2022年1月12日〜14日の3日間、東京ビッグサイトで開催された大規模見本市「COSME Week 東京 2022」から、とくに注目すべきトピックスとして「サステナブル容器」「アジアコスメ」「CBD」をとりあげ、その最新トレンドを紹介します。
「COSME Week 東京2022」は、今年初開催となる「第1回化粧品マーケティングEXPO」のほか、「第10回国際化粧品展」「第12回化粧品開発展」「第5回美容・健康食品EXPO」「第2回国際エステ・美容医療EXPO」の5つの展示会が同時に開催され、513社が出展、2万3,267名の来場がありました。
展示会場では、SDGsバッジを身につけた企業担当者や、目立つ位置にサステナビリティやエコの文字を掲示する企業ブースが多くみられ、「以前よりもエコパッケージへの反応がよく、サステナブル対応アイテムの案内に人気が集中した」との声も聞かれました。
そんななか目立ったのが、サステナビリティに力を入れている容器関連の展示です。化粧品・トイレタリー容器メーカーの株式会社ツバキスタイルは、新シリーズの「二層エアレスデラミ容器」と「二層肉厚容器」を展示。業界初となる二軸延伸ブロー(水平垂直方向の2軸延伸工程を設けた成形法)でのPEボトル成型を実現し、気密性が高く、耐久性や耐薬品性に優れたボトルを、環境負荷を少なくして生み出すことを可能にしました。製造過程で無駄なバリ(金型の隙間に成形材料が流れ込み、固化した不要部分)が発生しないため、再加工時のCO2を削減できるだけでなく、切削・粉塵による汚染の心配もないとしています。
同社はリサイクルにも積極的で、2021年6月に循環型リサイクルのためのグループ会社として株式会社BEAUTYCLE(ビューティクル)を立ち上げ、佐賀県神埼市にリサイクル工場の建設を予定しています。BEAUTYCLEには化粧品容器を扱う株式会社グラセルも資本参加をしており、ツバキスタイルとグラセルの空き容器を回収し、洗浄・粉砕して樹脂にするリサイクルを行っていきます。
一方、総合包装企業の株式会社カナエは、2021年からコスメの試供品に適したエコパウチの取り扱いを拡大しているといい、紙識別マークの表示基準をクリアした、環境負荷低減を訴求できる紙素材のパウチなどを取り揃えています。日本国内ではポリプロピレンのリサイクルが難しいことから、紙マークをつけられる紙素材に注目が集まっているのです。ただし、カナエがパッケージで使用する紙素材は海外からの輸入のため、コスト増になるなど、サステナビリティへの配慮とコストが天秤にかけられるケースもあります。そこで、蓋材のみ紙製に変更することで、プラスチック使用量を削減したポーション容器など、新たなパッケージの開発もしています。
出典:カナエ公式サイト
そのほかにも、従来品に比べてプラスチック使用率を58%削減しながら、従来と同価格帯で提供するバースバンク株式会社のラミネートチューブ「VEGAN BOTTLE」など、サステナビリティ関連商品の展示は多くの来場者を集めました。
また今回の展示で目を引いたのが、配送に対応する容器やパッケージです。ポストに投函できる形状などの製品は、コロナ禍によるEC化の加速やD2Cブランドの増加により、この1〜2年で人気が高まっています。梱包材の株式会社クラウン・パッケージでは、ポスト投函が可能な厚み20〜30mmのボックスの需要が増えており、下記の画像のように緩衝材不要のはめ込み式ポストインボックスなども開発しています。
前述のグラセルからは、メール便に対応する薄型容器が登場。チューブタイプなどのほか、ローションや香りものを入れる薄型ダイレクトPETボトルやダイレクトPPボトルは22.6〜25mmに厚みを抑え、容器の印刷面を広く確保しています。
また、配送時にパッケージの隙間を埋め、配送物を保護するために使用されるエアー梱包材をブランディングや認知の一環としてとらえる動きもあリます。株式会社ネクサスエアーの新商品「フレグランスエアークッション」は、エアー緩衝材のなかに、香りのついた空気を封入することができ、消費者がエアー緩衝材を潰すと香りがたつ仕組みとしています。香りやラベルはオリジナルのものを使用できるので、香りのサンプルとしての活用も可能です。
出典:ネクサスエアー公式サイト
同様のエアー緩衝材は海外でも話題になっており、SCジョンソンの消臭芳香剤「グレード(Glade)」が米ウォルマートのECサイトで行った施策では、自社商品の香りをエアー緩衝材に封入。ECでの購入者に緩衝材として届け、香りが気に入ったらエアー緩衝材にプリントされた商品購入リンクを読み取ることで、同じ香りの商品が購入できるようにしました。
過去5年ほどで韓国コスメを中心にアジアコスメの人気が高まり、化粧品専門店だけでなく、ドラッグストアやコンビニなど取り扱う小売店が増加しています。それに伴い、日本に本格進出するアジアコスメも増え、今回の見本市では未上陸ブランドや新しい提案の商品が多く見受けられました。
韓国コスメの仕入れを行う株式会社KOLLECTIONが展示した日本未上陸の歯磨き粉「TOOSTY」はお菓子を食べているような“おいしい歯磨き粉”という新しいコンセプトの商品です。味はカスタードプリンやルッコラ、チョコミントなどで、それぞれ歯茎・虫歯ケアや口臭ケアなどの機能も備えています。
また同社が紹介する日本未上陸ブランド「UTTER(アーター)」は消毒液とは思えないスタイリッシュな商品を展開するなど、他社製品とは見ためで差別化を図っています。
このほか、株式会社WEGO JAPANは、日本ではめずらしいゴルフ用パッチケア「ビーバースゴルフ・ホールインワンゴルフパッチ」を展示。韓国では若い世代にも人気のスポーツとしてゴルフが普及しており、ラウンド中の紫外線による肌への影響を抑えるため考案されたのが、目元に貼る「ゴルフパッチ」です。紫外線カット素材で日焼けを避けるだけでなく、コラーゲン、ヒアルロン酸成分を配合して肌ケアも行います。
一方、韓国コスメに劣らない注目を集めたのが中国コスメです。日本でも展開する「COLORKEY」「Girlcult」などの輸入代理店ライフスタイルカンパニー株式会社のブースは盛況で、同社広報担当者は「2021年より39%ほど多くの方がブースに立ち寄った。昨年は質問の多くが『中国コスメとは(何なのか)』だったが、今年は『中国コスメ・アジアコスメの各ブランドの違いについて』といった踏み込んだ質問が多く、中国コスメに対する認識が高まったと感じた」と話します。中国コスメは昨年多くの新規上陸ブランドが登場、2022年はその人気にどう拍車がかかるかに期待がかかります。
2021年に引き続き、同展にはCBD(カンナビジオール)関連企業・ブランドが多数参加しました。CBDとは大麻抽出成分の1つで、幻覚作用や中毒性がなく、神経に作用して深いリラックスをもたらす効果を持っています。一般的には、海外から輸入されたCBD成分を使用して商品を開発しますが、非大麻由来のCBDの活用も始まっています。
CBDコスメブランド「WALALA」を展開する株式会社バランスドと、健康食品原料や化粧品の企画、開発、卸を担う株式会社ヒロインターナショナルは、100%非大麻由来のCBDのOEM事業を協働で行っており、チェコのCBD原料製造業者CBDepotの有機化学合成CBDを用いた商品の企画・展開を可能としています。CBD原料仕入れはバランスドが、製造は自社国内工場を持つヒロインターナショナルが担当します。
また、カナダのカルガリーを拠点とする成分メーカーWillow Biosciencesは、植物の遺伝子情報を解読して独自の生合成プロセスを開発し、ビール酵母から発酵させた非大麻由来の高純度なCBG(カンナビゲロール)を製造・販売しています。大麻の栽培に必要な大量の水を使用することなく、天候などの影響も受けないので、植物由来よりもサステナブルな製法で安定供給が可能としています。
CBGはカンナビノイドの一種で、CBDやTHCなどの前駆体分子にあたり、抗菌作用があり、炎症を抑える効果が認められており、化粧品などへの使用が見込まれます。同社は2021年、シグナム バイオサイエンス(Signum Biosciences)と共同でCBGの臨床実験を実施し、ヒトの皮膚に局所的に適用した場合のスキンケアテストで、抗酸化作用、抗炎症作用、および皮膚の健康増進作用の利点をもたらすことを確認。その結果は、2022年に論文としても発表されました。現在は、英国の化粧品メーカー、Cellular Goods社がCBGをスキンケア製品の原料として採用しており、今後は日本国内の化粧品メーカーに向けて販路拡大を目指します。
展示会全体を通じては、サステナビリティ分野や海外コスメ・成分において、一歩進んだ商材や提案が見受けられました。なかでも大きな進展がみられたのは、オンラインでの販売やマーケティングに関連するもので、先に紹介した容器や梱包材のほかにも、化粧品マーケティングEXPOでは、動画コンテンツ制作やAI・ARなどのデジタル施策関連の展示が人気を集めました。新型コロナ禍の応急処置としてのデジタル施策から抜け出し、今後は本格的にデジタル/オンラインでの体験を豊かにする動きが進むことが見込まれます。
COSME Weekは次回、2022年9月に大阪、2023年1月に東京で開催される予定です。
Text & photo:臼井杏奈(Anna Usui)
Top images:COSME Week公式サイト