COLUMN

トレンドコラム

注目トピックスは「ヒト幹細胞」「韓国コスメ」「異業種のOEM参入」「フェムケア」。 COSME Week 東京 2023レポート

注目トピックスは「ヒト幹細胞」「韓国コスメ」「異業種のOEM参入」「フェムケア」。 COSME Week 東京 2023レポート サムネイル画像

東京ビッグサイトで開催された「COSME Week 東京 2023」(2023111日〜13日)。同開催の注目トピックスとして「ヒト幹細胞」「韓国コスメ」「異業種の新規参入」「フェムケア」、新設の「ヘアケアEXPO」をとりあげ、その最新トレンドを紹介します。

COSME Week 東京 2023では、初開催のヘアケアEXPOのほか、「国際化粧品展」「化粧品開発展」「美容・健康食品EXPO」「国際エステ・美容医療EXPO」「化粧品マーケティング EXPO」の6つの展示会が同時開催されました。海外からの往来が再開したことで、出展企業574社、来場者29,500人の中には、海外企業による出展ブースや韓国などからの来場者が目立ちました。 

初開催「ヘアケアEXPOでは美容室・リテール向け商材が一堂に

ヘアケアEXPOでは、シャンプーや育毛剤などのヘアケア剤、ヘアケア機器、ヘアケア原料など、ヘアケア製品の開発と流通に特化した出展ブースがならびました。

 韓国から出展した「WithBecon」は、サムスン電子のインキュベーションプログラム「C-Lab」からスピンオフし、202011月に創業したBecon(ビーコン)のホームスカルプケアソリューションです。同社はアメリカで開催された国際見本市「CES2023」にも出展していました。

20230227_3出典: WithBecon Facebookページ

WithBeconは主に、薄毛の悩みを持つユーザーをターゲットにしています。ユーザーが光学レンズとCMOSカメラ、温度や水分などの複数のセンサーを備えたIoT頭皮診断機器で頭皮データを取得し、そのデータを専用アプリに送信すると、ディープラーニングによる解析が行われ、毛穴の密度、敏感さ、頭皮のタイプ、既存の問題など、頭皮の健康状態が最大10個の判定結果としてアプリに表示されます。

抜け毛進行率や頭皮タイプ分析、似たような属性のユーザーとの比較分析などが可能で、AIから最適なケア方法が提案されるほか、韓国では頭皮データをもとに、悩みに応じたカスタムヘアケアの販売も行っています。

20230227_5出典:WithBecon公式サイト

日本での展開は可能性を探っている最中とのことでしたが、美容室が導入するといったBtoBビジネスを想定しているそうです。

 多くのブースで紹介されていたトレンド成分「ヒト幹細胞」

化粧品開発展ではCBD、ヘパリン類似物質、レチノールなどのトレンド成分が並ぶなか、とくに多くのブースで紹介されていたのがヒト幹細胞でした。ヒト幹細胞は主にヒトの皮下脂肪から採取した脂肪由来の幹細胞で、化粧品原料としては、成長因子など多くの活性物質を含む幹細胞培養(幹細胞培養上清液)が用いられます。肌のハリやシワ改善などエイジングケア効果が期待され、近年注目されている原料です。

自治医科大学 形成外科 吉村浩太郎教授と共同研究を行うテレバイオ(TeleBio)は、「ヒト幹細胞セクレトーム()エキス」を出展。これまでは細胞が人間と同じようにアンモニアなどの不純物を放出することはほぼ知られていなかったため、市場に流通している幹細胞培養はそのための精製が行われてきていないとの指摘もありますが、ヒト幹細胞セクレトームエキスは幹細胞の分泌因子群を精製してエキス化することでアンモニアを除去した点が優れているそうで、この技術は独自の精製方法として特許出願中です。ヒト幹細胞セクレトームエキスはすでに市販商品で使用されているほか、20231月からはスキンケアブランド「ルルルン」を展開するDr.ルルルン株式会社と自治医科大学との共同研究を開始しています。

このほかにも、2012年からヒト幹細胞培養液を日本で導入、提供しているアンチエイジング株式会社は、細胞から分泌され、細胞間のコミュニケーションツールとして働くとされるエクソソームを後添加することで「ヒト脂肪由来間葉系細胞エクソソーム」と表示できるようにした原料「RS Liposome 3.0E Complex」などを展示しました。ザ・グラツィア・インターナショナル株式会社は、OEM事業の原料として「ヒト幹細胞培養液」を紹介しました。

※細胞は組織修復や恒常性維持に必要な分泌因子群を放出するが、特に幹細胞には固有の分泌因子群が放出されており、それらの総称がセレクトームと呼ばれる

一層強まった韓国コスメの存在感

20230227_9ヴィーガンスキンケアブランド「hersteller」

2022年のCOSME Week 東京でもアジアコスメの展示が目立ちましたが、2023年は韓国コスメの存在感が一層強まりました。韓国パビリオン以外でも、多くの韓国企業が出展。日本のオフライン未上陸ブランドでは、韓国で人気のヴィーガンスキンケアブランド「hersteller(ハーステラー)」、中国市場でも人気のあるベースメイクブランド「tfit(ティフィット)」、リップカラーを展開するコスメブランド「nuegray(ヌグレイ)」などが出展し、注目されました。

韓国ブランドの日本進出はパンデミックを機に加速し、財務省貿易統計による化粧品の輸入金額の統計では、2021年時点で1位のフランスに僅差で迫る2位に浮上しています。

日本は化粧品の購入場所としてドラッグストアなどがすでに飽和状態にあり、リアル店舗を進出させるコストやリスクが大きいことから、これまではオンラインを中心に海外市場の攻略を目指す韓国ブランドが多くみられました。たとえば、総合ECモール「Qoo10」や「楽天市場」に公式ショップを開設する、もしくは「オリーブヤング」のグローバルECなどから海外発送を行うか、日本の販売代理店を通じて店の棚を取る形で販売を行うといったようにです。

しかし今回のCOSME Weekでは、「自社で日本法人を設立し、オフラインに進出する計画がある」という声も聞こえ、日本市場への本気度がより高まっている様子がうかがえました。

異業種から化粧品OEMに参入したユーグレナ、ぺんてるも出展

20230227_6「ミドリ麹」(左)から抽出した「ミドリ麹エキス」(右)イメージ
出典:株式会社ユーグレナ 公式サイト

2022年から化粧品OEM事業を本格的に開始した株式会社ユーグレナは、藻の一種のユーグレナ(ミドリムシ)を活用した事業を行うバイオテクノロジー企業です。OEM事業では 基礎化粧品やヘアケアの受注、また海外からの受注も見込みます。同社は2008年から日本コルマー株式会社との協業で微細藻類ユーグレナを用いた化粧品事業をスタートし、化粧品素材の開発製造、OEM供給を行ってきました。自社でもスキンケアブランド「NEcCO(ネッコ)」などを展開しています。

同社広報担当者は「ユーグレナはこれまで主に食品事業で展開してきたが、化粧品としてポテンシャルを発揮できる素材であることがわかっている。より多くの方にその効果を実感いただきたく、OEM事業を開始した」と説明。2023年に新たな化粧品原料として開発した「ミドリ麹エキス」は、同社の研究において表皮角化細胞におけるヒアルロン酸およびグルタチオン産生を促進する作用や、角層タンパク質のカルボニル化(タンパク質が過酸化物質などによって変性し、黄色に変色すること)を抑制する作用がみられるとの結果を確認したそうです。ほかにもユーグレナ由来の原料の開発を行っており、ユーグレナに関する研究開発力を化粧品開発に生かしていくとのことです。

20230227_7ぺんてるのブースイメージ
出典:ぺんてる株式会社 公式サイト

画材や文房具のメーカーとして知られるぺんてる株式会社も化粧品OEMに参入しています。同社の代表製品である筆ペンの製造の経験やノウハウを生かし、容器設計からペン先・穂先加工、アイライナーOEMを行っています。

展開の幅が広がるフェムケア製品

数年前から注目度が高まっているフェムケアは、COSME Week 東京 2023でも目立つ存在でした。ブランド展開する企業が増えたことで、より差別化要素のある新しい提案が見られました。

メリードゥビューティープロダクツ株式会社は、オーガニック・ナチュラル認定化粧品を製造するエコサート認定工場を有する化粧品総合メーカーで、フェムケアを含む化粧品のOEM/ODM事業も行っています。なかでも、デリケートゾーン商品の製造に関する相談が多いそうです。商品の特性上、高い安全性を求めるユーザー傾向が強いなか、オーガニック・ナチュラルのデリケートゾーン商品を作ることのできる企業は日本国内ではまだ限られており、そこが同社の強みです。また同社の関連企業であるオーガニックアース株式会社は、自社ブランド「オーガニックアース」でもフェムケア製品を製造販売しています。

20230227_10オーガニックアース フェムケア シリーズ
出典:オーガニックアース株式会社 公式サイト

化粧品の原料開発や商品企画、技術提供を行う株式会社コレインはフェムケア向け原料「スキンフローラ発酵液」を出展しました。デリケートゾーンの環境を整えるために重要な役割を果たす善玉菌の化粧品原料で、スキンケアに用いることも可能だといいます。

オフラインを見据えた提案がより活発に

COSME Week 東京 2023全体を通じては、前年同様にサステナビリティに関する提案やデジタルマーケティングサービスの紹介も多く行われました。サステナビリティ関連では容器や包装に関するものだけでなく、従来なら廃棄されていた規格外作物や残留物を活用したアップサイクル成分の提案も行われました。パンデミックの間に成長したオンライン通販に関連する容器・包装や、AI/ARなどのデジタル施策の提案は引き続き目立ちながらも、アフターコロナを意識したカラーコスメやベースメイクのブースにも人気が集まりました。今後はさらにオフラインでの動きを見据えた商材やサービスの提案、また海外からの出展が活発になりそうです。

COSME Weekは次回、20239月に大阪、20241月に東京で開催予定です。

Text:臼井杏奈
画像提供:RX Japan株式会社

CTAテスト画像
CTAテスト画像
  1. 前の記事

  2. 次の記事

トレンドコラム一覧へ戻る