Siriporn Pimpo Image via Shutterstock
クリーンビューティの潮流の中、化粧品原料として食品加工の過程で生じた農産物の残さを活用する動きがあります。従来「捨てるしかない」「使い道がない」と考えられていた廃棄物や未利用資源を、新しい発想で高品質の原料へと生まれ変わらせている国内外原料メーカーの4事例をご紹介します。
スイスに本社をおく香料のリーディングカンパニーであるジボダンと、コロンビア出身の起業家によりデンマークで設立されたバイオテック関連スタートアップKaffe Buenoは2020年6月、ドリップ後のコーヒー滓から高品質のオイル「Koffee’Up」の製造に成功しました。肌の保湿や保護、アンチエイジングなどに効果があることから「新しいアルガンオイル」と称し、ジボダンでは自社ブランドのGivaudan Active Beauty から同オイルを配合した目元用ジェルを商品化しています。
ジボダンは、サイエンスやテックから食品まで幅広い分野のヨーロッパのスタートアップを支援するアクセラレータープログラム「MassChallenge Switzerland」にパートナー企業として参加しており、Kaffe Buenoとの協業は、同プログラムを通じてのものです。
Kaffe Buenoによると世界中で消費されているコーヒー豆は年間90億キログラム以上。同社はこのほどシードラウンドで110万ユーロ(約1億3,000万円)を調達しました。2021年から2022年にかけて、さらに新しい化粧品原料などを市場に投入し、スケールして行く計画です。
出典:Herbarom公式サイト
仏植物由来原料メーカーのHerbaromは、リンゴのお酒シードルの製造過程で生じるリンゴの皮や芯などを利用して作った蒸留水をスキンケア商品などの原料に提案しています。リンゴのフルーティで甘い香りを持つ蒸留水は、エコサートから99.3%オーガニックの認証を取得済みです。廃棄物を減らすだけでなく、農家の収益にもつながる取り組みで、2020年はオンライン開催となった化粧品の国際見本市「コスメティック360」(毎年10月中旬にパリで開催)の「e-Cosmetic Awards」の原材料部門を受賞しました。
日本にも従来廃棄されていた農産物の食品加工残さから化粧品原料を製造している企業があります。東京と岩手県奥州市に拠点をもつファーメンステーションです。主力商品は、休耕田を利用して育てた有機JASオーガニック米で製造した「プレミアムエタノール」。収穫した米を丁寧に砕き、そこに麹や酵母を加え、もろみを発酵させてじっくりとエタノールを抽出します。石油由来のエタノールに比べ、低刺激でほのかにお米の香りがするエタノールは、付加価値の付くオーガニック原料として高い評価を得ています。USDA認証、エコサートコスモス認証も取得しています。
同社では、エタノール抽出後に残った発酵かすも化粧品の原料や鶏や牛の餌に利用。さらに、その家畜ふん堆肥を畑や田んぼの肥料にするなど、ごみを出さないサステナブルな循環に地域コミュニティーと共に取り組んでいます。
2020年10月には、JR東日本スタートアップ、アサヒグループホールディングスの独立研究子会社アサヒクオリティーアンドイノベーションズとシードル原料のりんごの搾り残さから高濃度アルコール「りんごエタノール」を精製し、そのりんごエタノールを配合したウェットティッシュを全国で発売するなど、メーカーや研究機関との協業も進めています。
画像提供:サティス製薬
D2Cブランドに特化した日本のOEM企業、サティス製薬もこれまで廃棄されていた農産物の残さに目を向けています。同社は、国産植物から化粧品原料開発を行う「ふるさと元気プロジェクト」を進めるなかで、むき栗の製造過程で生じ、これまでは廃棄されていた和栗の皮に、合成セラミドよりも人間の肌のものと近い構造を持つ“ヒト型セラミド”が豊富に含まれていることを発見。同成分の抽出・精製に成功し、「植物ヒト型セラミド」と名付けて2020年4月に特許を取得しました。
独自処方によって従来の合成セラミドより浸透性を高めた同原料は、化粧品に配合すれば保湿効果や肌のバリア機能改善などが期待できるとして、同社のOEMで今後活用していく方針です。