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感性×データ×対話がデータドリブンな人材を創る。ISDCとD4DRが描く次世代マーケター像

作成者: @cosme for BUSINESS編集部|Jun 9, 2025 3:02:16 AM

化粧品業界、特にマーケティング領域におけるデータドリブンな意志決定とは、あるいはその視点でデータを扱える人材とは。2025421日開催のウェビナー「『感性×データ×対話』がデータドリブン人材を創る」から、そのヒントをお届けします。

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化粧品業界におけるデータドリブンな意思決定、注目は「非購買データ」

ウェビナーには20254月にアイスタイルの新しいグループ会社として設立され、「データコンサルティングサービス」をはじめとしたブランドの包括的なマーケティング活動を支援する「データドリブンソリューション」を展開するアイスタイルデータコンサルティング株式会社(以下ISDC)代表取締役の天野博之と、美容業界に特化してイノベーションを起こせる人材の発掘と育成を行ったり、新規事業のアイデアからビジネスモデル構築までを創出することを目的とした研修サービス「美容業界イノベーションワークショップ」をアイスタイルと共同開発したD4DR株式会社 代表取締役 FPRC 主席研究員 藤元健太郎氏が登壇。化粧品業界におけるデータドリブンな意思決定や、それを取り入れるための方法を事例をまじえ語りました。

まず冒頭でISDC天野が説明したのは、まさにISDCがデータドリブンな意志決定を支援するための企業であることでした。

@cosmeの統合データ基盤(CDP)イメージ

ISDC データドリブンソリューションでは、@cosme経済圏のあらゆるデータを統合した上図のような統合データ基盤(CDP)を活用し、ブランドの体験設計や包括的なマーケティング活動を支援します。

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天野はこのCDPについて「ブランドでは保有するPOSデータだけを用いてマーケティング戦略をたてていることもあるが、POSデータは購買された結果だけを示すデータ。一方、@cosmeが保有する@cosme上でのユーザーの行動・閲覧データは購買前のデータだ。@cosmeのメディア、EC、店舗でユーザーが購買前にどういったものに興味があり、調べたり、試したりしているのか、@cosmeにはお客さんがアクションしたくなる仕掛けがたくさんあるので、購買前の興味を浮き彫りにできる。それに加えて、実際に何を買ったのか、なぜ買ったのか、をクチコミでひも解いていく。行動・閲覧データ、(ブランドの保有する)POSデータ、そしてクチコミ、この3つをあわせて読み解いていくことで、より高度に未来のマーケティング戦略を立てていける」とします。

ある商品を買ったという事実だけでなく、なぜ買ったのか、買う前後でどんなページを見たのか、カートインしたが結局買わなかった、など、ユーザーのアクションを線で繋いで考察することができるのです。

「ブランド側ではよく理解されていると思うが、ユーザーが店舗に来店すると、それまでそのユーザーが@cosmeのメディアやECで情報収集していたブランド・商品とは全く違うものが購買されるということはよくある。そうしたユーザーの動きが@cosmeの非購買データによって全て可視化されるイメージだ」(天野)

こうした非購買データについてはD4DR 藤元氏も他業界で注目さえているといいます。「非購買データは、美容業界だけでなく他の業界でも近年重要視されている。スピード感のある意思決定がますます必要になるなか、この先どうするか、どれだけリアルタイムに過去データで判断していくのか。非購買データがその鍵を握っているといっても過言ではない」(藤元氏)

そして非購買データには「購買フェーズ」と「サービスフェーズ」の2種類があると解説します。「ある商品の購買に至るまでに人々はどのように行動変容するのか。まずはどんな行動変容がおきているかを知ることが、購買フェーズでは大事だ。いっぽうサービスフェーズは、購入した商品がどういう体験価値をもたらしたか、例えば肌の乾燥を改善したいと思っていた人の乾燥が実際に改善したのかという結果の部分を知ることが大事になる。購買フェーズとサービスフェーズどちらも分析していく必要がある」(藤元氏)

またスピード感のある決断のために藤元氏は「意思決定者がデータドリブンなセンスを身につけることが重要」ともいいます。「美容業界にもデータサイエンティストの数は少しずつ増えてきており、ブランドの現場の担当者は日々リアルタイムでデータを追っている。しかしその一方で意思決定者はどうだろうか。PGの経営会議が全世界のデータをその場でドリルダウンして行われるように、下からの報告を待つのではなく、意思決定する人たちもデータドリブンになってほしいし、そうあるべきだと思う」(藤元氏)

そこで天野は、ISDCではクライアントのブランドにデータドリブンの感覚を定着させるために「感性×データ」による共創型変革モデルで支援していくといいます。ここでいう「感性」は、ブランドの哲学であったり、これまで経験してきた顧客コミュニケーションであったり、業界における幅広い知識や経験も含まれます。

「データそのものだけを売ってほしいと言われたりもするが、非購買データをこれまで活用していなかった人が見ても、見方次第では都合の良いように解釈できてしまい、客観性を失う可能性がある。経験上、データ提供だけでは課題解決にならないことが多く、それよりも、ブランドの課題に対して、ではどんなデータを見ればいいのか、というところから一緒に課題を設定して解決していくのが結果近道だ」(天野)

実は、@cosmeCDPの膨大なデータには、さらに膨大な掛け合わせのパターンがあります。ISDCがクライアントとディスカッションをする際にはその材料となりそうなデータを持参し、それをもとにブランドの感性を取り入れた議論を行い、新たに出てきた疑問には、それを解き明かす新たなデータを用意するというこの繰り返しを続けていくといいます。どんなポイントを見つけながら対話を繰り返していくのでしょうか。

天野は非購買データの中に気づきのポイントはたくさんあるが、なかでも「ブランドで従来保持しているペルソナと、データから浮かび上がった顧客像にどれくらいギャップがあるかは分析のしどころだ」といいます。つまりこれまで見えなかった課題が浮かび上がるのです。

従来のペルソナとデータから浮かび上がった顧客像を比較してみると、たとえば、ブランドのコミュニケーションメッセージが従来のペルソナには十分すぎるほど届いているが、実はもうひとつの顧客層にはほぼ届いていない、ということもわかるだろう。新しい顧客を獲得しようとするなら、コミュニケーションも変えていかなくてはいけないのではないかというひらめきもあるだろう。ブランドで経験豊富な担当者の磨かれた感性から生まれる、そうしたひらめきを少しでも導けるようなお手伝いが我々はしたい」(天野)

「マスメディアやソーシャルメディアはおそらく今後も種類が増え続け情報摂取の手段は多様化していくだろう。そうなったとき、どのブランドも予算が限られている中で全張りするのは現実的でない。一体何がいちばんROI(投資利益率)が良いのか、自分たちのポートフォリオを何を基準に定めていくのか、その基準が大事だと思う。そのためにブランドだけでは取得が難しい非購買データを膨大に蓄積した@cosmeCDPを活用してもらい、より精度の高いマーケティングや商品開発に生かしてもらいたい」(天野)

感性×データ×対話がなぜ大事なのか

購買データ、非購買データを読み解く時に大事にしたい「感性」と、チームやあるいは外部専門家もいれた「対話」について、天野は「辻褄の合わないこと」を見逃さずに、データの背景にあるものを共有していくことの大事さを強調しました。

「データと世の中の流れを比較した時に、トレンドではないのになぜか売れている、など、辻褄が合わないことはたくさんある。データはファクトとして大事だが、それだけでは解き明かせないこともある。しかし@cosme TOKYOなど自社の実店舗でお客様を観察したり、ブランドの担当者の顧客に対する肌感を共有いただくなど、実際のお客様を主語にしたときのブランドのあり方をデータに照らし合わせると「こういうことなのか」が繋がってくる。それこそが我々の大事にするべき感性ではないかと思う」(天野) 

藤元氏もこれに同意します。「ニッチな市場(N1)や共感を呼ぶストーリー(ナラティブ)から出発し、大きな市場へと展開していく戦略が、現代のマーケターにとって非常に重要だ。そのためには、自社のブランドメッセージがターゲットとするグループにどのように受け入れられるかを深く理解する必要がある。例えば、タイのボーイズラブ(BL)ドラマが人気で、そのファンがタイコスメをよく購入する現象がある。タイコスメの人気は、暑い気候に強いなどその品質の良さだけでなく、好きな俳優が使っているからという理由もあり、このような消費者の行動を読み解くには、常にアンテナを張り、『なぜこの人たちはこういう行動をするのだろう?』という好奇心を持って、そのグループの文化や価値観に深く入り込む必要がある。そして、その背景を理解した上で、自社のブランドの理念とどのように結びつけるかを考えることが、現代のマーケターには求められる。背景理解と自社ブランドとの関係性を考えることは、実は大変な作業で、好奇心なくしては難しいだろう」(藤元氏)

天野はこれに同意しつつ「いっぽうで、施策を実施する際にはPDCAを今こそ意識したほうがいい」といいます。

「色々な施策を実施する場はあり、メディアやSNS、さまざまなコミュニケーション手段もある中で、実際に売れたか売れなかったか、これをどこまで丁寧に振り返っていけるかがポイントだと思う。今支援させていただいているブランドにも話しているが、チェック(C)を2回行う『CPDCA』サイクルが重要だ。1回目のチェックでは、施策の目的と成功・失敗の基準を明確に設定し、2回目のチェックでは、集めたデータを元に、設定した基準に基づいて施策の効果を判断する。この時、感覚的に判断できる部分と、データに基づいて判断すべき部分を濃度的にコントラストをつけていくべきだと思う。そのためには、普遍的なマーケティングの知識とデータ分析の両方が必要になる。具体的なデータと抽象的な概念を行き来しながら、全体像を把握していく。私たちもコンサルティングを行う際に、この点を特に重視している」(天野)

天野はまた、SHISEIDOの「データコンサルティングサービス」PoCで、SHISEIDOISDCで行なった「対話」がSHISEIDO高く評価されたことに触れました。その対話とはどういうものだったのでしょうか。

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SHISEIDOはさまざまな主観的データを自社で保有しているが、我々の客観的データや競合との比較によるポジショニングデータと掛け合わせることで、マーケット・他社・自社を多角的に分析し、これまで材料不足でできなかったような活発な議論が可能になった。その結果、議論が習慣化したというSHISEIDO側の評価が我々にとって何よりの喜びだった。また、SHISEIDOISDCの協働は非常に刺激的で、ISDCから毎週新たに共有する分析結果に対し、SHISEIDO側の高い知的好奇心とプロフェッショナルなマーケティングセンスが発見を生み、それを受けて我々がさらに分析提案を深化させるという循環ができた。このようなディスカッションのブラッシュアップには、量や経験に加え、各々の能力をどう組み合わせるかが重要であり、議論の中から生まれるブレークスルーが次のステップへつながる手応えを、両社で感じることができた」(天野)

双方向の対話から誰も気付かなかった潜在的な課題が浮かびあがる

藤元氏は、美容業界に限らず、あらゆる業界のコンサルティングで今「対話」を重視しているといいます。

「コンサルティングの在り方は変化してきている。以前は『教える人と教わる人』のような関係が主流だったが、今は双方向の対話が不可欠だ。私たちは、クライアント自身が気づいていない潜在的な課題に目を向けてもらい、それを『自分ごと』として捉えてもらうプロセスを大切にしている。例えば、異なる部署同士が対話を通じて共通の課題を見つけたり、一見無関係だと思っていた業務が実は密接に関連しているとデータで明らかになったりすると、社内の協力体制が自然と生まれる。こうしたことが、コンサルティングの核心的な価値だ。 率直に言えば、多くの人は上司からの指示をこなすだけの仕事になりがちだ。しかし、自分ごととして捉え、そこに独自の面白さを見出せれば、モチベーションは大きく変わる。『他社の事例』や『世間のトレンド』に左右されるのではなく、『これは自分たちの未来につながるからやってみよう』という内発的な意欲が生まれるのだ。これは人材の成長に関わるテーマでもある。ビジネスの成功には個人の成長が不可欠であり、それを促すこともコンサルティングの重要な役割だと考えている」(藤元氏)

これに関連して天野は、データの解釈における視点の違いについて具体例を挙げながら説明します。

「例えば私の身長は179cmだが、個人の基準によって『高い』とも『普通』とも感じられ、世界平均と比較すれば相対的な評価は変わる。重要なのは、クライアントがどの基準を重視しているのかを共に理解し、共通のものさしを作ることだ。データが真価を発揮するのは、世間一般との比較や競合他社とのベンチマークなど、適切な文脈が整ってからだ。実際には、クライアントが想定していたベンチマークと現実の市場ポジショニングに乖離があるケースも少なくない。こうした認識のズレを解消し、適切な比較軸を見出すことも、コンサルティングが果たすべき重要な役割だ」(天野)

これからの時代に必要な「7つの未来人材コンピテンシー」と対話型研修

次に藤元氏は、近い将来訪れる本格的なAIの時代に人材に求められる新たな能力について話しました。 

従来は、いわゆる「作業」として命じられたことを着実に正確にミスなくこなす人材が重視されていましたが、そうではなくなるというのです。そして、このような人材に必要なコンピテンシー(行動特性)は、「知の探究力」「未来洞察力」「事業構想力」「マーケティングセンス」「プロデュース能力」「マネジメント力」「デジタルセンス」という7つのタイプだといいます。 

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D4DRではこの「7つの未来人材コンピテンシー」に基づき、21の項目に対する各自の回答を集計することで、社内の人材や社内全体のスキルをコンピテンシーレベルを図示したレーダーチャートで可視化する「未来人材アセスメント」を開発しています。「この7つの特性が1人に全てそなわってなくてもいい。組織内で持っていることが大事なのだ。そういった多様性のあるチームであることで活発な議論ができていく」と藤元氏はいいます。

また、これまで天野と藤元氏が話した、データを読み解く感性や対話の力を持つ人を社内から発掘したり、育成できるのがアイスタイルとD4DRで開発した研修サービス、「美容業界イノベーションワークショップ」です。 

13時間、日数は1日から6日まで設定でき、新規事業のアイデア創出やビジネスモデル構築を目的に利用することもできます。

6DAYプランの例

アイスタイル社内ではこの美容業界イノベーションワークショップを、バックキャスティング思考*でビジネスアイデアを創発する手法を学ぶことや、所属を超えたメンバーとつながり、共創を楽しむことを目的に、20251月から2月にかけて3日間の日程で実施しました。若手マネジメントメンバー31名が参加し、異なる部署のメンバーで構成した班でビジネスアイデアを創発、具体的な事業プランにまで落とし込みました。ワークショップ参加をきっかけに、やりたいことが見つかったと目を輝かせる参加者の姿もありました。
*将来ありたい姿/あるべき姿を思い描いたうえで、そこから逆算して“いま何をすべきか”を考える思考法 

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 天野は「データを読み解く感性を磨くには、とにかくまずは実際のデータに触れてみることだ。触れて触れて触れまくることで見えてくることがある。今回お話したコンサルタントサービス、研修サービスもうまく利用していただきながら、感性や対話の重要性を各組織の中で生かしていただきたい」といいます。

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