2024年8月29日開催のウェビナー「化粧品マーケティングにおけるUGCの重要性と活用のポイント」では、SNS投稿と@cosmeなどのクチコミをUGC(ユーザー生成コンテンツ)と定義。物価高のなか、生活者がSNSで見た情報を@cosmeのクチコミで確認し、コスパの良い商品を見極めている様子などを紹介するとともに、これらUGCの役割・活用ポイントを紹介しました。
ウェビナーには株式会社ホットリンク ソーシャルメディアコンサルティング本部 アカウント コンサルティング1部 美容事業部 渡辺李咲氏と株式会社アイスタイル @cosmeリサーチプランナー 西原羽衣子が登壇。
SNSマーケティング支援の実績を多く持つコンサルティング企業ホットリンクで美容事業を推進し、自身も国内化粧品メーカー2社でデジタルマーケティングやPR、ECサイト・SNS運用に携わった経験がある渡辺氏と、リサーチプランナーとして@cosmeユーザーへのインタビューやクチコミ分析を日々行うアイスタイル 西原がそれぞれの視点からUGCについて語りました。
渡辺氏は冒頭でホットリンクが提唱するSNS時代の生活者の購買行動プロセス「ULSSAS(ウルサス)」を紹介。これは、UGCが起点となって生活者の興味関心が高まり、その後SNSやメディアで検索を行い、商品を購入し、そして商品を購入した生活者自身もクチコミを投稿して、さらにそのクチコミが新しい生活者の興味関心の起点となっていく、というサイクルを表しています。
生活者は複数の情報源から情報収集を行い、商品を比較検討、吟味して購入に至っているのでSNS、@cosmeなどのクチコミメディア、どちらにもUGCがある状態が理想だと渡辺氏は説明します。
そして渡辺氏は「情報の信頼性が高い」「態度変容が起こりやすい」「シェアされやすく多くの人に届く」というUGCの3つのメリットを紹介します。
1つ目の「情報の信頼性が高い」は、情報過多の現代において、信頼性の低い情報が注目されない一方、UGCは友人・知人もしくはフォローしている美容系アカウントなど信頼している人からの発信される情報であるため、信頼されやすいという意味です。
2つ目の「態度変容が起こりやすい」は、情報の信頼性が高いからこそ、UGCに触れた側の心理として「気になる」「使ってみたい」「実際に買ってみようかな」といった態度変容が起こりやすいことを表します。UGCは認知だけでなく、その後の検索行動・購買行動まで動かすことができるのです。
3つ目の「シェアされやすく多くの人に届く」は、企業との利害関係のない第三者視点での発信だからこそ、共感を生みやすくシェアされやすく、そのため多くの人に届くという意味です。
渡辺氏は「@cosmeにクチコミのシェア機能はないが、『@cosmeで人気の〇〇』といった形で情報が伝播しやすい点は、これらUGCのメリットが現れているだろう」といいます。
一方アイスタイル西原は、「トレンドの把握」「商品認知」「商品比較」という購入までの各段階において、生活者が@cosmeを高い頻度で利用していることをアンケート結果から紹介。生活者がSNSで見た情報を@cosmeで確認している様子が確認できたことも紹介し、「物価高の今、生活者はSNSでバズった商品であっても、自分にとって最もリスクがなく、また最も得るものが多い商品を見極めるために@cosmeにクチコミを見に来ている」と解説します。
また、@cosmeがこのように購買の判断材料として信頼される公正なクチコミを蓄積していくために行なっている、純粋な商品体験の感想が集まる文化づくりや、化粧品の情報を求めるユーザーにとって居心地の良い場所を維持する取り組みについても紹介。こうしたプラットフォームごとのポリシーや考え方を意識したうえで、UGC施策を行うことが大切だと提案します。
渡辺氏も「例えば、変わったコンテンツを作って話題化を目指したり、プラットフォームのユーザーにインセンティブを提示してキャンペーン形式で投稿数を増やす、といったバズマーケティングは、認知拡大においては有効な一方、ほとんどが一過性のものとなり、本来のUGCが持つ効果は発揮できない」と言います。そのうえで、「少なくとも半年~1年程度は成長投資が必要になるケースが多いが、質の良いUGCを積層させることで1度ULSSASが回り出せば、UGCが生まれ続ける好循環を作り出せる。まずはしっかりと腰を据えて、UGCの増加に向けて、ブランド特性に合わせた施策を行なっていくことが重要」と提案します。
そして、UGC(Xでのツイート数)とGoogleでの指名検索数、そして販売金額に相関関係が見られたホットリンクが支援したあるヘアケアメーカーの事例を紹介。「商材によって例外もあるが、基本的には良質なUGCが増えることで指名検索、そして購買が増加する」と強調します。
ウェビナーでは生活者が具体的にどのような UGCを参考にしているかについてもひも解きました。
渡辺氏は、SNS上のUGCは内容別に次のように大きく3つに分けられるといいます。
「推奨」
オススメ、愛用、推し、便利、良かった、お気に入り、感動、満足、リピート、使い切り、などのキーワードとブランド名(もしくは商品名)が一緒に語られるようなUGC
「行動」
使い始めた、使っている、買った、買ってみた、購入、ゲット、などのキーワードとブランド名(もしくは商品名)が一緒に語られるようなUGC
「認知・興味関心」
知らなかった、聞いた、教えてもらった、気になる、良いらしい、欲しい、などのキーワードとブランド名(もしくは商品名)が一緒に語られるようなUGC
そしてこのうち「行動」や「推奨」関連のUGCが検索行動や購買行動につながる「質の良いUGC」だといいます。
具体例として、いわゆる美容垢の界隈で投稿される、買った商品を紹介する「#コスメ購入品」、パレットの底が見えるくらい愛用しているという「#底見えコスメ」、また1つの商品を使い切った感想を伝える「#使い切りスキンケア」などといったハッシュタグがついたSNS投稿を渡辺氏は紹介しました。「実際にこれらのハッシュタグがついた投稿から大きく拡散されるものが多数生まれていることからも、こうした行動・推奨関連のUGCが生活者に大きな影響を与えていることがわかる」と渡辺氏は解説します。
西原も「@cosmeのクチコミ分析の結果も同じ」として、@cosmeにおいて参考にされているクチコミの分析結果を紹介。
@cosmeのクチコミのうち他のユーザーからLikeがされているクチコミとされていないクチコミとを比較したところ、サンプルを使った感想を書いたクチコミよりも実際に購入して書かれたクチコミのほうがLike数が多い傾向にありました。これは「同じ結果でもリスクを伴ってその結果を得ているのか。できるだけ自分に近しい状況のクチコミを読みたい」という心理の現れだろうと西原は解説します。
一度行った投稿に追記して再投稿できる機能であるクチコミの追記機能を利用するなどして「使用を始めて3カ月経過しました」といった時間経過による使用感がわかるクチコミや、リピート購入したことを記述しているクチコミもLike数が多い傾向にあるといいます。
また西原は「PRによるクチコミと、そうではない投稿との一番の違いは言葉の多様性ではないか」と紹介。「PR投稿は投稿者がどうしてもメーカーの期待する文言を書こうとしてメーカーの商品説明をコピペする割合が多い傾向が見られる。そうするとその商品を語る語彙が少なくなる。一方@cosmeでLikeを多く集めるクチコミは投稿者それぞれが多様な言葉で表現する」と指摘します。
さらに「一つの商品に対して寄せられるクチコミを長期的に比較した時、発売してしばらくはクチコミ内の語彙に多様性があるが、2年ほど経つと皆同じ言葉を使って同じようなことばかり書くようになってしまう。これをクチコミにおける商品の衰退期だと考えている」(西原)とし、「コピペの多いPR投稿は初めから衰退期のクチコミに近い内容だといえる。投稿者に自分の言葉で表現してもらえるようにすることがPR投稿の価値を上げるだろう」と提案します。
それでは実際に良質のUGCを増やしていくにはどうしたら良いのでしょうか。大きく4つのアクションが重要だと渡辺氏はいいます。
1つ目は「増やすべきUGCの定義を定めること」です。前述の「推奨」「行動」「認知・興味関心」の3種類のUGCのうち、どれを増やして、何をしたいのかの方針をきちんと立て、それに合わせた施策を取ることが必要です。ありがちな失敗ケースとして、検索行動・購買行動といった態度変容を促したいので必要なのは「推奨」「行動」のUGCであるのに、「引用リポストキャンペーン」で「認知・興味関心」のUGCを増やしてしまう、といったことを挙げ、注意を促します。
一方、@cosmeは実際に使用した体験のクチコミ、つまり「推奨」のUGCが多く集まるプラットフォームです。2024年6月発表の「@cosmeベストコスメアワード2024 上半期新作ベストコスメ」で大賞を受賞したアテニアでは、大賞受賞商品のリニューアル発売前から定期的に記事型の「体験型コンテンツ」でリニューアルのポイントやリニューアルにこめた想いを紹介するコンテンツを発信。また商品発売後には「オンライン体験会」を実施し、ブランドPR担当者も出演のうえでブランドの想いや商品の魅力、使い方を実際に@cosmeユーザーに商品を試してもらいながら伝えました。
そうした施策を経て集まったクチコミには商品の使用感だけでなく、ブランドの想いを代弁し、そこにポジティブな感想を加えたクチコミや、以前にリニューアル前の商品を使用したことがあったユーザーがリニューアル品を使用して「もっと好きになったのでまた購入します」といったクチコミも見られ、商品特徴だけではなく、商品やブランドに対して自分の言葉で熱く語っているクチコミが多くみられました。このように、ブランドの想い・商品特徴を理解してもらったうえで、第三者に熱量高く語ってもらうこともクチコミの質の面でとても大事でしょう。
2つ目は「語られやすい文脈を探る」です。自社・競合ブランドがSNS上で誰に・どのように語られているかをモニタリングしインサイトを得ることで、自社ブランドの場合はそれをさらに促進する施策を、競合ブランドの場合はそれを参考にした施策を講じることができるといいます。
またUGCは、企業側が意図していないコミュニティで発生していることも多々あると渡辺氏。あるヘアケア商品のUGCを投稿しているユーザーが、X上でどのようなコミュニティに属しているのかをホットリンクが独自開発した「コミュニティクラスタ」を分析するツールで抽出したところ、美容に興味関心を持つ層も多い一方で「コスプレイヤー」のコミュニティからUGCが多く創出されている、ということがわかりました。この例では、コスプレイヤーのコミュニティの会話を促進する施策により効果的にUGCを増やすことができるといいます。
また、語られやすい文脈を探すうえで、@cosmeでは、@cosmeに投稿されたクチコミの中でその月に初めて登場したワードや、出現率が大きく伸長したワードをピックアップする「クチコミトレンドキーワード」を毎月発表しており、無料で閲覧可能です。実際にどのような商品のどのような文脈でそのキーワードが語られているのかも紹介しており、これからトレンドになっていくかもしれない「トレンドの芽」として、同じような特徴の商品を持つブランドや、キーワードに絡めて発信が可能なブランドのコンテンツ作成に活かしていただきたいと考えています。
3つ目は「投稿ハードルを下げる」です。大前提として、「ブランド発信のコピーやハッシュタグを統一する」ということが非常に重要だと渡辺氏は強調します。
例えば、「このハッシュタグ、このキャッチコピーでUGCを増やしたい」という場合に、SNSだけでそのハッシュタグを訴求しているということがよく見られるとし、「実際の購入者はパッケージに具体的な記載がなければわざわざSNSを調べて『どんなハッシュタグを付ければよいのか』と調べることは基本的にない。購入者からスムーズにUGCを引き出すために、たとえばエリクシールの『つや玉』、SHISEIDOの『ファンデ美容液』のように、あらゆるタッチポイントで統一したコピーやハッシュタグの訴求を」と呼びかけます。
また投稿ハードルを下げることに関連し、@cosmeではサンプル配布サービスを行っており、こうしたサンプルを使用した体験でもクチコミが残されています。前述のように現品を購入し何度も使ったクチコミと比較するとライトな内容となり、他のユーザーに与える影響も弱くなることが多いものの、投稿のハードルを下げるという意味では、サンプリングも十分効果的な商品体験になりうるでしょう。
4つ目は「あらゆるタッチポイントを活用する」です。「SNS内でのUGC促進はあくまで『商品を持っているであろうユーザー』『興味関心層』が限界」だとして、検索行動・購買行動という態度変容に特に繋がりやすい「行動」「推奨」のUGC数を増やすためには、既にブランドに興味をもって来店してくださっていたり、商品を愛用してくださっていたりするお客様からUGCを引き出すことが最短の道だと、渡辺氏はいうのです。
具体的には、「店頭什器周り(棚・商品パッケージ・POP)でアプローチできることはないか」「CM等のマスプロモーションからUGC投稿を促せるきっかけはないか」「ポップアップイベント来場者からUGCを生み出せないか」と、あらゆるタッチポイントでのアプローチを検討することを意味します。
またUGCを増やすことや、SNSマーケティングを成功させるためには、SNSの担当者だけでなく、ブランド全体で関わる体制を作ることも非常に重要だと渡辺氏。「実際にブランドから話を聞くと、アカウント運用はSNS担当者、インフルエンサー施策やメディア施策はPRチーム、広告配信は広告チーム、といったように縦割り型の組織でそれぞれに取り組んでいる。ぜひブランドの総力をあげて『UGCを増やすために皆で何ができるか』と、チーム横断で会話を始めるところから始めていただきたい。ホットリンクのような支援会社など、第三者のサポートもご活用いただければ」と締めくくりました。
ホットリンクとともに、アイスタイルでも記事中でご紹介したように体験機会を創出できる@cosmeのサービスを展開しております。目的、内容にあわせ、その具体的な活用事例までもご紹介可能ですので、お気軽にお問合せいただけますと幸いです。