中国の短尺動画プラットフォーム「抖音(Douyin)」の越境ECサービス「抖音電商全球購(Douyin EC Global)」は日本ブランドの中国進出にどのように寄与するのでしょうか。出店メリットを紹介したウェビナーの模様をダイジェストでお伝えします。
2023年3月1日、アイスタイル主催のウェビナー「変化する中国EC市場と越境ECプラットフォームの“今”をご紹介!『抖音電商全球購(Douyin EC Global)』を活用した事例」が開催されました。
ウェビナーでは、中国の短尺動画プラットフォーム「抖音(Douyin)」の越境ECサービス「抖音電商全球購(Douyin EC Global)」について、同サービスの日本市場責任者であるDouyin EC GlobalシニアBDディレクター黄益氏が、まずはその特徴について説明。
また@cosme海外旗艦店をDouyinで展開するアイスタイルグループ Over The Border 代表取締役 倉島應介が、2021年の同アカウント開設から2023年3月現在約14万フォロワーに成長するまでに行ってきた取り組みや近況を紹介しました。
そして日本最大のBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)企業であり、Over The Borderと資本業務提携を発表したトランスコスモス株式会社から、事業開発総括GEC・DS推進本部セール&マーケティング1部2課 課長 田村京太郎氏が、同社による実際の支援事例から、日本ブランドのDouyin EC Global出店の意義を語りました。
さらに、中国出身のマルチタレント段文凝氏も迎え、視聴者から寄せられた質問に登壇者4人で答えるパネルディスカッションも実施しました。
1日あたりのアクティブユーザーが6億を超える、中国の国民的なプラットフォームであるDouyin。中国国民のおよそ2人に1人が利用していることになります。
第一部で登壇したDouyin EC Global黄氏は「多くのユーザーはDouyinのショート動画やライブ配信を毎日楽しんでいるうちに、弊社のアルゴリズムによって自然と自分の潜在ニーズにマッチした商品や情報に出会い、商品に興味を持ち、最終的にブランドのファンになっていく仕組み」と、Douyin ECについて説明しました。
プラットフォームとして膨大なコンテンツ消費基盤、Douyin独自のレコメンドシステムで、それぞれのユーザーにパーソナライズされたマッチングを提供しニーズを掘り起こす、いわば興味EC(インタレストコマース)を実現しています。
またこういったインタレストコマースが実現できる背景には、260万人以上のDouyinクリエイターと、キャスティングなどを行う1万4,000社のMCNの存在があるとし「誰もが知っている著名人やトップクリエイター以外にも、様々なカテゴリーでその分野に精通したKOLやKOCが配信を行って熱量のあるコミュニティを作り出している。Douyin ECではこのエコシステムで活躍するクリエイターやMCNがブランドのマーケティングのパートナー」と紹介しました。
Douyin EC にはこうしたクリエイターやMCNと、ブランドをつなぐマッチングプラットフォームとしての機能もあります。プラットフォーム上で、ブランドからクリエイターへ、またはクリエイターからブランドへと双方向にソーシャルセリングやタイアップのオファーができ、金額交渉から、リンク設置、費用清算まで全てシステム内で完結する仕組みです。
第二部ではアイスタイルグループで日本発の越境MCN、Over The Border の倉島が、2021年10月に同社がコスメカテゴリで日本企業として初めてDouyin に出店した@cosme海外旗艦店について語りました。
2023年3月現在フォロワー数約14万人に成長、日本から日本の美容文化を発信しています
アイスタイルグループでは@cosmeの中国越境EC事業として、2015年にはアリババグループによる越境EC、天猫国際(Tmall Global)に「@cosme官方海外旗艦店」をオープンしています。
「2015年からの5年で中国の越境EC市場規模は10倍以上になった。ECを取り巻く環境も大きく変わり、ライブコマースでは1回の配信で数十億円を売り上げるようなトップライバーが台頭、広告費は高騰し続け、国潮(中国伝統の要素と現代の要素を融合させた中国風)トレンドやNMPA(国家薬品監督管理局)などの法規制変更など、さまざまな変化や新しい課題も出てきたなかでのDouyinへの挑戦だった」と倉島は振り返ります。
そしてDouyin に出店してから現在までの約1年半の間に、次の3つのことに取り組み、@cosme海外旗艦店の売り上げを右肩上がりに成長させてきたと説明しました。
1つめはコアなファンとリピーターを醸成するためのオリジナリティのあるアカウントの育成です。週3回、日本国内で撮影、作成したショートムービーの投稿をおこない、週2回は東京・原宿の@cosmeTOKYOからのライブ配信も実施しています。
また、すべてのEC取扱商品のLPはフォーマット型ではなく、フルカスタマイズで制作し、日本でのブランドイメージを最大限中国の消費者に伝えられる工夫をこらしています。
2つめは日本在住で中国語で発信が可能なKOLやKOCを主体としたソーシャルセラーの起用です。KOLやKOCが自身のDouyinアカウントから@cosme海外旗艦店の取扱商品を紹介するライブコマースを行い、その回数は毎月2,000回以上を数えます。
3つめは日本在住のトップライバーが@cosme TOKYOの店舗から、彼ら彼女たちのDouyinアカウントを用いて行うタイアップ型のライブ配信です。@cosme TOKYOのスタジオでOver The Borderのスタッフがサポートし、中国にいる視聴者に向けてライバーが商品を正しく丁寧に訴求することで、1回の配信でおよそ1億円を売り上げる事例も出てきています。
3つの取り組みともポイントは日本からの発信、日本での運営を丁寧に実施している点です。「日本のブランドが中国越境ECを日本から直接発信・運営することはリスクヘッジという選択肢というよりもまさに価値」と倉島は強調します。
「中国越境ECを中国で運営しようとする際に発生する、現地法人や総代理、TP(代理運営会社)との情報共有や販売方針、価格管理、クリエイティブなどをめぐってのやりとりに難しさを感じている日本ブランドは多いのではないか」とし、日本でのDouyinアカウントの運営はそれらの課題を解消し、さらにブランドのフィロソフィーや魅力を棄損せずに中国の生活者に届けることにもつながるというのです。
これから中国市場への進出を検討する日本ブランドは、@cosme海外旗艦店にまず商品を出品することで、@cosme海外旗艦店が発信するショート動画やライブ配信を通じて、中国の消費者に効率的にアプローチが可能です。
その後ブランド単独の旗艦店出店へとスケールしていく際に、トランスコスモスによる運営代行を利用しながら、Over The Borderが蓄積してきた中国市場開拓のノウハウや、@cosme TOKYOからの発信などのプロモーション施策も引き続き可能です。Over The Borderとトランスコスモスがブランドの成長段階に応じて中国進出をサポートしていきます。
第三部ではトランスコスモス 田村氏が、同社でこれまで支援した日本ブランドのDouyin EC Global出店事例を3つ紹介し、それぞれから見えるDouyin EC Global出店の意義を語りました。
田村氏はトランスコスモスの他社にはない強みとして、中国からさらにASEANへと展開拡大のサポート体制も強化中であること、クライアント企業それぞれに合わせた、収益性を踏まえた綿密な事業計画のプランニング力を強調し、さらに「Over The Borderとの連携で、クライアント企業のブランド表現をより高めるお手伝いをして、中国市場で日本ブランドの存在感を際立たせていきたい」と意気込みます。
あるスキンケアブランドAは、すでに長く中国事業を展開しており、代理商を通じてDouyin EC Globalでも商品が流通していましたが、最近は売り上げ全体の伸びが鈍化していました。
「調べてみると一部の小売で安売やいわゆる「粗利MIX(粗利益率の高い商品と低い商品を組み合わせた商品構成で粗利益の確保・向上を狙う販売手法)」に組み込まれて、Douyin EC Global内でも乱売されていたことがわかった。また中国の消費者向けに商品を具体的に説明したコンテンツやブランドイメージがなく、中長期的なブランド毀損の懸念があった」と田村氏。
乱売に関してはクライアント側で販路整理に取り組んでもらう必要があったといいますが「Douyinのブランドの公式アカウントからショート動画やライブ配信で情報発信していくことで、ブランドイメージを巻き直し、新規顧客を創出していくことができた」といいます。
ヘアケアブランドBは、ある越境ECプラットフォームに旗艦店を開設して販売活動を行なっていましたが、以前からの人気商品の認知度への依存度が高く、新商品の特徴や用法、ブランドの認知拡大についてはうまく訴求できておらず、課題感があったといいます。
そこで、独自のアルゴリズムで潜在顧客とのマッチングが強化できる新規販路としてDouyin EC Globalを提案し、Douyinのブランド公式アカウントから情報発信を始めたことで、Douyin EC Globalに設けた旗艦店に新規顧客を取り込むことに成功したそうです。
健康食品ブランドCは日本国内のあるECサイトでトップクラスの売上があり、その他複数の国内ECサイトでも商品を展開しているなか、中国市場への進出にあたり、どの越境ECプラットフォームに旗艦店を出すべきかを検討していたそうです。
田村氏は「集客の観点から見て、DouyinはTmall、JD.comという旧来の2大プラットフォームを凌ぎ、ECも急伸している。中国の消費者から見て商品が目につきやすい、SNS情報拡散と販売がセットで行える点、Douyin EC Globalが 2022年に開始したばかりで先行者利益を見込める点でも期待できる。中国の消費者にささるショート動画やライブ配信の戦略を練ることで、中国でも商品の人気に火がつく可能性は大いに高まる」と、ブランドCにDouyin EC Globalへの出店を提案した理由を説明しました。
第四部のパネルディスカッションでは中国出身のマルチタレント段文凝氏も加わり、視聴者から寄せられた質問に登壇者一同で回答しました。いくつかの質問と回答を抜粋してご紹介します。
A:(段氏) 私の両親はそれぞれDouyinのアカウントを持っている。歌うことが趣味の母の場合は歌の上手な人をフォローして、その人の投稿や配信を視聴するだけでなく、その人の個人レッスンを購入したりもしている。私の両親が特別進んでいるわけではなく、周りの人々も同様に、中国ではいまや老若男女がDouyinのアカウントを持ち、利用している状況だ。販売も物販だけではなくサービスなど広がりが出てきているのも興味深くみている。
(田村氏)中国現地企業のマーケティング担当者は、自分も周囲の人たちも皆、Douyinアプリを利用しているという事実に加え、コロナ下でのライブコマース熱やその後の定着を実感しているので、ブランドの認知拡大・拡販を考えるとDouyinのECには出店必須、まだなら今すぐ出したほうがいいというスタンスでいる。
A:(黄氏)KOLの人気が高まるほど、マーケットの原則により、ある程度相場は上がってしまうのは我々でコントロールできるものではない。であれば、どのKOLがもっとも自社商品にふさわしいのかの見極めも大事だ。まず訴求したい商品の中国におけるターゲット層を定め、そのターゲット層をフォロワーに多く持つKOLの中から選定を行うことが、1番のポイントとなる。そのKOLが同じ商品カテゴリや競合他社で販売実績をもっているかどうかも参考にするといいだろう。
またKOL側でも自分が売る商品を選ぶ際のスタンスには違いがある。たとえば本当に気に入っていて自分のファンにぜひ紹介したいと思っているのか、それとも限られた時間の中でより多くの売り上げを作りたいと考えているのか、といったことだ。そういった部分の見極めも大事であり、また、決してブランド側から一方的にKOLのアサインができるわけではないことも忘れてはいけない点だ。
Douyinはいまや非常に多くの中国国民が使い、影響力が大きい。その意味でDouyinだけなど一つ一つのチャンネルのROASよりも、ぜひチャンネル全体のROASを見て検討いただきたいと思う。例えばDouyinでの施策によって、他の販売チャンネルの検索数が上がっているというような事例も多くある。
中国で今、最も勢いのあるSNS、Douyinを通じ、中国の消費者に日本から直接プロモーション、販売をしてみませんか。Over The Borderとトランスコスモスが支援します。
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