アイスタイルのリサーチチームが@cosmeに投稿されたクチコミトレンドについて考察する本コラム。12月という毎年恒例のベスコス発表と共に生活者たちはコスメのどんなところが気になったのでしょうか。クチコミから読み解きます。
※本コラムは、@cosmeトレンド情報便2024年2月版でお届けしている<2023年12月度 @cosme投稿クチコミからみる、最新トレンド>の内容をリサーチチームに解説いただいています。>トレンド情報便はこちら
①底上げ
②保護される
③プランパー
④赤み消し/上気する
⑤アドベントカレンダー
⑥アイマスク
⑦ライブショッピング
⑧マイベストコスメ/全人類/布教する/名品
原田 今回、気になるキーワードとしてふたりとも同じ「赤み消し/上気する」を選ばせていただきました。
西原 ひとりの投稿者のクチコミにこの両方が出てくるわけではないのですが、この「赤みを消す」というのと「上気したように見せたい」という逆の意味を指すクチコミがどちらも増加するというのはとても興味深いと思っています。
原田 この「上気する」というキーワードは以前より伸びていますが、生活者の心の中を深読みすると「自分が幸せに生きているよっていう幸福感みたいなのを演出したい」ということなのではないでしょうか。同様に多幸感というクチコミも増えているように、こういった生活者の思いというのはコロナが過ぎても継続しています。対して「赤み消し」は最近よく人に会うようになって、ひと目が気になるということだと思います。割と最近よく見られるようになったキーワードです。
西原 赤ら顔とか肌が赤くなってしまったりする“酒さ”というワードも伸びていて、「健康的になりたい」とか「ヘルシーさを出したい」「病んでると思われたくない」などの裏返しとしての“血色感”というのが結構重要なキーワードだったと思います。
原田 そもそもはベースメイクのカテゴリに出てくるキーワードだったのですが、血色をコントロールしたいというある種同じ意味を持つ違うふたつのキーワードが出てきたというのは、今のメイクアップに新しく求められていることかなと考えています。
西原 コロナもあって、景気も悪いし、物価も高くて、普通に考えて幸せになかなかなりづらい、そんな環境でも私は頑張って前向きに生きてこうという、それをメイクやコスメでなんとか前向きに生きていこうという意思の表れではないでしょうか。やはりSNSの影響もあり、幸せでなければいけないみたいなプレッシャーがあるのかもしれません。自分がなりたい姿がメイクアップの方法にも出てきているのではないかなと思います。
原田 クチコミ出現の割合として「赤み消し」という表現はまだ多くはないですが、このような悩みは以前からあり大きなワードです。もちろん、12月という日中の寒暖差の影響とか季節的なワードではありますが、通年の言葉になるのではないかと思います。
西原 今まで赤みはニキビとかニキビ跡とか、そのピンポイントのことを指す使われ方が多かったのですが、肌トラブルまではいかない、普通の肌色のまだらさとかも含め、こうありたいといった広い意味合いとしての使われ方が最近増えているという印象です。
原田 イエベとかブルベとか、またメイクアップアーティストからのプロによる情報発信の影響もあって、専門的な知識も豊富になり肌の色に対する感覚っていうのが研ぎ澄まされているようなイメージです。
西原 アットコスメにクチコミを書くような本当にコスメが大好きな人たちだからというのもすごくあると思いますが、どんどんマニアックになっていて、プロの声みたいなものを求めることにより生活者の知識量も増えていっていますね。素肌っぽく見せるための上級テクニックのキーワードとなっています。
原田 今はそこまでできないという人たちにも、やがてこのような情報は届いていきます。ですので、まさに「赤み消し」「上気する」はトレンドの芽として数年後の当たり前になっているかもしれません。
※ピックアップキーワードはまだN数が少ない「兆し」を捉えたものとなります。全体的なトレンドではありませんのでご注意ください。
原田 まずは「底上げ」ですね。この意味はその後に使うアイテムをランクアップしてくれるという意味で使われています。
西原 ひと昔前の考え方だったらもうワンランク上の化粧水を使うという選択をしたかもしれないところを、今の化粧水はこのままに、性能だけをあと2倍引き出させたいという考え方ですね。
原田 主にスキンケアカテゴリで使われるキーワードですが、ディオールのアディクト リップ マキシマイザーでは「どの色を重ねてもリップの可能性を底上げしてくれます」といったクチコミも見られるようにメイクアップカテゴリでも見られます。
西原 イプサのザタイムリセット アクアで見られた「その後のすべてのスキンケアを底上げしてくれるような土台を作ってくれる」というクチコミのように、そのアイテムに相乗効果みたいなところまで必要とされているなって感じます。
西原 必ずしもブースター効果なものだけが底上げではありません。その既存のアイテムにも相乗効果を求めるようになっているということだと思います。どの化粧品にも合うように、ブランドを超えて実現して欲しいと思う生活者も多いのではないでしょうか。これらは結構大切な評価ポイントになってきていると思います。
原田 続いては「保護される」です。
西原 最近、膜感(まくかん)というキーワードも増えています。一見、ネガティブな感じもしますが、今はそれがヨシとされているっていうのが、新しいです。
原田 守られているとか、安心感みたいなもの求めているのではないでしょうか。スキンケアもそうですが、ベースメイクとかリップとかにも最近出てきた人気キーワードのひとつですね。
西原 不安感をちょっとポジティブに表現したのが“肌が包まれている感じ”。不景気とか環境の変化とか生活者の感じる不安感の存在がとても影響していると思います。
原田 3年ぐらい前にキャンメイクのプランプリップケアスクラブが上半期新作コスメ総合大賞を受賞したあたりから覚えられはじめたのがこの「プランパー」です。
西原 昨年のベスコス上半期でもディオールのリッププランパーが受賞しましたが、唇が「腫れる」ではなく「ボリュームが出る」というアイテムです。
原田 実際、カプサイシンが配合されている商品も多く、物理的に腫れさせるみたいな商品で最近流行っている痛いコスメ系のひとつでもあると思います。
西原 その流行には理由が2つあると思っています。ひとつはなんか効いているという感覚が得やすい商品ということ。もうひとつはぷっくりした唇を演出することによって、小顔効果を狙えるという見た目の効果のお話です。韓国のエチュードハウスなどから発売されたアイテムが人気になったことでブームになってきています。
原田 オーバーリップで唇を大きく見せるというトレンドがあるので、それがまたさらに人気を高めているって感じです。
西原 先ほどお話した「赤み消し/上気する」ですが、生活者の消したい赤みと加えたい赤みという、「血色感をコントロールするコスメがあったらいいな」というニーズの表れですね。
原田 ぜひこれからもチェックしたいキーワードのひとつです。
原田 「アドベントカレンダー」ですね。12月ならではの感じがしますが、その背景には「偶然の出会いが楽しめるもの」というのがあると思います。クリスマスまでのカウントダウンカレンダーのコスメ版、またはアドベントカレンダー型のコフレみたいなもので、何が出てくるのかわからないものと出会う楽しみですね。
西原 最近ではSNSでバズっている人気のアイテムを失敗なく買うという行動が主流になってきていますが、それは確実に損しない、リスクを減らした買い物ということです。しかし一方で、やはり新しいものに出会いたいということも求めているのではないでしょうか。
原田 お試しという意味合いでも人気ですが、「あ、これもいいんだ」という使ったことのないアイテムとの出会いの機会になったという意見も多く見受けられます。
西原 もちろん単一のブランドから出ているわけなので、ユーザーのブランドへの信頼感がすごく高いのが特徴ですね。ワクワクを演出するために、パッケージ等にもとてもお金がかかっている豪華なアイテムなわけです。
原田 決して安いものではないので、すごく買うのにリスクが高いと感じるのではないでしょうか。だからこそ、ブランドへのロイヤリティが高くないと買えませんよね。
西原 クリスマス時期の風物詩ですね。
原田 続いては「アイマスク」です。
西原 花王の『めぐりズム』が@cosme BEAUTY DAYでとても人気でした。
原田 昨今、人気の睡眠ケアとか、ぐっすり眠りたいというニーズが関係しているのかなと考えていて、いかに心地よく眠りにつくかという意味で寝る時に使うアイマスクとして人気のようです。
西原 若い人たちはスマホの見すぎ、パソコンでの仕事のしすぎで疲れ目がひどく、かたや大人女子たちはコロナ禍からの意識的な目元ケアが継続しているのでクチコミが伸びているという印象です。
原田 今度は「ライブショッピング」ですね。@cosme STOREのスタッフさんとか美容部員さんとか実際に接客されている皆さんがインスタとかティックトックとかで行っているライブ配信の影響が少しずつクチコミでも増えています。
西原 このライブショッピングは商品認知のきっかけとか購入の後押しにとても効果的なようです。さらに美容のスペシャリストとしてのアットコスメの店員が推すというところがうまくハマっているようにも思います。先日もトワニーアンドミーというブランドが大変好評だったようです。なかなか店頭に行って相談しづらい「フェムケア」について、ライブ配信であれば直接顔を合わせていないので自分のことは知られず、でも必要な情報は得られるという非常に都合の良いあの環境が作られたのではないかと思います。これまで他人には言いにくかった話題と相性がとても良さそうだと思います。
原田 ライブ配信を通じてのお買い物体験が浸透してきたってことですね。対面しない接客みたいな部分がすごく相性がいいと感じます。
西原 やはり購入を迷っていたものに対して、最後の後押しをしてもらうということが多いかなという感じがします。
原田 お客様との接点のひとつとして、リーチを取るためにやるというよりも、対面ではできない質問がオンラインだからできるというところに価値があるっていうことですよね。また「この人にメイクをしてもらいたいと思ってお店に行きました」のような店頭誘致のきっかけにもなっています。
西原 最後は「マイベストコスメ/全人類/布教する/名品」です。個人個人が私のベストコスメですとか、全人類に布教したいとか「私がいいと思っているものをみんなにおすすめしたい」というその欲が出てきているってところが面白いと感じました。
原田 なにかアットコスメの最初の成り立ちに近しい感じがしますね。自分の推しを伝えたい、いわゆる推し活です(笑)。
西原 あえてちょっと有名ではないアイテムが生活者に見出されて支持されているという感じですね。アットコスメの創設期とすごく似ていると感じています。いいものなのか悪いものなのか、そのリアルさを求めてクチコミというものに価値を見出された25年前のようです。
原田 世の中に氾濫している作られた情報などに疑問を持ち始めているのかもしれませんね。
西原 昨年ベスコスを受賞したオルビスのヘアミルクがまさにそうですね。特にプロモーションもしておらず、あの商品がまさかベスコス獲るとはブランドさんも思ってない(笑)。まさに私のマイベストコスメという名品を全人類に布教させたいということですね。
なにかと不安定な世の中で、美容やコスメに期待感を持っている生活者たち。クチコミを通してその思いを伝えることで、前向きにいこう!とする姿が垣間見れるようです。ぜひご参考にしてください。
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Text:@cosme for BUSINESS編集部