2023年4月26日に開催された@cosme for BUSINESS主催のウェビナー「メーカー・メディア・SNS・リアル店舗の各視点から紐解く Z世代との向き合い方と次世代コミュニケーション戦術」の内容を2回に分けて紹介していきます。前編の今回は、キュレーションメディアMERY、SNSマーケティング支援企業FinT、そして、@cosmeの実店舗とECを運営するアイスタイルリテールの担当者が登壇した、第一部「各メディアが考えるZ世代の特徴」についてレポートします。
若年層、とくにZ世代にフォーカスしたブランドコミュニケーションおよびプロモーションを支援する株式会社MERYは、10代後半〜20代前半をメインターゲットとしたSNSメディアとして、テーマごとに複数のアカウントを運営。Instagramの総フォロワー数83万9,000をはじめ、トータルリーチ数は158万7,000に上ります(2023年4月現在)。
そんなMERYが、Z世代をどのように捉えているのか、同社執行役員CCOで、MERYZ世代研究所 所長 兼 統括編集長を務める平山彩子氏は、Z世代は、YouTubeが創業した2005年あたりから急激に進化したSNSサービスとともに育った世代と位置づけます。そして、20代女性に自分たちを表現する言葉について尋ねたMERYの独自調査では、60%が「自分らしさ」と回答し、圧倒的1位だったことを明かしました。
「(Z世代の)価値観としては、自分らしさを大切にして、キャリアを積むよりも自己スキルを磨くことを志向する。消費行動においても、企業側が発信する“ブランド”や“メジャーなもの”といったイメージからは距離を置き、自分に合ったものを見つけたいという気持ちが強く、だからこそ、良いものだと自分が納得したものは高くても買う」と、平山氏は分析します。あわせて、自分にあっているかどうかを吟味する過程で、繰り返し、多角的に情報に触れて丁寧に検討するのも特徴だとします。
また、Z世代が商品に出会うきっかけはSNSで、スマホを手にとるとまずタイムラインを開くところが、30〜40代、50〜60代と大きく異なります。TVを筆頭に、新聞・ラジオ・雑誌が情報収集手段のほとんどすべてだった「マスメディアの時代」が、「マス×WEBの時代」を経て「SNSファーストの時代」になったと平山氏は説明。当然、購買までのカスタマージャーニーも変化し、情報を発信する企業と受け取る消費者という「ONE WAYモデル」が、WEBの利用が拡大するにつれて、企業と消費者が互いに関与しあう「インタラクティブモデル」となり、SNSの利用拡大に伴い、今は消費者同士が購買意欲を高めあう「モチベートモデル」の段階にあるといいます。そこでは購入を決めるまで、信頼するクチコミやインフルエンサーなどSNSを検索して、さまざまな角度から、自分に合うかを細かく調べるプロセスが加わっているのです。
では、ビューティブランドは、こうしたZ世代とどのようにコミュニケーションをとるべきでしょうか。平山氏は「世界観、提案性のあるコミュニケーションを、いかにユーザーにとって心地よく、多角的に積み重ねることができるか」が鍵になるとします。
ひとつには「Z世代が好まない、いかにも“THE 告知”といった一方的な広告臭の強い表現を避け、どのメディアを見ても同じようなことをしている画一的なクリエイティブやアプローチをしないことが大切」と平山氏。また、MERYの再生回数トップ6にランクインした人気リール動画を例にあげ、「日常の何気ないお悩みを解決するものや、指先が映り込んでいるなど、商品だけではなく人を感じるショート動画」がZ世代に響くと話します。
Z世代は、Twitterはリアルタイムで情報が欲しいときや本音のレビューが見たいとき、Instagramは自分も真似できるトレンド探しや友人にシェアする際の参考に、TikTokは暇つぶしがメインで意外な面白トレンドとの出会いを期待するエンタメ的要素が強いというように、SNSプラットフォームを使い分けているといいます。ブランド側には、同じ商材であっても各SNSの特性に合わせたクリエイティブが求められます。
同時に、ブランドのオウンドSNSでの偶発的な出会いはショート動画がきっかけになると平山氏は指摘します。その意味で、パーソナライズされたタイムラインのなかから、無意識的に見るものと見ないものを判断している状態のユーザーに目を留めてもらうには、興味の範疇にあるネタのセレクトとともに、なんだか心地よいと感じてもらえる世界観を兼ね備えていることがマストです。そのうえで、反応をあげるための余白を用意することが、再生回数につながるとしています。
続いて登壇した、大手企業のSNSマーケティングを戦略設計の段階からキャスティングやキャンペーンまで幅広く支援する株式会社FinT マーケティングパートナー事業部 プランナーチーム マネージャーの熊谷聰威氏も「Z世代はSNSネイティブであり、情報に対する捉え方が前の世代とは違う」と指摘します。
ソーシャルメディアの台頭により、発信源は企業主体から個人主体に、情報に対する信頼度はテレビなどのメディアからUGC(ユーザー生成コンテンツ)に、あわせて、情報の伝わり方が1:NからN:Nに変わったことで、拡散性も大きく広がりました。そして、情報の伝播スピードは圧倒的に高速化したと熊谷氏は説明します。すなわち、「Z世代はより信頼性の高い情報を得るために、企業発信の情報だけではなく、さまざまなソーシャルメディアにおけるクチコミも積極的に参照して、横断的なアクセスをもとに購入などの意思決定をしている」というのです。
こうした「自ら情報を獲得しにいき、納得することで購買を行う」Z世代にアプローチするうえでマーケティングに求められることとして、熊谷氏は「各SNSメディアの特徴を理解したうえで、複合的なマーケティングを展開する必要がある」と説きます。さらに、この“複合的”なマーケティングには、ユーザーが商品を認知して興味をもち、比較・検討する段階を経て購入へと進み、その後、継続するまでの顧客ジャーニーの各段階において、適切なSNSプラットフォームを選んで展開することが含まれます。
熊谷氏は、具体的なマーケティング事例として、ドラッグストア市場シリーズ別売上シェア1位*を獲得したI-neの「YOLUカームナイトリペアシャンプー・トリートメント」の戦略を分析。多様なチャンネルからの発信をタイミングよく組み合わせることで、バズを生み出すとともに、メリハリのある飽きさせないキャンペーンの手法を解説しました。
* ドラッグストア市場のシャンプー・リンスカテゴリーにおける商品シリーズ別の2022年10月ならびに11月の販売金額より (I-ne調べ)
第一部の最後に登壇した、株式会社アイスタイルリテール 営業推進部 店舗販促グループ マネージャー 後藤文香は、国内No.1の正規取扱ブランド数と敷地面積をもつ旗艦店「@cosme TOKYO」における「Z世代を動かすリアル店頭施策」を紹介しました。
後藤はまず、@cosme TOKYOで見られるZ世代の購買行動の特徴として「ただ商品を買うだけではなく、オリジナリティのある購買体験を求めている」こと、平山氏や熊谷氏も指摘したように「自分に合うかどうかを吟味し、納得すれば値段が高くても買う」、「実際に売れているのか、本当に良いものなのかを確認する買い物への慎重さ」の3点をあげました。
そして、こうしたZ世代ユーザーの期待に応えるための施策として、さまざまなコラボレーションやイベントの開催や、店舗スタッフによる接客コミュニケーションの質の向上、話題の商品はいち早く店頭に並べるなどスピード感のある棚づくりなどに努めていると話します。
一例では、2020年11月に開催した「ラブライナー×Knights」は、mshのリキッドアイライナーとスマホゲームに登場する男性アイドルユニットのコラボで、各メンバーをモチーフにしたコラボパッケージを、@cosme STORE6店舗で同時発売し、2日目には完売。@cosme TOKYOでは当日整理券を配布したところ、開店前に配布が終了し、商品は即日完売しました。この企画では、メンバーの等身大ビジュアルと一緒に写真が撮れる撮影スポットを設けるなど、単にショッピングをするだけではなく、店舗を訪れたことで得られるプラスαの体験も創出しました。
「“推し”とのコラボ」はほかにも、韓国コスメ「4OIN」とアイドルグループ「TOMORROW X TOGETHER」との特別イベントや、人気インフルエンサーやタレントが創業したブランドによるポップアップがあるほか、@cosmeユーザーを招待したメイク&トークイベントやメイク体験会も行っています。あるいは、ハズレなしのおみくじや、巨大ガチャガチャなど、参加型の体験スペースも人気が高い施策といいます。
また、後藤は「特定のメーカーに限らず、ブランドを横断して、気軽に相談にのる@cosme STOREの接客スタイルもZ世代との親和性が高い」とし、インフルエンサーの爆買い動画のなかで、店舗フロアをスタッフが一緒に歩き回りながら、その場で商品や使用法、おすすめポイントなどの質問に答えて、買い物をサポートする様子が写り、商品と店舗双方の認知拡大のきっかけになったとします。
加えて後藤は「実店舗はZ世代のユーザーが“答え合わせ”をする場所」といいます。「お客様のなかには、SNSで情報収集した商品を実際に見て触ったり、テスターをお試したり、スマホの動画や画像と実物を見比べたりする方も多い。本当にバズ商品かどうか、商品名をあげてスタッフが聞かれることも少なくない。そして自分の腑に落ちたら、即断してすっと購入していかれる」として、買い物で失敗をしたくないZ世代ユーザーにとって、店舗での確認やスタッフの承認が“最後のひと押し”になっていると述べました。
ウェビナー中で回答しきれなかった視聴者からの質問に登壇者一同で回答しました。いくつかの質問と回答を抜粋してご紹介します。
>>全11問回答したQ&A回答集はこちら
A:(伊勢半)コスメにおいてはZ世代✕コスメ垢のかけ合わせが大切だと考えております。他の世代に広げるというよりは、年齢に関係なくコスメ感度の高い方へのアプローチを意識しています。
(MERY)今はSNS上でバズったものがマスメディアへと転用されている時代ですので、SNSで話題になることで結果的に広く伝わっていくという構造は確立していると思います。そのためには分散さたものではなく、わかりやすい盛り上がりが重視される傾向が高いです。
(FinT)特徴的なスポットで生まれたトレンドや流行をどれだけ他の世代が利用しているプラットフォームなどに適応させて、
ネイティブフォーマットで発信できるかが重要になります。
例えば、直近主婦層の利用が増えている漫画アプリでの広告面や、TVerやABEMAといった新たなデジタルマスメディアなどでの広告配信など、
流行やトレンドをどれだけ狙っている世代のフォーマットに合わせることができるかが重要になってくると思います。
(@cosme TOKYO)SDGs、ヴィーガン、エシカルのような切り口の企画棚を展開することで、他の世代のお客様にも関心を広げていく…という取り組みは実施しています。
最近だとエシカルな美容情報アカウント「@cosme BEAUTYHOOD」の企画棚(ヴィーガンコスメ)を展開しました。