2022年1月18日、アイスタイルの中国事業を紹介するウェビナー「激変する中国の現地市場レポートと『抖音(Douyin)』を活用したマーケティング事例」が開催されました。三部構成のプログラムのなかから、アイスタイルの越境MCN事業を行うOver The Border社が抖音の@cosme公式アカウント で展開するマーケティング事例を紹介した第二部と、中国の美容事情に詳しいライター臼井杏奈氏らが登壇し、中国での消費者動向や日本ブランドの勝機について識者が語る第三部のレポートをお届けします(第一部の内容は2月公開の記事で改めてご紹介します)。
第二部では「『抖音(Douyin)』で創る次世代型越境ビジネス」と題し、株式会社Over The Border 代表取締役倉島應介が、人気短尺動画プラットフォーム「抖音(Douyin)」における@cosme公式アカウントの取り組みとマーケティング事例をご紹介しました。
Over The Borderは、中国進出支援コンサルティング等中国向け越境MCNサービスを行うアイスタイルグループの1社です。ウェビナー中で倉島は、「中国国内からではなく、日本からコンテンツを発信することでしか伝わらない魅力がある。中国越境ECを日本から運営する事は、リスクヘッジという選択肢ではなく、価値になる時代だ。中国進出する日本ブランドは中国現地企業に運営を委託するケースが多いが、それらの企業との販売方針や価格管理などをめぐっての意思疎通やすり合わせの難しさから、日本ブランドは本来持っている魅力を中国市場で十分に発揮するに至っていないのではないか」と問題提起するとともに、抖音の越境ECファーストパートナーとなった@cosmeが、現在抖音のプラットフォームで展開しているマーケティング事例を紹介しました。
2016年に中国でリリースした抖音は、中国のモバイルユーザーの約半数にリーチ。プラットフォーム内のEC機能は、実装翌年の2020年にはGMV(流通取引総額)ベースで 5,000億元(約7兆7,400億円)規模となり、2021年6月からは越境EC事業も開始しています。
倉島はまず、抖音のECはタオバオ、天猫、JD.comなどの「従来型EC」、拼多多(Pinduoduo)など 「ソーシャルコマース」に続いて、「第三世代EC」「インタレストコマース(興味EC)」と呼ばれていると紹介。従来型ECではユーザーが目当ての商品を自ら検索する形であるのに対し、インタレストコマースでは「ユーザーはフィードをスクロールするだけで、ショート動画やライブ配信から気になるアイテムを偶然見つけ、購入に至る」と説明しました。
また最近の中国では様々なプラットフォームがそれぞれ独自にEC機能を持つことによってバーティカル化が進み、大手プラットフォームのトラフィックが減少していることを数値を交えて指摘。「インタレストコマースの出現と、こうしたECのバーティカル化で、従来のECのあり方は変わってきている。実際に中国メーカーも抖音へ注力を強めてきている」とし、2020年と2021年のダブルイレブンで、中国メーカーが注力したプラットフォームを比較すると、抖音においては32.89%から60.53%へとポイント数が倍近く伸長しているグラフを示しました。
このような状況のなかで@cosmeは、2021年3月に抖音に公式アカウントを開設。越境ECにも抖音でのローンチ当初から出店第一号として参画し、2021年10月、@cosme公式店舗を抖音上に正式にオープンしました。2022年1月現在、抖音の@cosme公式アカウントは中国本土のZ世代女性を中心に約15万5,000フォロワーを持ち、越境ECにはuka、&be、アルビオン、明色化粧品、D-UP、クラブコスメチックス、ハウスオブローゼ、Nurseryなど約20ブランドが出品しています。
抖音の@cosme公式アカウントが配信するショート動画やライブ配信はすべて東京・原宿にある@cosme TOKYO等日本国内で制作。日本在住のKOLや@cosme TOKYOの店舗スタッフなどが出演し、中国大陸に住むフォロワー向けに中国語で日本風メイクのハウツーや人気商品の情報などを発信しています。
在日KOLの龙梦柔(ロン・モンロウ)氏とタイアップしたショート動画は70万再生超え、1.5万Likeを獲得しました。
ライブコマースは@cosme TOKYOのスタジオから週2回+αで1回3時間以上配信。ビデオカメラはソニーの最新型とするなど、中国のトップライバーの最新の機材と環境を研究し、遜色ない環境を作り出しています。
2021年12月のBeautyDayには、龙梦柔氏や日中混合の4人組ボーイズグループWARPs UP(ワープスアップ)のメンバーをゲストにスペシャルライブ配信を行い、抖音の@cosme公式アカウントの店舗で取扱うアイテムを紹介。事前告知投稿には9,099Likeがつき、当日は42万人の視聴がありました。
抖音ではこのように@cosme公式アカウントでライブ配信やショート動画投稿を行い、そこから抖音上の@cosme公式アカウントの店舗に送客する仕組みがありますが、他にも、KOLやライバーにタイアップを依頼し、彼らのアカウントから抖音上の@cosme公式アカウントの店舗に送客してもらうことができる仕組みもあります。抖音側のシステムとして、タイアップを依頼したいライバーを検索・比較したり、配信を視聴したユーザーの購入データ等の分析ができる専用画面が用意されているのです。同システムを利用し、システム上でライバーとのタイアップを成約させた施策では、15分のライブ配信を15万人が視聴、事前に用意していた700セットを完売したといいます。
倉島は「抖音ではタオバオライブなど従来型ライブコマースとは異なるタイプのKOLやライバーが活躍している。また、ライブ配信の視聴から商品購入に至るユーザーは抖音の@cosme公式アカウントのSNSフォロワー属性とは異なっている」とし、今後も抖音独特の傾向を捉えるための検討検証を行いながら、「新進気鋭のKOL やライバーと共に日本から市場を創っていきたい」と意気込みを語りました。
また、抖音上の@cosme公式アカウントの店舗への商品登録とショート動画投稿(1本)、ライブ配信内での商品紹介(3回)をセットにしたスタートメニューも紹介し、「スタートメニューから、KOLやライバーとのタイアップを経て、ブランド単体の店舗開設も描くことができる。店舗はOver The Borderで日本から代理運営可能」とアピールしました。
続いて「最先端を走るゲストによる中国コスメビジネス未来予測」と題した第三部パネルディスカッションでは、二部に登壇した倉島がモデレーターをつとめ、中国出身で日本を拠点に活動中の女優/インフルエンサーの龙梦柔(ロン·モンロウ)氏、龙氏のマネジメントも手がける中国市場向けデジタルマーケティング支援企業の株式会社Rainbow Arc代表取締役の湯怡婧氏、抖音の広告配信プラットフォーム提供のOcean Engine Japan からAgency Partnership統括部長高橋亮太氏、フリーランスライターの臼井杏奈氏の4名のゲストに視聴者から事前に寄せられた質問に回答いただきながら、中国市場の今と今後をディスカッションしました。
パーフェクトダイアリーや花西子など中国発のブランドが台頭してくるなかで、日本ブランドの現在のプレゼンスの印象について問われた臼井氏は「日本のものは機能性や開発力が優れている、という強みは変わらない。中国コスメは(ビジュアル的に)目を引く力が強く、その意味でオンラインがメインの世界(現市場)で戦っていける商品が多い。日本ブランドもそのような要素をうまく取り入れていけば、もっと勝機があるのではないか」と回答しました。
また「中国ではどんなコンテンツが刺さるのか?」の問いに、これまで多数の中国国内向けコンテンツ制作に携わってきた湯氏は、「何をいいたいかはっきり明確であること」「共感できること」が中国で刺さるコンテンツの条件だと強調しながら、龙氏のようにそうしたノウハウを熟知した日本在住KOLが日本式の美容に興味を持つ層へアプローチしていくことの価値と市場開拓の可能性を示唆しました。
「もし自身が化粧品ブランドの立場なら対中国マーケティングに何をするか?」という問いには臼井氏が「あまりマーケティングだけで考えない方が良いと思っている」と前置きしたうえで、「日本仕様のパッケージがすでに中国でよほど認知されているということでなければ、私なら中国向けにパッケージを作り替える。中国向けに新商品を一から作るのであれば、企画開発の時点から中国のマーケティング担当者や中国現地のコンテンツクリエーターを会議に入れる。中国の新興ブランドでもそうした話を聞く」としました。
高橋氏は「トップ中国新興ブランドの最近の抖音上での販売比率を見ると、75%がブランド自社で行うライブ配信を経由した販売だ」とし、抖音で売上を増やしていくためにライブ配信の視聴者獲得の重要性を指摘。「いかにマルチコンテンツを生みだし、ブランドの価値を多面的に打ち出して(ライブ配信の視聴者を増やして)いくか。『キービジュアルを作って投稿する』『有名KOLに依頼する』という2本柱の間を埋めるブランドの独自コンテンツの制作が鍵」とし、そのうえで「抖音の越境ECは2022年が本格的な立ち上げ期で日本の組織体制も充実させている。信頼していただき@cosmeともチーム一丸で中国進出を支援できれば」と意気込みを語りました。
また他の3人のゲストも「日本には素晴らしい商品がたくさんある。その世界観をぜひブランドが日本から発信していってほしい」(湯氏)、「日本にはたくさんの良い商品があるので(一消費者としても)中国にもっと進出してほしい」(龙氏)、「本当に中国は流れがはやく、3カ月もすれば情報が古くなってしまう。成功に近づくために今後も小まめな情報収集を」(臼井氏)と中国進出を検討している日本ブランドに向けてそれぞれエールを送りました。
Over The Borderの抖音を活用したマーケティング事業に関し、ウェビナー申し込み時のアンケートや当日オンラインで寄せられた視聴者の代表的な問いに倉島が回答します(istyle Chinaのオフラインイベント事業に関するご質問は2月公開の記事で回答させていただきます)。
回答
見せ方次第で利用効果はあります。例えば「〇〇(KOL等)が実際に使ってみた」「スキンケア商品比べてみた」「美白(効果例)の秘密を徹底解剖」等々…実際に抖音上ではスキンケアも好調です。
実際に展開したスキンケア商品のPR事例として、ブランド様のオフィスを訪問して過去の受賞歴や開発の裏側など商品の背景を伝える動画を配信し、後日Liveで詳しく解説するいった流れで、見せ方や展開次第で利用効果はあると考えます。
回答
中国では単品買いの傾向が強い為、まずはスター商品を育成してからブランドを押すのが主流の流れとなるので、2SKUでも全く問題無いと考えます。
中国の越境ECは今、世界最大の市場であり、世界中の企業が注目しています。@cosmeと連動し、そのリソースを活用しながら一緒に挑戦しませんか。
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