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化粧品広告起用モデルから感じる多様性とは

作成者: @cosme for BUSINESS編集部|Aug 16, 2022 3:00:00 AM

アイスタイルには、「日本最大のコスメ・美容の総合サイト@cosme(アットコスメ)」の膨大なデータ群を分析し、マーケティングに活用する「リサーチチーム」があります。1,800万件を超える膨大なクチコミはもちろん、アクセスデータや意識調査やインタビューを通して、消費者に触れ続けているリサーチチーム。そんな彼らの知見をご紹介します。今回のテーマは「化粧品広告起用モデルから感じる多様性とは」です!

はじめに

昨今、化粧品の広告には、いわゆる顔立ちの整った有名女性モデルだけでなく「性別、国籍、職業、知名度」などを問わない様々な人たちが起用される機会が増えている印象を受けます。背景には男性化粧品ユーザーの増加や、「人や国の不平等をなくそう」といったSDGsの取り組みに力を入れる企業が増えていることなどが挙げられるのではないでしょうか。では、果たして生活者は「広告モデル」から「多様性を尊重する」というメッセージを受け取っているのでしょうか?

株式会社アイスタイルではこのほど、運営するサービス@cosmeのプロデュースメンバーである、15-59歳女性 9,513名を対象に、「化粧品の広告モデル」に関するアンケート調査(以下、アンケート)を実施しました。その結果、「多様性」について考えるうえで大切にすべきポイントがいくつか見えてきました。

多様性が尊重されていると感じるのは「様々な人種・国籍」の人、「様々な顔立ち」の人が6割台でほぼ同率

まず7つの選択肢を提示し、化粧品広告にどういった人たちが起用されていると「多様性が尊重されている」と感じるのかを複数回答で聴取しました。(※7つの選択肢は事前に実施した予備調査から決定)

 「様々な人種・国籍」の人、と「様々な顔立ち(まぶたの形や顔の大きさ、にきびやそばかすがあるなど)」の人がそれぞれ6割台半ばと高く、次いで「男性」「LGBTQ(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー・クエスチョニングの総称)」の人が5割台で続きます。

<図1>

Z世代では「様々な顔立ち」の人がトップ、全体4位の「男性」も3位に浮上

続いて、年代別の受け取り方の違いをみてみると、大きく分けて以下の2つのことが分かりました。

1. 若年層でより「多様性」に対する感度が高いと思われる
2. Z世代を含む10代、20代の順位は全体傾向と異なる

<表1>

1. 若年層でより「多様性」に対する感度が高いと思われる

まず今回調査を行うにあたり、普段多様性をあまり意識していない人たちにとっては「以下の人たちが起用されている広告は、『多様性が尊重されている』と感じますか」という質問自体を理解することが難しいのではないか、と社内で議論を繰り返し、「分からない」という選択肢を用意したうえで実施に至ったという経緯がありました。

 結果、「分からない」選択者は、全体の1割強とやはり一定数存在することが分かりました。しかし、その比率は若年層になるにつれ減少傾向がみられています。最近では学校の授業でSDGsについて学ぶ機会も増えているようですが、こうしたデータからも若年層の感度の高さをうかがい知ることができます。年代問わず、今後よりその感度が高まっていくであろうことが予想されますが、Z世代がその担い手となるのは間違いないでしょう。さらに、その選択傾向が異なることが興味深い点です。

 2. Z世代を含む10代、20代の順位は全体傾向と異なる

図1で示した通り、「多様性が尊重されていると感じる」との回答が多かった上位2項目についてはそもそも僅差ではあるのですが、10代、20代では「様々な顔立ち」がトップにあげられるなど、全体傾向と異なる点が注目されます。若いうちは、まだ自分に合ったメイクやスキンケアが分からないという人たちも多いことから、いろいろなタイプの顔立ちの方が起用されることで、自分が使用している姿をイメージしやすい、ターゲット外と排除される気持ちが起きにくいのかもしれません

また、「男性」についても他の年代より上位に位置しており、ポジティブに受け入れられている様子がうかがえます。

一方、広告でみたことがあるモデルで5割を超えるのは「様々な人種・国籍」「男性」モデルのみ

 このように項目により高低はありますが、多くの生活者が起用する広告モデルから「多様性を尊重する」というメッセージを受け取っていることが分かりました。しかし、これらのモデルが起用されている化粧品の広告を目にする機会は決して多いとは感じられていないかもしれません。

以下の図は、同一の選択肢で聴取した次の2問の結果を組み合わせて表示させたものです。

縦軸: Q. 以下の人たちが起用されている広告は、「多様性が尊重されている」と感じますか。あてはまるものをすべてお選びください。(いくつでも)

横軸:Q. 以下の人が起用されている化粧品の広告を見たことがありますか。(いくつでも)

 <図2>

横軸の「広告で見たことがある」項目で5割を超えるのは「様々な人種・国籍」「男性」が起用されている広告の2項目のみであり、かつその2項目も6割に達していません。

特にグラフエリア左側にプロットされた「標準体型でない」人(プラスサイズモデルなど)、「LGBTQ」の人、「ハンディキャップ、障害をもつ」人の3項目については、平均を下回りました。

「標準体型でない人」においては「男性」と同等、それ以上に「多様性」を感じられる可能性のある項目であるだけに、「多様性」という視点で考えると、さらに目にする機会が増えることが望まれます。

多様性を感じられる広告モデルを起用する企業を応援したい。しかし購入は慎重

次に、図1に示した7つの選択肢のいずれかに対して「多様性が尊重されている」と感じる、と回答した約85%の人たちに対して追加の質問を行いました。

<図3> 
※2問は順序効果を排除するためランダムに表示させているこうした人たちを広告モデルに起用している「ブランドや企業を応援したいと思うか」という問いに対しては、「そう思う」の合計が6割を超えたのに対し、「商品を購入したいと思うか」に関しては4割にとどまりました。

購入となると、効果感や使用感などより重視する項目が増えることが予想されるため、納得の結果とも言えるでしょう。しかし、そのギャップを埋める努力はできるかもしれません。

大切なのは「自分らしさや人それぞれの美しさの尊重」

図3の結果をA.「応援したい/かつ購入したい」と思う人たちのグループと、B.「応援したい/が購入は別」と思う人たちのグループに分け比較しました。

グループAでやや年代が若く、「化粧品を選ぶ時は、環境への配慮やSDGsへの取り組みを重視する」といった嗜好性を持つ人が多い傾向がみられました。

しかし、最も違いがみられたのは、広告に対して「自分らしさや人それぞれの美しさを尊重しているように感じる」かどうかについての回答でした。

購入意向につながるグループAでは、5段階中TOP1である「そう思う」の回答が6割を超えているのに対し、購入意向につながるかどうか分からないグループBは4割強にとどまります。

<図4>

もちろん商品力が高いことが前提の話にはなるかと思いますが、「自分らしさ」を認めてもらっている、「尊重されている」と感じてもらえることが、購入に近づく一歩となり得るのではないかと感じています。

おわりに

最後に、アンケートに寄せられた10代の女性の意見をひとつご紹介します。

可愛いだけでなくかっこいいキャッチコピーやネイビーなどのかっこいい色を使った広告が増えたと思います。しかし私は可愛いコンセプトを持ったブランドも好きなので、そういったブランドはあまり多様性を追求しすぎずブランドのコンセプトを維持していって欲しいと思っています。(19歳/学生)

「多様性の尊重」というと誰もが使えるようなブランドや商品をイメージしがちですが、あらゆる価値観を認めることこそが大切なことであると再認識させられます。

また、アンケートでは約3割の方が、図1に示した7つの選択肢の人たちが起用されている広告に対し、「『多様性を尊重する』という価値観を押し付けられているように感じる」と回答しました。またさらに興味深いのがその比率が若年層でより高いことです。

多様性を尊重する流れは今後もより進むことが予想されますが、生活者の意識や知識の深まりに追いつくように、日々考えをアップデートしていく必要性を感じています。

■調査概要
化粧品に関するアンケート
調査地域 :全国
調査方法 :Web調査
調査時期 :2022年3月28日(月)~30日(水)
調査対象者:@cosmeプロデュースメンバー/全国/女性/15-59歳
(@cosmeの年代構成比に合わせ割付)
調査対象者数:9,513名

>>結果詳細はこちらをご覧ください