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全プラットフォームで情報を発信し、UGCにつなげるコミュニケーション

作成者: @cosme for BUSINESS編集部|Jun 16, 2023 9:37:27 AM

2023年4月26日に開催された@cosme for BUSINESS主催のウェビナー「メーカー・メディア・SNS・リアル店舗の各視点から紐解く Z世代との向き合い方と次世代コミュニケーション戦術」の内容を紹介する後編。今回は、株式会社伊勢半 コミュニケーション本部 広報宣伝部長 松本智子氏が登壇した、第二部「Z世代へのコミュニケーション」と、第一部の登壇者を含めた4名によるトークセッションについてレポートします。
※前編はこちら

「UGCを生むこと」を目標に掲げた販促企画で大ヒット「キス リップアーマー」

松本氏は、広報課、宣伝課をマネジメントするとともに、コーポレートブランド「KISSME」や、Z世代をターゲットとする「kiss」「ヒロインメイク」などのブランドコミュニケーション戦略から企画設計、制作・実務を担当しています。今回のウェビナーでは、2022年4月の販売開始直後から“バズリップ”としてSNSで大きく盛り上がり、大人気となったkiss「キス リップアーマー」のプロモーション施策の裏側を語ってくれました。

キス リップアーマーの販促企画においては、「UGC(User Generated Content=一般ユーザーによって作られたコンテンツ)を生む」ことをKPIの1つとしたことを松本氏は明かし、SNSでの情報拡散の設計にあたり留意した3つのポイントをあげます。

1つめのポイントは「ユーザーが欲しい情報を届けることでUGCを生む」です。アルゴリズムでユーザーが関心のある情報がピンポイントでタイムラインに流れてくることに慣れたZ世代は、ある意味、各自の興味を軸に細分化されていると松本氏はみています。「新商品に反応するコスメオタク層」「バルクや色に反応する層」「世界観や話題性に注目するマスに近いミーハー層」など、ひとくちにコスメに関心がある層といっても“刺さる要素”が異なるので、多角的な切り口でそれぞれが欲している情報を発信することで、投稿したくなる気持ちの醸成を心掛けたといいます。

2つめのポイントは「全プラットフォームに情報を投げ込む」です。「購入意欲の高い人は、Twitter、Instagram、TikTok、YouTubeと主要SNSの全てを見てチェックしてから決める」と松本氏は話し、同時に「特定のプラットフォームにかたよっていると、何か裏があるのではと怪しまれる」傾向もあるといいます。ただし、全てのプラットフォームでリーチを目指しているわけではなく、あくまで、さまざまな志向を持つユーザーの目に留まることが目的です。加えて、自社公式サイトで社員インフルエンサーがターゲット層に近しいトンマナで発信したり、 @cosmeのようなクチコミプラットフォームも活用したとします。

そして、3つめのポイントは「情報発信の順番」です。「発売とともにロケットスタートを切るという狙いがあり、発売前にティザー動画を発表したり、動画を撮る必要がなく気軽につぶやけるTwitterや自社サイトで、商品名やパッケージの一部をチラ出ししたり、新しいものがくる感を演出した。情報は小出しにし、また早く出しすぎると、ユーザーの興味を維持するのが大変で息切れもするので、タイミングには気をつけた」(松本氏)

そして発売日には、インフルエンサーとタイアップして、待望感が高まったところで一気に全部を見せ、伊勢半公式オンラインストアでは発売当日に即日完売
「キス リップアーマー」は大きなバズを生むことに成功しました。

良い意味で違和感のある、機能をいいあてた商品ネーミングからのストーリー

キス リップアーマーがSNSで大きな話題を呼んだ理由について、プロモーション施策がはまったことに加えて、商品の機能を的確に表しつつ、良い意味での違和感がある面白いネーミングが大きく寄与したと松本氏は分析します。

「“アーマー”とは鎧(よろい)のことだが、化粧品にはほとんど使われない言葉だ。だが、この商品は、ツヤ×うるおい×落ちにくい仕上がりを実現し、透明ジェル膜が唇をコートする設計となっており、まさに唇を守ってくれる鎧の働きをする。同時に、アーマーという、コスメの世界では聞きなれない言葉の響きが、なんだか気になる“引っかかり”としてうまく作用したと思う。商品ネーミングからストーリーが引き出せたところがバズの鍵となったのではないか」(松本氏)

同時に「バズりすぎて困ったことも起きた」と松本氏は話します。「キス リップアーマーは塗ったあと5分間そのまま放置する、リップクリームは使わないなど、機能を十分に発揮するためには正しい使用法が必要だが、短期間で大量に拡散したため、使い方をきちんと理解していないユーザーも発生した。そのため“思ったより色落ちする”という不満コメントが出てきた」(松本氏)。そこで、発売から約3カ月後に、メイクアップアーティストとコラボとして、「#今更聞けないリップアーマー」企画を実施し、改めて正しい使用法を発信したといいます

また「想定以上に売れたため欠品してしまい、“どこにも売ってない”“どこで買える?”といったUGCも多かった。いわゆる“プチプラ”のカテゴリーであるキス リップアーマーは、バラエティショップやドラッグストアなどで販売されているが、取扱い店舗数は決して多くはない。お客様にはご迷惑をかけてしまったが、“〇〇で見つけた”など、ユーザーの間で積極的な情報交換が起こり、結果的には認知度のさらなる向上につながった」と松本氏は話します。

Z世代の本質を理解するための情報収集は、まず「Z世代に聞く」こと

ウェビナーの第二部の後半では、松本氏に加えて、第一部に登壇した株式会社MERY 平山彩子氏、株式会社FinT 熊谷聰威氏、株式会社アイスタイルリテール 後藤文香が参加し、BeautyTech.jp 編集長 矢野貴久子がモデレーターを務めるトークセッションが開かれました。

「マーケティングの企画をするときには、まずターゲットであるZ世代を正しく理解する必要がある。そのために、どのようにして情報収集をしているのか」という、Z世代ではない登壇各氏に向けた矢野の問いかけに、松本氏は「チームのZ世代に聞く」と答えます。同じく平山氏も「Z世代の当事者に話を聞く。 一人ひとりみんな違うが、そうはいっても共通点はある。そのあたりを見出していく」とします。

一方、熊谷氏は「(Z世代がフォロワーの)自社が持つInstagramメディアでアンケートをとると、1,000件くらいの回答がある。それを参考にしている」といいます。同時に、個人的には「化粧品専門店など実際の店舗に足を運び、(プロジェクトの企画の)対象商品が置かれている棚の周囲にいる買い物客がどのような感じかを観察している」と話します。

後藤も、@cosmeの店舗に行って販売スタッフに聞いているとします。後藤によると、販売スタッフはZ世代の来店客との会話のなかで、「(商品を)どこで知ったのか」「よく見ている媒体はどこか」など、ダイレクトに情報収集をしており、信頼性が高く、そのときどきの旬の情報が得られるからだといいます。また、スタッフによるSNSリサーチチームも設けており、こうして集めた情報をもとに、商品を手に取ってもらいやすい店づくりに役立てています。

最後に矢野は、Z世代をどのように捉えているかを登壇者の方々にたずねました。

松本氏は「(マーケティングに携わる上の世代は)Z世代を得体のしれない宇宙人と身構えなくてもいい。今の時代に即した人々として、その気持ちを汲み取ることで、アプローチの仕方の答えは出てくる。恐れることはないのでは」とします。

熊谷氏は「“Z世代とはこういうものだろう”と、一括りにレッテルを貼るようなことはむしろ、Z世代から支持されない。彼らとの丁寧な対話を通して、本質的な部分の理解を深めていくべきではないか」と考えています。

平山氏は「Z世代は、自分のアイデンティティ探しをずっとしている世代だと思う。自分らしさの追求は、決して“自分好き”だからではない。自分と常に対話をすることで、自分らしさを模索しているという感じだ」として、納得感のあるアプローチでZ世代ユーザーを応援していきたいと話します。

そして、後藤は「自分の興味・関心がしっかりある世代だと思う。そこに応えていける施策をしていきたい」と締めくくりました。

ウェビナー視聴者からの質問に登壇者が回答

ウェビナー中で回答しきれなかった視聴者からの質問に登壇者一同で回答しました。いくつかの質問と回答を抜粋してご紹介します。 
 >>全11問回答したQ&A回答集はこちら 

Q:Z世代から発信された流行をどのように他の世代へ広げていくか。もし事例等ありましたら教えてください

A:(伊勢半)コスメにおいてはZ世代✕コスメ垢のかけ合わせが大切だと考えております。他の世代に広げるというよりは、年齢に関係なくコスメ感度の高い方へのアプローチを意識しています。

(MERY)今はSNS上でバズったものがマスメディアへと転用されている時代ですので、SNSで話題になることで結果的に広く伝わっていくという構造は確立していると思います。そのためには分散さたものではなく、わかりやすい盛り上がりが重視される傾向が高いです。

(FinT)特徴的なスポットで生まれたトレンドや流行をどれだけ他の世代が利用しているプラットフォームなどに適応させて、ネイティブフォーマットで発信できるかが重要になります。例えば、直近主婦層の利用が増えている漫画アプリでの広告面や、TVerやABEMAといった新たなデジタルマスメディアなどでの広告配信など、流行やトレンドをどれだけ狙っている世代のフォーマットに合わせることができるかが重要になってくると思います。

(@cosme TOKYO)SDGs、ヴィーガン、エシカルのような切り口の企画棚を展開することで、他の世代のお客様にも関心を広げていく…という取り組みは実施しています。最近だとエシカルな美容情報アカウント「@cosme BEAUTYHOOD」の企画棚(ヴィーガンコスメ)を展開しました。

>>全11問の回答集はこちらから!ウェビナーQ&A回答集 番外編