2025年3月24日開催のリアル×オンラインのハイブリットセミナー「データと体験で紐解く!インバウンド市場から海外展開への戦略」の第1部では、「@cosmeが読み解くインバウンドと海外事業」と題し、@cosme OSAKAのインバウンドの現況を紹介するとともに、アイスタイルグループによるブランドの海外展開支援事業について事例を交え紹介しました。
訪日外国人旅行者が増加するのにともない、@cosmeの店舗でも中華圏からのお客様を中心に来店客数が増加しています。このうち2023年9月にオープンした@cosme OSAKAでは、2024年の1年間で免税売上高比率が大きく上昇し、2025年3月現在3割を超えています。また@cosme OSAKAは@cosme TOKYOと比べ、中華圏からのお客様が多い特徴があります。
@cosme OSAKAの事業責任者である株式会社アイスタイルリテール 店舗カンパニー OSAKA事業部 部長 加藤涼太は、インバウンドのお客様について「事前にほしい商品をリサーチし、その商品を探しに来店されることはあっても、いまやそれを大量に買い占めていくいわゆる“爆買い”をするお客様はほとんどいない。日本人のお客様と同じように、店内で手に取って試したり、美容部員の接客を受けたりして、気に入った商品を自分のために買う方が増えている」といいます。
2024年における@cosme OSAKAの売上上位30商品のうち、76%は免税売上の上位30商品と重複していました。また免税売上の上位30商品の95%は日系ブランドの商品でした。このことから、インバウンドのお客様が日本人のお客様と同じように、日本ブランドの人気商品を購入している様子が浮かび上がります。
「店内のランキングや手書きポップは日本語だが、インバウンドのお客様はスマホのGoogle翻訳等を利用して読まれている。またそうした翻訳ツールを使って、『この商品が私に合うか教えて欲しい』『私のなやみに合う商品をおしえてほしい』と店頭の美容部員に問いかけがあり、それをきっかけに接客をおこなうケースが増えてきている」(加藤)
越境MCN事業など日本から海外に向けてのマーケティング支援を行う株式会社Over The Border 代表取締役 倉島應介は、「旅行の前にRED(小紅書)やdouyin(抖音)などSNSで行きたい場所の情報を収集し、その情報を持って旅行するのが今はスタンダードになっている。@cosmeの場合は、旗艦店の周辺情報やベスコスの情報をまとめた投稿が人気」と中華圏からの旅行者の様子を紹介します。
中華圏のSNSにおいて、@cosmeを示す「#cosme」や「#cosme大賞」のハッシュタグがついた投稿は2025年3月現在3,700万件を超えており、いまや@cosmeのロゴマークやベストコスメは広く認知されている状況です。
SNS投稿のうち、特にエンゲージメントが高いのは、投稿者が実際に店頭を訪れて、店舗や商品体験を楽しんでいる様子を紹介したもので、こうした投稿は、「訪日時の参考にされるだけでなく、越境ECの売上にも影響を与え始めている」(倉島)といいます。
また倉島は「中国ブランドが台頭するようになった現在の中国市場において、日本ブランドがマーケケティングで戦うなら、日本で支持されている様子を見せるのが効果的」といいます。
たとえば、2024年に@cosme OSAKAで実施したポップアップイベントでは、日本在住のKOL・KOC数十名を招聘し、ポップアップの模様を紹介するSNS投稿を制作してもらい、中国の生活者に向けて発信してもらいました。特に反響がよかった投稿は閲覧数が約8万で、約5,500のお気に入りがつきました。そして投稿を開始した翌月には、施策を実施したブランドの@cosme OSAKAにおける中国免税売上は前月比約500%増加しました。
「日本在住のインフルエンサーが自分の視点で『大阪や梅田に来た時にはぜひここに寄ったほうがよい』と勧めたことが、中国の生活者にはすごくリアルに感じられ、心を掴んだのだろう」と倉島は振り返ります。
また、2024年6月に発表になった「@cosmeベストコスメアワード2024 上半期新作ベストコスメ」の受賞ブランドの免税売上を同年6月の前後半年間で比較したところ、約9割のブランドが受賞後に伸長していました。
このうち、あるブランドでは、すでに中国に進出済みで中国において一定の認知度も得ていましたが、ベスコス受賞を機に売上全体とともに特に免税売上が増加。@cosme TOKYO、@cosme OSAKAそれぞれで、2024年12月には免税売上が同年1月の約3倍となりました。
ブランドの海外進出を支援する株式会社アイスタイルトレーディング 営業部 プロモーション営業グループ 大島真凜は「ベスコスを受賞したことで店舗での体験機会が増え、インバウンドのお客様が手に取ることも増えたからだろう」と分析します。
加藤は「インバウンドのお客様は今後も増え続けていくだろう。ブランドと一緒に、国内のお客様だけでなく、海外のお客様のこともより理解して、どちらのお客様にもより一層お買い物を楽しんでいただけるように取り組んでいきたい」と意気込みます。
元@cosme TOKYO 責任者で、現在はアイスタイルの海外と日本を繋ぐビジネスを管轄する越境貿易ユニット 副ユニット長 インバウンドタスクフォース 坂井亮介は、「2023年から2024年にかけて海外化粧品市場は環境が大きく変化した。特に中国では中国国内ブランドの成長や処理水の問題、経済の停滞などがあり、それに合わせて生活者の買い方も変化しており、我々はそれに合わせた戦略をとっていく必要がある」と提言します。
そして、中国をただ人口10億人超の巨大マーケットとして捉えるのではなく、化粧品が好きで、化粧品を購入することや体験することが好きな現地生活者に向き合い、丁寧にアプローチをし、つながっていくことが重要ではないかと坂井は提案します。
具体的には、日本の@cosme店舗を「海外との重要な情報接点・体験接点の場所」ととらえ、インバウンドのお客様に買い物や体験を心ゆくまで楽しんでもらい、その様子を紹介するUGC(ユーザー生成コンテンツ)を作成してもらい、それによりまだ日本に来たことのない中国の生活者の中国国内でのEC購買にも繋げていくサイクルを、2025年にオープン予定の香港の旗艦店や、今後開催を増やしていく予定の上海でのポップアップイベントなどによるテコ入れを行いながら、強化していく方針です。
アイスタイルグループではさらにASEANや英語圏でのマーケティング支援体制も強化しています。例えば旗艦店@cosme TOKYOおよび@cosme OSAKAでのポップアップイベント開催では、中国の他にもタイなど最大9カ国の日本在住KOL・KOCを招聘することができます。インバウンド向けのサンプリングや、海外でのベスコスロゴ利用など、グローバルボーダレスマーケティングのための多彩なサービスを展開しています。
2025年6月11日~18日には@cosme OSAKAにおいて、ブランド連合のポップアップイベント「COSME EXPO in @cosmeOSAKA(仮称)」を開催予定です。日本在住KOL・KOCによるSNS発信など、インバウンドそして海外の現地生活者にアプローチできる同イベントパッケージはご要望が多く、すでに完売となりましたが、今後も国内・国外で同様の企画を計画しております。お気軽にお問い合わせください。