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KDDIと@cosme TOKYOが協業した没入感のあるバーチャル店舗体験

作成者: @cosme for BUSINESS編集部|Mar 30, 2021 2:00:00 AM

KDDIが運営するスマートフォンアプリ「au XR Door」上に、東京・原宿の「@cosme TOKYO」を再現したバーチャルストアがオープン。XR(AR/VR)を駆使したそのショップ体験を紹介するとともに、開発の裏側をKDDIとアイスタイル双方の担当者に聞きました。

2021年1月8日、アイスタイルはKDDIと共同でバーチャル店舗「@cosme TOKYO –virtual store–」をスマートフォン向けアプリ「au XR Door」上にオープンしました。これは東京・原宿にある旗艦店「@cosme TOKYO」をバーチャル空間で再現し、XRを活用した非接触の新しいショッピング体験を提案するものです。

入店は、au XR Doorアプリから画面をタップすると現れる店舗の入口ドアを開くことから始まります。店舗スタッフに出迎えられ、最初に目に飛び込んでくるのは、リアル店舗と同じ、「@cosmeベストコスメアワード2020」受賞商品をディスプレイした巨大タワー「ベストコスメアワードコーナー」です(2021年ローンチ時点)。店内は360°の画像でぐるりと見渡せるので、まるでリアルな店舗にいるかのような没入感が味わえます。矢印をタップすることでフロアの移動も簡単で、5G推奨の高画質版機能を利用することで、内観や棚に並ぶ商品が細部までくっきりと見えるのも特徴です。

「手」のマークがついている商品展示では、実際に手にとって商品を試すユーザー視点から撮影したテスタームービーが視聴できます。使用感がイメージしやすいほか、通常のECサイトではわかりにくい、実物の大きさを確認できるのも利点の1つです。また、ウィンドウショッピングのように連続したフロアを回遊するだけでなく、ブランドリストやフロアマップから目的の売り場に一気にワープできるのも、バーチャル店舗ならではといえます。

一部のブランドでは、自撮りした顔画像でバーチャルメイクを試せる機能も実装。また、商品の横にある「i」マークを押すとアットコスメ公式通販「@cosme SHOPPING」に遷移し、詳しい商品情報や価格をチェックしてそのまま購入に進めます。

スマホをかざすだけ、ARドアをくぐり異世界体験

今回、@cosme TOKYO –virtual store–の制作チームを率いたのは、KDDIで5G・xRサービス企画開発を担当する氏原佳彦氏です。氏原氏は、5年前にxRサービスの開発プロジェクトをスタートした当初は、VRゴーグルを使用することが前提でしたが、大容量データを瞬時に処理できる5G時代が到来した今、特別な機器を必要とせず、どこにいても利用できるスマホベースでの体験にシフトできたところが、サービスの実用化に大きく寄与したといいます。そのうえで、ARのドアを登場させることで、「異世界に行く」という非日常感を持たせて、心理的な没入感を創り出したのです。これを氏原氏は「物理的な制約を取り払うことの象徴としてドアを置いた」と説明します。

氏原佳彦氏
KDDI株式会社 パーソナル事業本部 サービス統括本部
5G・xRサービス企画開発部 サービス・プロダクト企画G 
マネージャー

au XR Doorのコンテンツには現在、ARドアの向こうに、蝶が戯れる花畑や海底のサンゴ礁が広がる「WORLD」や、厳選リゾートなどの宿泊施設と周辺の観光名所をバーチャルに訪れる「XR Door × Relux」などがリリースされていますが、バーチャル店舗としては、@cosme TOKYO –virtual store–が初めての試みです。

アイスタイル側からコンテンツ制作に携わったニュージェネレーション推進室の宮田晃佳も、バーチャル店舗のベースとなる実店舗を隅々まで高画質で撮影したことにより、化粧品のパッケージやディテールが高いリアル感を持って再現されていると話します。事実、バーチャル店舗を訪れたユーザーの動きをトラッキングすると、ベストコスメアワードコーナーが人気で、各商品をズームで拡大して詳細をチェックしたり、アイテムに添えられたポップまで丹念に見ているユーザーが多いといいます。

@cosme TOKYO –virtual store–の制作を主に技術的な面から主導したKDDIの下桐希氏は、「バーチャルの世界は“ひとけが無くて寂しい”というユーザーからのフィードバックもきている。今、@cosme TOKYO –virtual store–では、入店時に店頭スタッフが“いらっしゃいませ”とお辞儀をして迎えているのだが、アンケートでは、このパートがあることによって、実際に店に足を踏み入れた実感が得られると喜ぶビジターも少なくない」ことを明かします。このことから「来店者に声がけができるオンライン接客など、人との相互コミュニケーション要素を取り入れて、よりリアルなショッピング体験を実現したい」と今後のアップデートについて話します。リアル店舗のように、店舗スタッフから商品の使い方を説明してもらうほか、世間話など気軽な会話もできるバーチャルストアを目指しているというのです。

下桐希氏
KDDI株式会社 パーソナル事業本部 サービス統括本部
5G・xRサービス企画開発部
事業開発マネージャー

スペース制限のないバーチャル店舗での新たな出会い

@cosme TOKYOを統括する株式会社コスメネクストFlagship store事業部部長の坂井亮介は、特別なPR告知などはしていないにもかかわらず、オープンを案内するブログは、およそ2ヶ月で60万を超えるページビューがあったとし、ユーザーの関心の高さに手応えを感じています。そして今後は、オンラインカウンセリングとの連携や、バーチャルヒューマンの活用なども考えています。また現状では、@cosme TOKYO –virtual store–には、花王のブランド「KANEBO」「KATE」「ソフィーナ」など、約80商品がラインナップされ、そのうち70商品にはリンクが貼られてオンライン購入が可能ですが、参加ブランドを増やしていくことにも意欲をみせます。

坂井は「バーチャル店舗、美容部員によるオンライン接客、リアル店舗と、ユーザーが横断して商品を購入できる複数の場を持つことは、ユーザーのメリットと同時に、ブランド側のメリットにも直結する」とバーチャル店舗の意義を説明します。また、バーチャル店舗はスペースの制限がないため、特定ブランドの専用フロアの開設などがしやすいところも利点とします。あわせて、@cosme TOKYOで導入しているカウンセリング台帳とのリンクも実現し、よりシームレスにパーソナライズしたショッピングを提供していくと意気込みます。

ECサイトでは標準装備となりつつある絞り込み機能などによる商品レコメンドから一歩進んで、「ユーザーが思ってもみなかった新たな発見や出会いを生み出せるのがバーチャルストア」と話す坂井は、@cosmeだからこその、個性と存在意義の高いショップに@cosme TOKYO –virtual store–を育てることを目指しています。

リアルとバーチャルが補完しあい、ショップそのものの価値が上昇

あわせて下桐氏は、バーチャル店舗が発達するとリアル店舗に誰も来なくなるのではないかという懸念について言及し、むしろバーチャル店舗があることで、リアル店舗の価値があがる可能性を示しました。

地方や海外などに在住し実店舗が身近にない人々にとって、好きな時間に自宅に居ながらにして、リアルに近い臨場感のあるバーチャルストアを訪れられるというのは大きな魅力です。けれど、旅行に行く前に訪問する土地の情報を収集して、見所や自分の好みに合う訪れたい場所などを事前にチェックする人が少なくないように、@cosme TOKYO –virtual store–で、店のイメージやどんな商品があるのかなど、いわば予習しておくことで、原宿の店舗を訪れたいという憧れや欲求が高まる側面もあるのではないかと下桐氏は指摘します。

バーチャル店舗を知っているからこそ、その元となったリアル店舗に実際に出かけるチャンスがあったときの喜びも増すでしょう。あらかじめ擬似体験することで欲しいものがどこにあるかが分かっているなど、ショッピングがスムーズになるという実際的な利便性もあります。つまり、バーチャルとリアルが互いに補完しあうことで、@cosme TOKYOというショップそのものの価値が高められるといえるのです。まだ珍しくニュース性のあるバーチャル店舗が話題になれば、リアル店舗にも改めて注目が集まることも考えられます。

氏原氏は「CGの作成など技術面を中心に、制作にかかるコストと工期を減らし、バーチャルショップをより簡単に作れるエコシステムを築いていく」と今後の展望を話します。5G対応で高度なARカメラを備えたスマートフォンが一般に広く普及する時代が目前に迫るなか、@cosme TOKYO –virtual store–がより訪れるのが楽しい、ワクワク感のあるショッピングの場所となることが期待されます。

 

Top image: 株式会社アイスタイル
画像提供: TIME&SPACE by KDDI