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ロレアル、資生堂、コーセー、花王、ライオンのサステナビリティプログラム

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地球環境の保全が人類の未来を左右するグローバルな課題として認識されるなか、多くの企業がESG(環境、社会、ガバナンス)を意識した事業経営を行い、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた中長期プランを策定しています。ビューティおよびパーソナルケア企業5社の計画と施策をピックアップしてご紹介します。

ロレアル:ロレアル・フォー・ザ・フューチャー
プラネタリー・バウンダリーを尊重し科学に裏付けられた施策

2020年6月、ロレアルグループは、プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)を尊重して策定されたSBT(Science Based Targets / 科学と整合した目標設定)にもとづき、2030年に向けた新サステナビリティプログラム「ロレアル・フォー・ザ・フューチャー」を発表しました。これは、火急の環境問題・社会問題に対する直接的な取り組みにとどまらず、サプライヤーや消費者を含む、ロレアルが携わる全ての活動において環境負荷を軽減し、包摂的な社会の実現を目指すべく具体的な数値目標を掲げるものです。

その一環としてロレアルは、2025年末にはロレアルの世界全拠点におけるカーボン・ニュートラルの実現や、2030年末までに95%自然由来もしくはバイオベースの原料を用いた製品開発「グリーン・サイエンス」への変革をするなど、具体的なコミットメントを推進しています。

さらに、サプライチェーン全体で取り組むべき温室効果ガス(GHG)の排出量の数値目標として、2025 年末までに戦略的サプライヤーにおける直接排出量の 2016 年比 50%削減、2030 年末までに輸送の際の排出量において一製品あたりにつき 2016 年比 50% まで削減することを掲げています。あわせて、消費者をエンパワーメントし、ロレアル製品使用時において環境負荷の削減を進め、シャンプーなどを洗い流す際の温水使用時に発生するGHG排出量を 2016 年比で25%削減を目指しています。

同時に「サステナビリティ実現には環境問題と社会課題への取り組みの両輪が不可欠」との考えから、ビジネス全体のエコシステムに注目し、サプライヤーを介して社会的弱者の雇用創出を推進するプログラム「ソリダリティーソーシング」を通して、全世界で2030 年までに10 万件の雇用を生み出すコミットメントについて発表しているほか、1億5,000万ユーロ規模の環境・社会問題解決のための基金「ロレアル・フォー・ザ・フューチャー基金」を設立し、サーキュラー・エコノミー (循環型経済)の実現と、生態系の回復に貢献するプロジェクトへのインパクト投資として 5,000万ユーロずつ、また脆弱な立場を強いられている女性を支援する非営利団体への寄付に5,000万ユーロを充当するとしています。

資生堂: Sustainable Beauty Actions
一人ひとりの美しさを引き出すためのサステナブルプロジェクト

資生堂が世界88の国と地域で展開しているブランド「SHISEIDO」は、2020年10月27日、サステナブルな活動や製品開発を通じて、ビューティーカンパニーならではの社会価値を創造するグローバル プロジェクト「Sustainable Beauty Actions(サステナブル・ビューティー・アクションズ)」(以下SBAS)の始動を発表しました。

SBASはSHISEIDOが提唱するサステナビリティの考え方である「MOTTAINAI」」「HARMONY」「EMPATHY」という3つの柱で構成されており、サステナブルでより美しい世界を実現するための具体的なアクションをそれぞれの柱に沿って行います。

MOTTAINAIは日本のモノを無駄にしない「もったいない」という考え方にもとづき、すべての生命を尊重し、リサイクルやリユース、アップサイクルなど環境に配慮した活動に取り組むものです。HARMONYは社会や環境との調和を意味します。具体的にはSHISEIDO が2019年より実施している、海を愛する世界中の人々を応援し、海とビーチを守る「SHISEIDO BLUE PROJECT」の活動を継続するとともに、SAFE POLICYの開示など、製品情報の見える化を進めます。そして、EMPATHY=共鳴を掲げ、#ALIVEwithBEAUTYのタグのもと、性別、年齢、国籍などにとらわれず、一人ひとりの美を引き出し、その美しさで周りをも輝かせていくことを目指すとしています。

SBASプロジェクトの第一弾として、ブランドを象徴する美容液「アルティミューン パワライジング コンセントレート N」のレフィル(詰め替え)サービス「アルティミューン ファウンテン」を、「SHISEIDO」の旗艦店「SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE」にて2020年11月より開始。これは、顧客が持ち込んだアルティミューン パワライジング コンセントレート Nの使用済みボトルを洗浄し詰め替えるサービスです。

さらに、カネカが独自開発した100%植物由来の生分解性ポリマー PHBH®を、化粧品容器に世界で初めて採用した「アクアジェル リップパレット」を同年11月に限定発売しました。

コーセー:コーセー サステナビリティプラン
ビューティを通じて人と地球に貢献する取り組みを推進

2020年4月、コーセーは持続可能な社会の実現を目指し、グループとしてのサステナビリティに関する取り組みと2030年までの目標をまとめた「コーセー サステナビリティプラン」を策定しました。1991年のCI導入以来、30年近くにわたり発信してきた企業メッセージである「美しい知恵 人へ、地球へ。」を同プランにおいても指針として設定し、「人へ」と「地球へ」の2つの側面から広く貢献する6つの取り組みテーマを掲げています。

画像2出典:コーセー プレスリリース(2020年4月30日付)

1つめは「アダプタブルな商品・サービスの提供」で、肌の色やジェンダー、社会的・文化的背景、宗教や信条など、多様なバックボーンを持つ人々が、自信を持って美しく生きる社会に貢献するとします。2つめは「美しく健康的で幸せな生活のサポート」。より良いQOLや教育啓発活動、フェアトレードなどサプライチェーンを含む労働環境の向上など、社会的課題へのコミットメントを進めます。3つめは「ジェンダーにとらわれず活躍できる社会への貢献」で、日本はもちろん、世界のジェンダーギャップが解消されるための取り組みや啓発活動を行います。

4つめ以降は「地球へ」の取り組みで、「ビューティを通じた環境問題への貢献」、「事業地域の環境保全」に加え、「事業活動全体での環境負荷低減」をうたい、CO2排出量や水使用量の削減、プラスチック容器包装資材についてサステナビリティに配慮した設計を目指すとしています。

2021年3月には、科学的な裏付けによる、「パリ協定」に則ったGHG排出量の削減目標設定を民間企業や各種団体に対して求める国際的イニシアチブ「SBTi(Science Based Targets Initiative)」から「SBT」認定をコーセーは取得しました。これは、同社が使用するエネルギーや電力に由来するGHG排出量の2030年に向けた削減目標を、従来の28%から35%に上方改定し、バリューチェーン全体での削減目標を新たに30%と設定したことが認められたものです。

花王: Kirei Lifestyle Plan
生活者の視点に立ち、より質の高い暮らしの実現を目指す

花王では、生活者の持続可能なライフスタイルを送りたいという思いや行動に応えることを目指し、ビジョン、コミットメント、アクションからなる「Kirei Lifestyle Plan」を策定し、社会のサステナビリティに貢献する取り組みを進めています。Kirei Lifestyle Planでは消費者起点のもと、3つの柱として「快適な暮らしを自分らしく送るために」「思いやりのある選択を社会のために」「よりすこやかな地球のために」をスローガンに掲げ、それぞれの分野で具体的な行動や施策を行なっています。

たとえば「快適な暮らし」のために、2030年までに、まずは世界の10億人へのリーチを図り、よりこころ豊かな暮らしに貢献するべく、QOLの向上や、ユニバーサルデザイン指針にもとづいた「誰にでも使いやすい」製品やサービスの開発に努めるとともに、ベトナムやインドネシアでより清潔で美しく、すこやかな習慣に貢献するプロジェクトなどを推進しています。

同様に「思いやりのある選択」を叶えるために、エネルギーや水などの資源を節約するモノづくりの手法や製品開発をはじめ、体験型学習の機会を提供し、公的機関などとともにサステナブルなライフスタイルを推し進める啓発活動をしています。

あわせて「すこやかな地球」のために、2030年までにすべての花王製品が全ライフサイクルにおいて、科学的に地球が許容できる範囲内の環境フットプリントとなることを目標に、脱炭素化やごみゼロ、水保全、大気および水質汚染防止の実現に向けて取り組むとしています。具体的には、CO2排出量の削減や、原料やプラスチックの使用量の削減と再利用のほか、節水効果の高い処方や環境への影響を最小化する製造工程の採用などをあげています。

ライオン:ライオングループ サステナビリティ重要課題
定量的な評価ができる指標にもとづく幅広い推進プラン

ライオングループは2030年に向けた経営ビジョン「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」の実現や、2030年までに実現を目論む世界共通目標「持続可能な開発目標(SDGs)」への貢献等を見据えたうえで、2018年に「ライオングループ サステナビリティ重要課題」を特定し実行に移しています。現在は2030年までの重要課題を再評価して目標を設定。あわせて、より高い到達レベルを目指し、目標達成の定量的な評価ができる指標を設定しました。

画像3出典:ライオン公式サイト

1つめは、事業所活動およびライフサイクルにおけるCO2排出量の削減で、2017年比で30%の削減を目指します。2つめは3R「削減(Reduce)」「再利用(Reuse)」「再資源化(Recycle)」に、「持続可能な資源の活用(Renewable)」を加えた4項目を推進。再生プラスチックとバイオマスプラスチックの使用量を、2017年比で倍増させることを掲げます。3つめはライフサイクルにおける水使用量の削減で、数値としては2017年比で30%削減(売上高原単位)と定めています。そして、生活習慣づくりへの寄与として、「健康格差」をなくし、生活環境、身体、経済、情報・教育などの状況にかかわらず、世界の誰もが、必要なときに、いつでも、オーラルヘルスケアを行える機会の提供を旗印に、オーラルヘルスケアを提供した人数が10億人に到達するよう施策を進めるとしています。

またライオングループでは、地球規模で広がる環境問題に対して、パリ協定や持続可能な開発目標などの世界目標の達成に事業を通じて貢献するべく、2019年に長期環境目標「LION Eco Challenge 2050」を策定しています。これにもとづき、脱炭素社会と資源循環型社会の実現を目指し、脱炭素、プラスチック、水資源の課題解決に向けた取り組みを具体化していくことをうたっています。

 

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