向けて、発表会など商品告知イベントの招待状の発送ができます。もちろん、招待したいプレスを選択して送ることも可能になります(※)。※搭載時期未定
加えて、ブランド側は過去の貸出依頼も閲覧でき、どのメディアからの依頼が多いのか、どのような掲載企画があったのかが確認できます。こういったデータをマーケティングや営業担当者に共有することで、トレンドや状況分析に役立てることができるほか、販売や小売店の棚どりといった活動のための参考資料として活用できます。
メディアからの貸出依頼一覧のページ概要。
エクスポート(※)すればデータ分析にも使える。※搭載時期未定
勝並は、「プレスリリースの配信や商品貸出などで得られるデータからメディアリレーションの全容を可視化し、ブランドにとってPR活動がよりよいものになるよう支援したい。プレスに対しても、新商品情報をいち早く届けたり、ビューティプレスボード独自に企画のネタを提供したりすることで、コンテンツ作りやメディアの価値向上に貢献できると考えている」と意気込みます。
ビューティプレスボードは現在、メディア・グローブとリテナー契約をしている80ブランド様と約570名のプレス様が利用しており、2021年4月からは新規ブランド様の受付も開始する予定です。
将来的にはプレスだけにとどまらず、生活者に影響力を持つKOL(キーオピニオンリーダー)、インフルエンサーや消費者オピニオンリーダー、美容部員などとブランドをつなぐプラットフォームへと進化させ、より機能的なPRの世界を実現したいとする小田は、この新しいPRの在り方を”PR5.0“という言葉で表現します。
PR1.0の世界では、ブランドPRは、会社を訪ねてくる編集者から対面で特集の企画説明を聞き、ブランドにふさわしい内容かを判断して商品の貸し出しを行っていました。PR2.0では、編集者がFAXで取材・商品貸出を依頼してくるようになり、PR側はプレスキャラバンや新商品発表会を企画するようになりました。PR3.0の今はメールが連絡の主流になっており、それがビューティプレスボードの利用によってPR4.0へと進化します。では、PR5.0ではどんなことが起こるのでしょう。
「PR5.0では、プレスだけでなく、KOLと呼ばれるインフルエンサー、YouTuber、ライブコマース事業者など、美容に関わるキーパーソンとブランドがプラットフォーム上で直接つながることのできる世界をイメージしている」と小田は語ります。そして「美容PRをするうえでマストハブなサービスとしてビューティプレスボードを育て、ゆくゆくはアジア、そしてグローバル進出も果たしたい」と意欲をみせます。
ビューティプレスボードは、アイスタイルが持つデジタルの知見とメディア・グローブのPRの知見を掛け合わせて生まれたものであり、両社は今後、アイスタイルが展開するクチコミサイト@cosmeとのデータ連携も進めていく考えです。
@cosmeとビューティプレスボードに登録される商品IDを連動させ、同じくアイスタイルが運営する化粧品ECの@cosme SHOPPINGの売れ筋情報と掲載実績のデータを組み合わせれば、アイスタイルのマーケティング支援プラットフォームのブランドオフィシャルを通じて、PR効果による販売実績も可視化できることが予想されます。これが実現すれば、ブランドPR側は、感覚だけに頼らないデータドリブンなメディアPR戦略を描けるようになるでしょう。
これは美容PRの在り方を変えるだけでなく、メディア・グローブにとっても労働集約型からサブスクリプション型へとビジネスモデルの転換を図る取り組みとなります。新型コロナウイルス感染症流行の影響により、これまで重視されてきた「人(=プレス)と会うこと」が容易ではないなか、PRにおいてもオンラインでのつながりの創出やコミュニケーションのニーズは高まっており、ビューティプレスボードはコロナ下におけるPR活動を支援するサービスとしても期待されます。
Top image: Shiny Diamond via Pexels
画像提供:メディア・グローブ