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美容特化MCN、istyle meがブランドとクリエイターをつなぎ最大効果のマーケティング支援

作成者: @cosme for BUSINESS編集部|Nov 29, 2021 2:50:00 AM

アイスタイルとサムライパートナーズとのJVで美容業界に特化したMCN(マルチチャンネルネットワーク)であるistyle me。その大きな特徴は、クリエイター事務所ではなくエージェントである点です。設立の経緯や、美容領域のインフルエンサーマーケティングで結果を出すために必要な要素とは何か、株式会社istyle me 代表取締役 遠田健と取締役 野田昌嗣に聞きました。

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支援した「ReZARD Beauty」は1日で2万セットを販売

美容ブランドにとって、インフルエンサーマーケティングは消費者とのエンゲージメントを確立する手法として欠かせない要素となっています。サイバー・バズとデジタルインファクトが202010月に発表した「国内ソーシャルメディアマーケティングの市場動向」調査では、2020年のインフルエンサーマーケティング市場規模は前年比105%の317億円で、2025年にはその2倍以上の723億円に達すると予測されています。

影響力を持つ媒体も変わってきており、とくに美容分野では、Instagram一強だった時代から、YouTubeTikTokなど動画メディアの勢いが強まっています。それを受けアイスタイルは202012月、人気YouTuberを多数サポートするサムライパートナーズとのジョイントベンチャー(JV)、istyle meを設立しました。

サムライパートナーズは、YouTuber事務所ではなく、YouTuberやクリエイターをサポートするエージェントという立ち位置を取っています。そのため一般的なタレント事務所のような「専属」「所属」という関係ではなく、クリエイターの要望や課題に沿って足りない部分だけを支援。業務提携の形で、プロジェクトごとにさまざまなクリエイターを起用するスタイルです。

istyle meも同様に、エージェントとして、美容ブランド向けに、サムライパートナーズがサポートするインフルエンサーを中心に起用して動画コンテンツ制作、商品開発タイアップなどの企画・運営を行います。アイスタイルグループの一員として、美容分野に特化していることが最大の特徴であり強みです。

「この仕事で感じるのは、再生数×登録者数×リーチといった数字だけでははかれない要素が強いということだ」と遠田は話します。各クリエイターの動画再生数やフォロワー数という数字もさることながら、そのクリエイター自身のもつ熱や、どういう仲間がいるのか、今、何に関心を持っているかといった数値化できない部分が多く、単純にビジネスロジックをはめてしまった途端に勢いを失い、結果、視聴者に伝わらないことにもなりかねないというのです。

株式会社istyle me 代表取締役 遠田健

istyle me20219月、登録者458万人の人気YouTuber・ヒカル氏のプロデュースコスメ「ReZARD Beauty」の立ち上げプロジェクトに参画。発売開始からおよそ1日で、スキンケア3点セットの販売数は2万を突破するヒットとなりました。

「ヒカルさん自身がアトピー肌に悩み、美容に投資して肌状態を改善した経験を持っている。その影響で毎日の生活や気持ちに良い変化があったという実体験から、より良いものを安く提供したいとの想いが商品発売のきっかけだった」(遠田)

「ReZARD Beauty」

ヒカル氏はライフスタイルやバラエティ系コンテンツを配信しており、美容系YouTuberではありません。しかし普段のヒカル氏の発信内容やスタンスに合致した、美容知識がない代わりに、お金を出して、一番いいと思うOEMでいいものを作り、安く視聴者に届けたいという、納得感のあるストーリーで消費者から支持を得たのが、好調な売上の大きな要因です。

このプロジェクトでistyle me は、販売における企画運営をすべてサポートしました。クリエイターの突然のひらめきで企画が変更することも多いものの、そのひらめきは「ユーザーにとってどうなのか」との発想で一貫しているため、どのようにしてそれを実現するかが問われたと、遠田は振り返ります。

デジタルマーケティングでは成功事例をもとにKPIを定め、その数字を目指して再現性を高めていく手法がとられることが多いなか、ストーリーや勢いといったものは再現性が難しく、また数値化できない要素でもあり、これまでの企業側のロジックでは判断が難しくなります。そのため、istyle meのような勢いやトレンドを見分けられるエージェントが必要になってくるのです。

「我々がブランドに企画提案する際は、そのタイアップにおいて、製品やサービスの認知をとりにいくのか、売上をとりたいのかという目標と、クリエイターの勢いやその時の条件、過去の投稿の検証などを加味している」(遠田)

これはもしかしたら競馬の予想にも似ているかもしれないと、遠田は説明します。「競馬では、手堅くいきたいのか、リスクをとって大穴を狙うのかに加えて、馬の性格やコンディション、騎手が誰なのか、天候や場所なども判断材料になる。それと似たような判断力がエージェントに求められている」(遠田)

クリエイティブに口は出さないのが成功の秘訣

誰に依頼するかとともに、コンテンツ内容も成果を左右します。メディアとのタイアップ広告であれば、企業側から細かい要望や指示、修正を出すことができます。しかしYouTuberTikTokerなどクリエイターの起用にあたっては、そうした制約がマイナスとなるケースも少なくありません。

遠田は「基本的にクリエイティブには口出しせず、NG事項などポイントだけ伝える。クリエイターは演者であると同時に、テレビ局でいえば局長でもある。視聴者層の喜ぶコンテンツ、視聴時間帯、属性などを誰よりも把握しているからだ。任せたほうが面白いコンテンツができあがる」と語ります。クリエイターがやりたいことを決め、エージェントはその企画を実現するサポートを行うわけです。

美容コンテンツの場合、薬機法に関わる表現のチェックや修正なども課題になりがちですが、過去に薬機法を理由に撮り直しが発生した例はないと遠田はいいます。「その意味では、我々がアイスタイルグループにいる点もメリットと考えており、内容の細かい指定や表現のチェックなど、コントロールすべき要素が多い場合は、@cosme体験型コンテンツなどのタイアップのほうをおすすめしている」(遠田)

前月比44倍を販売、「アクネオ」の動画コンテンツ

コーセーのグループ会社ドクターフィル コスメティクスの「アクネオ」のタイアップでは、率直な物言いに定評のあるYouTuber、門りょう氏を起用。アクネオシリーズのなかで、同氏がひときわ気に入ったという「アクネオ 薬用 スキンケアパウダー」のみを紹介する内容としました。

動画では門氏がこの商品を良いと思った点や便利さなどを伝えており、成分や機能性に関する情報量は決して多くありません。しかし遠田はむしろそこを狙ったとします。

「最初に話をいただいたときに、アクネオの場合は『コーセーのグループ会社のドクターズコスメ』というワードだけで、品質や信頼が十分に伝わるはずだと思った。であれば多くを語る必要はなく、専門知識を持つ美容YouTuberよりも、より幅広い層に届けられるYouTuberを起用し、なぜ魅力的に感じたかを最大限伝える方向性がよいと考えた」(遠田)。同じタイアップではバラエティ系YouTuberのエミリンこと大松絵美氏も起用しています。

 

動画では、視聴者に響く、その製品がもつ最大のポイントさえ伝われば、成分の詳細など必要情報は動画内のテロップや概要欄で確認してもらえます。この手法で薬事チェックなどの撮り直しリスクを下げ、視聴者側も広告色の薄いエンタメとして楽しめるのです。アクネオはこれら2本のタイアップにより、公開から1カ月でスキンケアパウダーの売上は前月比44倍を記録、3カ月半に相当する目標値を達成しました。また、その後も反響がSNSやクチコミなどに波及し、売上は公開前の25%増で推移しています。

台本ありのテレビ番組制作手法をとった「ハリウッド化粧品」

このように現在のインフルエンサー起用は、データのみで判断することが難しく、コンテンツ内容も企業側のコントロール範囲が狭くなる傾向にあります。その課題解決策として、istyle meでは、あえてテレビ番組のように台本に沿ってきっちり制作する手法もとっています。

ハリウッド化粧品の「オーキッド酵素パック」では、YouTube番組「Beauty Class@nicoroom」において、テレビ番組のような撮影を実施しました。

Beauty Class@nicoroom

「このタイアッププランでは台本を決め、ブランド担当者が現場に立ち会うなかで、テレビ番組制作と同じような機材で撮影を実施した。美容領域では画質や薬事など、質や表現で留意すべきポイントが多く、そうした懸念を取り除くプランとして展開した」(遠田氏)

企画のなかで自由にアイテムを紹介するのではなく、別途商品紹介コーナーを設けるため、一般的なYouTubeコンテンツと比較するとより広告的な表現になる一方で、タレントの出演する番組内の紹介によって認知度は高まり、小売店での取扱いや棚取りなど流通での引き合いにも影響を与えられ、アーカイブとして残る利点もあります。

クリエイター中心のマーケティングにおけるブランド

では、美容ブランドがYouTuberやクリエイターを起用する場合はどこに着目すべきなのでしょうか。istyle me で取締役を務める野田は「誰を選ぶか以上に、企業側はどういったタイアップをしたいのかを、まずは明確にすることが大切だ」とします。

「登録者数や再生回数といった数字からは、リーチ数は予測できるが、その先の購入につながるかは判断できない。(数字の)次にみるべきは、クリエイター個人が持つストーリーと商品がしっかりマッチするのか、そのクリエイターが投稿する最近のコンテンツ内容や、どんなクリエイターと仲がいいかといった数値化できない部分だ」(野田)

株式会社istyle me 取締役 野田昌嗣

その意味で、重要なのがエージェントです。誰を起用するかの前段階として、プロモーションやタイアップの目標に対して、YouTubeTikTokなど、どのプラットフォームがふさわしいか、どんなインフルエンサーがブランドや商品のファンとの相性がいいのかなどの判断をする役割を担うからです。

「先に起用すべき人とプラットフォームが決まったとしても、実際にオファーを受けてもらうためのキャスティング能力や、企画実行に関して、ブランド側とクリエイターの間にたって細かな調整を行えるスタッフが必要だ。それがエージェントもしくはコミュニケーションプランナーだ」(野田)

クリエイターにとっても、自身の信念や、いま表現したい世界観がどういうものなのかを理解してくれる人と仕事をしたいと思うのは自然なことです。これまでのビジネスセオリーが通用しないことも多々あり、細かな調整も含めて、ブランドや商品とプラットフォームの相性、インフルエンサーのマッチング、その実力を引き出すサポート体制、どれが欠けても中途半端なタイアップにつながる原因となるのです。

インフルエンサーやクリエイターの影響力を数字ではかるだけでなく、その時々のクリエイターのコンディションと、社会のトレンドをつかみ、ブランド側の目的にどうフィットさせるか、再現性が難しい世界だけに、数字に表れない部分をどう担保していくのかをistyle meは常に考えています。

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Top image: @cosme TOKYOにおけるReZARD Beautyのポップアップ