アイスタイルのリサーチチームが@cosmeに投稿されたクチコミトレンドについて考察する本コラム。夏の暑さもおさまり、だんだんと秋の気配が見え隠れする9月。季節の変わり目である秋冬に向けたユーザーたちの気持ちの変化をクチコミから読み解きます。
※本コラムは、@cosmeトレンド情報便2023年11月版でお届けしている<2023年9月度 @cosme投稿クチコミからみる、最新トレンド>の内容をリサーチチームに解説いただいています。>トレンド情報便はこちら
アイスタイル リサーチチーム (左から)西原羽衣子、原田彩子
西原 夏の暑さもだんだんと落ち着いて、朝夕の寒暖差がはっきりした9月はいわゆる季節の変わり目として、ユーザーの動向も活発になってくる季節です。ファッションと同様に新しい季節の準備の気分にさせてくれるのということですね。
原田 例年、化粧品業界では春夏・秋冬と新製品発売の季節を迎えますが、今年は新製品というよりも既存品の動きがユニークだったと思います。既存人気商品のトライアルセットが出たり、お試しサイズとして、機能はそのままに小型化されたアイテムであったり。生活者をワクワクさせる試用体験の提供というのが各社の狙いにあったのかと思います。
西原 化粧品の選び方が多様化してきて、黙ってても商品が売れる時代ではないということは、すでにブランドも認識していることと思います。変わって「このブランドは試用コスメだけれども使って楽しい」などの、生活者がブランドの人柄というものを求めているという傾向があるのではないかと推測しています。商品の体験と合わせてこのあたりがこれからのブランディングやマーケティングの課題となるのではないでしょうか。
原田 また9月は大阪・梅田に@cosme OSAKAという第2の旗艦店がオープンしました。様々なブランドの化粧品が試せるようになり、待ち焦がれていた西日本にお住まいの幅広い年代のお客様にとって、そこはまさに化粧品のルツボとなっているようです(笑)。
西原 そのほかにも9月のクチコミの動向とし、大人女子が活発だった印象です。話題となった資生堂のインウイの復活では、ブランドを懐かしむとかレトロブームというわけではなく、この大人女子世代が盛り上がりをけん引していたのではないでしょうか。
原田 ただこれからもまずはZ世代と呼ばれる若い世代から火がついて、しばらくしてから大人女子世代へと波及してくるという、これまでのパターンが大きくは変わるということではなさそうです。
※ピックアップキーワードはまだN数が少Niない「兆し」を捉えたものとなります。全体的なトレンドではありませんのでご注意ください。
原田 「リードルショット」は韓国ブランドのVT(ブイティー)から発売されている導入美容液ですね。チクチクというかピリピリというユニークな使用感が若い世代を中心にウケているようです。ニードルというと針を連想させて美容医療とかそういうイメージが強いみたい。
西原 ネーミングからしても効果がありそう、美容医療並みかも、という点が生活者の期待値を底上げしているのかもね。
原田 肌に使った瞬間にチクチクという使用感があるので、何か入ってるなというのがとてもわかりやすい商品ですね。美容鍼の認知があってこその商品だと思うけど、強さ?濃度?が数種類あって、商品としてのユニークさが若年層を中心に話題になっているんじゃないかな。
西原 これまでも大人女子向けに同じようなエイジングケア商品はあったけど、この商品のクチコミを見る限り、ニキビが治るとか、肌の新陳代謝がよくなるとか、毒素を出してくれるとか、今どきの若年層のニーズにうまくフィットしてるって感じがする。
原田 そのほかに、韓国コスメを中心に話題となっているのが「バイオーム」。本来、菌の一種という意味のことなんだけ投稿されたクチコミの中では、ビタミンCなどの他の成分と同じように「バイオーム配合」という感じで扱われています。やっぱりみなさん、成分が気になるようで。
西原 自分たちの肌が、体が健やかであることを良しとする傾向から受け入れられているんじゃないかな? コロナ禍を経て、ヘルシー志向で健康に対する意識が高まっているという流れが大きく影響しているのかもね。その他にも毛穴が開いていると刺激がある化粧水とか、肌の悪いところだけが反応するマスクとか、いわゆる肌の状態がわかる診断系のコスメが支持されているということからも、自分の肌のこと、体のことをまずは知りたいという気落ちがベースにあるのかもしれないね。
原田 ここ数年のマスク生活の中で、このベースメイクというジャンルは本当に厳しかったということもあって、ここにきてやっとメイクをする気分になったんだな!という久々のファンデ熱を感じます。コロナ禍で、仕事は家でするし、外出もできない、とすっかり変わってしまった生活スタイルのように、ベースメイクも今日はファンデを塗る、下地だけにするというように日によって使い分けるということなのかもしれないね。
西原 コロナ禍ではファンデ未満の“下地”が欲しかったんだけど、ここにきて下地っぽい仕上がりの“ファンデ”が欲しいということなんじゃないかな。つまり、今回のキーワードである「新作ファンデ」、「下地以上ファンデ未満」共に求めているのはずばりファンデ。欲しいナチュラルな仕上がりは同じなんだけど、下地じゃなくて今はファンデでそれを作りたいっていう気持ちにアガってきているんだと思う。
原田 「この商品はファンデ?下地?」という風に、ブランドさんの商品の売り出し方によって、生活者のコスメの選び方も変わるかもね。今は下地じゃなくてファンデが使いたい気分ということなんだと思う。まさしくそれはメイクをしたい!という気分の現れだと(笑)。
西原 「日本限定色」は韓国ブランドさんの生き残り作戦ではないかと思って(笑)。もう定番化してきているこの韓国コスメというジャンルをブームではなく、定着化させる話題作りではないかなと思っています。そのほかにも日本ブランドと韓国ブランドのコラボアイテムも続々発売されてますから、これからまだこういったキーワードも注目されるんじゃないかな。
原田 使用者の拡大によって、ジャンルが広がり、コスメ選びの幅がますます広がっていくかもしれないね。
原田 実はヘアケアカテゴリにおいて「タンパク質配合」というのが来るのではないかと予想してます。どのジャンルにも当てはまりそうなこのタンパク質という人気成分がだからこそ、ヘアケアにもいいんじゃない?という新しいコミュニケーションを生んだんじゃないかなと。
西原 去年あたりからのツール系へのニーズが高まりの中で、付属品のキーワードも目立ってきたね。このプリマヴィスタはいい例だと思う。この「ローラー」の使用感がクチコミでとても話題になってて、ここ最近、このほかにもブラシだったり、スポンジだったり、こだわりのツールというのを各メーカーさんが細部までめちゃめちゃ工夫されているのがとってもよくわかる。生活者のコスメ選びの1つの基準にこの付属品選びというのもあるんじゃないかな。
原田 最後、インフルエンサー化け子さんが言っている、イエベ・ブルべでもなく、老化が進んだちょっとくすんでいる肌を指すのがこの「オバベ」。ちょっと上の年代の生活者から「ちょっと私に似合わないんだよね」といった若い子向けの商品へのクチコミに増加中です。
西原 この年代になるとイエベ・ブルベが似合わないということが起きてきて、「あ、私はオバベなんだ」と思う人が多いってことなんじゃないかな。生活者たちにうまく受け入れられているんだと思います。
暑かった夏も終わり、秋の準備が始まった9月。季節のはざまで生活者たちの気持ちの変化もクチコミに現れ始めたようです。本格的にメイクがしたい気分になってきていたり、お肌の調子に合わせて今までとは違った価値観でコスメを選んでみたり。さて、来月は寒くなってお肌に厳しい季節の到来。生活者のみなさんの気になるキーワードは⁉
Text:@cosme for BUSINESS編集部