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スキンケアD2Cアジャイルコスメ、ユーザーの声にもとづく共創で2年連続2桁成長

作成者: @cosme for BUSINESS編集部|Aug 30, 2021 5:00:00 AM

顧客の声をもとにブランド体験をアップデートするスキンケアD2Cの「AGILE COSMETICS PROJECT(アジャイルコスメティクス プロジェクト、以下ACP)」は、laboratory株式会社が手掛けるブランドで、2018年のローンチから2年連続で二桁成長を遂げています。それを支えているのが、顧客と直接つながるD2Cの特性を活かした共創によって支持を拡大する取り組みです。

アジャイル開発で継続的にアップデート

ACPは、ブランドのネーミングにもある通り、改善サイクルを回すアジャイル開発とユーザーを巻き込むプロジェクト型の手法をブランド体験に組み込んだスキンケアブランドです。立ち上げの背景についてlaboratory株式会社 PR担当の赤阪裕実氏は次のように説明します。

「生活や情報サイクルが早まる時代に、製品の発売や改良に23年を費やす従来型の商品開発では対応しきれない状況が生まれている。お客様もモノがあふれる時代に必ずしも新しいモノを求めているわけではない。むしろ自分のライフスタイルに合った心地よいモノ、自分が本当に好きなモノを求める価値観にシフトしている。そのようななかで、アジャイルな手法を採用し、常に最新で最良の製品にバージョンアップすることで、使い続けてもらえるブランドが必要なのではないかと考えた」(赤阪氏)。

ACPを代表する製品といえば、二層式の「白いオイル」があげられます。有用性の高い厳選した天然由来成分をオイル層と水層どちらにもふんだんに配合し、保湿とブライトニングのケアを1本で実現。精油100%の自然な香りと、テクスチャーでは、肌なじみのよさとオイルのしっとり感の両方を感じられる処方としています。

製品ラインナップとしては、「白いオイル(肌用・ボディ用)」のほか、美容液や化粧水が揃い、ジェンダーニュートラルなアイテム展開とシンプルなクリエイティブで、性別を問わず、幅広い年代の利用があり、現状、顧客の約4割が男性といいます。

ACPでは、顧客に製品やブランド体験のアップデートプロセスへの参画を積極的に促しています。製品パッケージにはQRコードを記載し、アンケートに顧客が回答する形で製品を使った感想や改善点のフィードバックができるようにしているほか、InstagramなどSNSや公式サイトからも顧客の声を収集。アンケートだけでは伝わりきらない顧客のインサイトを深く知るため、Zoomによる顧客インタビューミートアップなど、直接の交流も行っています。

出典AGILE COSMETICS PROJECT公式サイト

とはいえ、顧客の声ならなんでも反映するというわけではないと赤阪氏は話します。スキンケアは正しく使い続けることで、効果を実感できる側面をもつ製品なので、毎日のケアが苦にならない「心地よさ」を追求しており、そこにつながる声にとりわけ注目しているというのです。

コミュニケーションでは、ブランドのスタンスを端的に現す「イメージではなく、効果」をコンセプトに、世代や性別に寄らないメッセージを発信。「イメージは大切にしながらも、極力製品開発にリソースをさきたい。だからこそブランドイメージさえも製品の効果などの顧客体験から醸成したい」と考えていると赤阪氏は明かします。

@cosme TOKYOにおける期間限定展開

顧客理解を深めるためにリアル店舗を活用

オフラインでは、20217月から東京・原宿の@cosme TOKYOに期間限定での出店を行っています。常々寄せられる「購入の前に製品を試したい・体験したい」という顧客のニーズに応えることはもちろん、美容感度の高い生活者のインサイトの把握や、顧客理解を深める場としてフル活用しているとします。

@cosme TOKYOはさまざまなブランドに通じている美容好きが訪れて、新しい発見ができる店舗。我々もそうしたお客様に見つけてもらう側として、ぜひ参加したかった。実際に店頭に立ち、ブランドと初めて出会ったお客様と接するなかで、新たな気づきも得ている」(赤阪氏)

販売に関しては、@cosme TOKYOだけの限定品として出した巾着付きのトライアルキットが売れていると話すのは、@cosme TOKYOの売り場とブランド間の調整を担当する株式会社アイスタイルリテール 店舗カンパニー営業統括2部第一エリアマネージャー 村上宏明です。

「数百のブランドが揃う店舗では、大手かD2Cかに関係なく、ブランドの熱量をいかに来店者に伝えるかが大きなポイントとなる。ブランド担当者の入店や、店舗のBAによるポップ、あるいはサンプリング等で、ブランドにぴったり合うお客様に魅力を伝えることができれば、TwitterなどSNSで拡散されたり、周囲の友人などへのリアルなクチコミとなって広がり、相乗効果も期待できる」(村上)

このほかにACPでは、20208月から東京・新宿と有楽町の体験型ストア「b8ta(ベータ)」にも出店しており、ブランドの間口を広げるきっかけを作っています。

b8taでの商品陳列

「もともとb8taは男性の来店客が多く、我々の製品を手にとって下さる方も幅広い年齢層の男性が多い。スキンケアに興味があるがコスメ専門店に行くのはハードルが高いと感じる方が、気軽に製品を触ったり試したりできる場として、またカテゴリーを超えて新しいものを発見できる場として利用されている」(赤阪氏) 

ACPでは「ブランド認知の最大化よりも、むしろ、その先のアクションを確実に生むためのコミュニケーションや、いかに価値を提供するか」に重きを置いています。それゆえに、手にとって試せる、オンラインにはないブランド体験を提供できるオフラインは、有効な接点として活用したいとします。また、オフラインは、オンラインとは異なる体験にもとづく顧客理解を深めるためにも不可欠といいます。 

b8taでは、どれだけのお客様が製品の前に立ち止まったか、製品を試したか、といった情報を数値化してみられるのが大きな利点だ。それに加えて、こちらから依頼して提供を受けているデータとしては、ACPに興味を持った方がどういうファッションや持ち物を持っていたか、ほかのどんなブランドに関心を示したかといった情報だ。それを、ライフスタイルという大きな枠組みでブランドのコミュニケーションプランを検討する際の参考にしている」(赤阪氏)

顧客フィードバックはSNSnoteから発信して共有

同時に、オンラインではユーザーとインタラクティブなコミュニケーションを通じて親密さを築きつつ、得られた顧客の声をさらにTwitterInstagramnoteなどから発信することによって、ブランドの理解促進にも活用しています。

こうした顧客起点のブランド運営を貫く姿は、外箱や緩衝材などパッケージのバージョンアップにも生かされています。

ACPでは、初回製品郵送時にはブランドメッセージが伝わるよう、ブランドブックを同梱したり、緩衝材として使われる紙にも化粧品に配合されている成分の解説をプリントするなど、細部にこだわったパッケージで展開しています。一方で、リピート顧客から「しっかりした外箱や緩衝材を捨てるのが手間」「ゴミが多いと環境への影響が気になる」といったフィードバックを受け、Instagramで顧客の意見を聞きながら、2回目以降の郵送時のパッケージを簡素化することに踏み切りました。 

簡素化した2回目以降のパッケージ

製品に関しても顧客の声をベースに、OEMパートナーとして製造を担当するサティス製薬とともに、ACPメンバーの視点を掛け合わせて、スピーディにアップデートがなされています。

「サティス製薬とは、ネガティブ、ポジティブにかかわらず、お客様から届いた声を全てタイムリーに共有している。そのうえで、定期的にミーティングを開き、バージョンアップや新製品の検討を進めている」(赤阪氏)

たとえば、フェイス用の「白いオイル」では「毎日使うには香りがもう少し弱いほうが嬉しい」とのユーザーの声をもとに、使い続ける人によりなじむよう香りの処方を変更し、特徴であるみずみずしい使用感も向上させ、ver.1.24へとバージョンアップを遂げました。

「お客様にいかに心地よく使っていただけるかに焦点を当ててアップデートを進めている。ただし、その仕上がりに我々が納得しない限りバージョンアップはしない。プロダクトに記載のあるバージョン番号は、試作品制作の回数を意味しており、ver.1.24の次に発売するものが必ずしも、ver.1.25になるとは限らない。それもまたユーザーに楽しんでもらえる点のひとつになっている」(赤阪氏)

性別、年齢、国籍を超えたユーザーとの共創コスメとして海外展開

モノがあふれ製品のスペックに差が生じにくい時代において、ユーザーは、製品そのものの魅力以外の価値を敏感に感じとり、ブランドを選んでいます。たとえば、透明性あるブランド運営が行われているか、ブランドの「思想」に共感できるか、自分にとっていかに「意味のある」ブランドか、といったことをみているのです。

ACPでは共創アプローチによって時代に求められるブランドの土台作りと並行して、中国、台湾、シンガポールでの海外展開に着手し、次のステージに向けた取り組みを進めています。

「スキンケアの既成概念に囚われず、性別や年齢、国籍などの制約を持たないのが、ACPの特長のひとつであり、これから更なる海外展開も視野に入れている。2022年前半には新商品の発売を予定しており、心地よさを追求するためのバージョンアップも行っていく。これまでの活動を大事にしつつ、アクセルを踏むポイントを逃すことなく、足元を固めながら取り組んでいきたい」(赤阪氏)

画像提供:laboratory株式会社