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アイスタイル吉松CEOが思い描く新しい化粧品小売のあり方「co-store戦略」とそのサービス構想

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アイスタイルの連結子会社アイスタイルリテールは、2022年8月30日、化粧品ブランド向けにサブスクリプション型の出店サービスをリリースしました。

このサービスの立ち上げの背景には、アイスタイルCEOの吉松徹郎が提言する「co-store戦略」があります。これからの未来の小売店舗のあり方を考えたときに、ユーザー、ブランド、小売のいずれも“三方良し”の状態をつくり出したいというもので、この「co-store戦略」をブランド様向けに実現していくのが「co-storeサービス」です。

今回、@cosme TOKYOで可能となったサブスクリプション型出店は、その「co-storeサービス」の第一弾となります。サブスクで出店することが、今後の「co-store戦略」とどうつながっていくのか。そこには吉松が描く大きなビジョンがあります。

出会いの場としての店舗、仕入れ販売モデルからユーザー獲得支援モデルへ

吉松は現在、化粧品業界で働く方々に向けたオンラインビジネスマガジン「BeautyTech.jp」上で、「小売店舗のミライをかんがえる」と題したコラムを連載中です。そのなかで、吉松は、化粧品業界において小売店が抱える課題、ブランドが直面する状況、生活者の意識の変化などを分析し、小売店は「仕入れて売るという従来のビジネスモデルだけでは立ち行かなくなりつつある」とし「出会えて試せる、つまりブランドにとってはユーザー獲得の場所としてのサービスを提供していく」化粧品大型店舗にビジネスモデルを転換すべきではないかと考察しています。

20220909_1株式会社アイスタイル 代表取締役社長兼CEO 吉松徹郎

この考えにもとづき、アイスタイルによる新しい小売店舗の在り方として「コワーキングスペースのように大型店舗をブランド同士でシェアしていく」スタイルを打ち出していきます。これは一見、百貨店に複数ブランドが出店している状況と同じにみえるかもしれません。しかし、箱としての小売店の役割が「商品の販売」にとどまらず「ユーザーとの出会いの場」も提供している点で大きく異なります。

たとえば、コワーキングスペースには、講演会や勉強会、あるいはパーティを開くなど、そこに集う企業同士のコミュニケーションが発生するイベントを設けるといった「ファシリテートする仕組み」があります。co-storeサービスにおいては、単に店舗に商品を並べておくだけではなく、ブランドの方自身が店舗ユーザーとコミュニケーションを取れたり、ユーチューバーが店内を自由に歩いて商品を試して動画を撮ったりするなど、ブランド1社だけでは難しい動きを店舗サービスに組み込もうとしています。

販売も、店舗のレジで行うだけではなく、ショッピングに訪れたユーザーがその場で直接ブランドサイトにアクセスし、公式ECで購入するなど@cosme TOKYO以外のオンラインショップで買っていただくこともできます。その理由は「店舗での購入を最終目的とするのではなく、各ブランドとユーザーがどう出会ってもらうか」だからです。

これまでは、こういった出会いの場を店舗側が仕掛けてもその価値は「その場で売れた結果」でしか測られてきませんでした。

この「店舗を訪れたユーザーにさまざまなレベル、違った角度の体験を提供することを通じて、商品との出会いを価値にする」という考え方が、co-storeサービスの核となります。出店サービスとしての機能拡充はもとより、今後、ユーザー、ブランドを巻き込んで、複合的なエクスペリエンスを創造し、それを楽しむ場に店舗の役割を拡張していくことを目指していくのがアイスタイルが目指す「小売店舗のミライ」なのです。

ユーザーとの最初の接触コストは、ネットよりもリアルが安い

そもそも、サブスク型出店を皮切りに「co-storeサービス」を展開する理由として、現在、多くの化粧品ブランドが直面している3つの課題、ジレンマを解決できないか、という吉松はじめアイスタイルとしての思いがありました。

ひとつは、加速度的に増え続けるデジタルコストが売上に直結しにくいことです。従来のECチャネルの構築に加えて、AIの活用やソーシャルとの連携、メタバースへの進出など、デジタルへの投資はますます増えますが、DXも考えるとすぐに売上に直結するものばかりではありません。

2つめに、InstagramTwitterYouTubeTikTokとユーザーが見るメディアはどんどん分散している今、かつてのマスメディアと呼ばれるテレビや雑誌に比べると、コンテンツの量は莫大に増えており、オンライン上でもユーザーに自社のブランドの商品を見つけてもらうことが難しくなっているという課題があります。

3つめは、大きな費用をかけてブランドの世界観を体現する旗艦店を立ち上げたとしても、ひとつの企業、ブランドだけでたくさんの顧客を呼び込むことは容易ではなく、ブランド体験を自社のみで提供するには限界があるという現実です。

こうした課題をかんがみ、吉松がコラムでも展開しているように、ブランド様が今後のco-storeサービスを使っていただくことで「ユーザーとの接触コストが、ネットよりもリアルの方が安くなる」とします。

たとえば、旗艦店を銀座や表参道など東京の一等地に開設するのではなく、@cosme TOKYO3階に入店したとします。この店舗のビジターは「化粧品が好きな人」「新しい商品を探しに来ている人」がほとんどです。こうしたユーザーに今までにない体験の機会を提供できるのです。地代家賃が仮に半分になり、ユーザーの接触数が既存店舗の少なくとも2倍以上になったとしたら、ユーザー1人あたりの接触コストは4倍以上の価値になるはずです。

また、インターネットコンテンツやECは、生活者にとって商品を検索したり理解するという意味では優れたツールです。しかし「1時間で100ブランドと出会うのに、ネットとリアルはどちらが効率的か」と考えると、ネットでは一度に比較が難しく、かつ試すことができないため、じっくり説明を読んで10商品程度を比較できれば良い方ではないでしょうか。

一方で、@cosme TOKYOに行くと、店頭の約600ブランドが目に飛び込んできます。いろいろな商品を手に取り実際に触れたり、テスターやバーチャルメイクツールを試しているうちに、あっという間に1時間が経っていたと話すユーザーも多くいます。リアルでは1時間のうちに100ブランドと接触することはそれほど難しくはありません。そのうち10くらいのアイテムを試すことも可能でしょう。

デジタルでは、顧客を知るためのユーザーデータの集積やレコメンドシステムなどAIの活用によって、もともとブランドや商品に興味関心が高いユーザーには効率的にコンタクトできるようになりましたが、「最初の顧客接点は、店舗(リアル)の方が効率がいい」といえるのです。

このように、店舗は「販売する場所」から「商品に出会う場所」になってきています。これまでは「メディアで伝えて店舗で買ってもらう」という流れが、「店頭で出会って、ネットで確認・理解して買ってもらう」という流れに変わってきているのです。そして、一番新しい化粧品を探している人がいる場所、商品を知りたい人が集まっている場所が、店舗なのです。

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変化する生活者の意識や行動に応えるリアルな体験の提供

co-storeサービスにおいては、「購買において失敗したくない」という気持ちがますます高まっている生活者にとっても有用なものとなっていくとアイスタイルでは考えています。とくに、学生や社会人になったばかりの若い世代は、自分に合うものを選び抜いて購入する傾向があります。買ってから「環境に配慮していない商品だった」など、マイナス要素に気づくのは避けたいといった意識が強いのです。

そのため、SNSでクチコミや体験談をチェックしたり、店舗スタッフに聞いたり、サンプルの代わりにメルカリで二次流通品を買って試すなど、いろいろと調べて商品をよく知ってから購入を決めます。その意味で、さまざまなブランドのたくさんの商品が一堂に会している大型化粧品店舗は、商品の比較サーチやトライアルが短時間で簡単にでき、かつ楽しい場所として支持されるのです。

ブランドからすれば、自社だけで行うDXコストを削減し、小売店営業とマーケティングや販促が一体化した「出会い」を強化することで、Webの販促だけでは難しかったリアルに試してもらう機会を増やせます。その結果、新規顧客獲得や休眠顧客の活性化などに繋げられます。小売店にとっても、商品の販売のみならず、場の編集、ファシリテートを通じて「出会いの価値」を高め、時代に伍していける新しいビジネスモデルの確立ができるのです。

そのco-storeサービスの第一歩である月額固定のサブスクリプション出店は、市場調査や物件、店内デザイン選定、人材の手配や教育など、実店舗出店にまつわるさまざまな手間やコストをブランドが負担することなく、@cosme TOKYO@cosme STOREといった、これまでの企画やイベント実施などの実績を持ちすでにコスメ好きが集まる場所に、気軽に出店することを可能にします。これまでの販路だけでは実現できなかった「顧客接点」が生まれるのです。

これが活発になればなるほど、オンラインよりもリアルのほうがその接点づくりのコストが安くなっていき、今後、トランザクション型課金などを組み合わせた「co-storeサービス」の第2弾、第3弾をリリースしていくことも視野にいれていきます。

小売店とブランドがリアル店舗をハブに、ユーザーとのよりよい出会いを共に作っていくco-store戦略とそのサービスは、まさに「小売店舗のミライ」の姿といえるでしょう。

>>co-storeサービス第一段、サブスクリプション型出店サービスの概要はこちら

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