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Z世代や初心者に刺さるメンズコスメとは?注目ブランドそれぞれのコンセプト

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日本では近年、男性Z世代を中心にベースメイクの購入率が高まり、様々なメンズコスメブランドも相次いで登場しています。今回はこのうち「初心者向けのシンプルなアイテム」を打ち出すアンナドンナの「イッツイージー」、「学生との共創」でPRイベントを開催した資生堂「サイドキック」、「デジタルコンテンツでハウツー解説」をおこなう花王「アンリクス」の3ブランドを紹介します。

男性のメイクアイテムの購入率はすべてのアイテムで前年より増加

株式会社リクルートの美容に関する調査研究機関「ホットペッパービューティーアカデミー」が2022年に行った、過去1年間の美容意識や購買行動に関する利用実態調査によると、男性のメイクアイテムの購入率はすべてのアイテムで前年より増加しました。

20230213_2出典:株式会社リクルート プレスリリース

ホットペッパービューティーアカデミー 研究員 田中公子氏は「女性がコロナ下でメイクアイテムの購入が減ったのに対し、男性は若年層を中心にメイクアイテムの利用が伸びて、20代は5人に1人が何らかのメイクアイテムを1年以内に購入している」と説明します。また「若年層ほど、外見に対する美容意識が高く、『外見を今よりよくすること・若さを保つことへの関心』の調査では、男性の平均値の54%に対して、1519歳は71%と高い数字が出た」といいます。

同調査によると、購入率が高いメイクアイテムは下地、コンシーラー、ファンデーションの順で、ベースメイクに注目が集まったかたちです。その要因の1つが「ひげの剃り跡に関する悩み」で、マスクを外すことになったら注力するメイクやスキンケアとして全世代の1位に挙げられました。田中氏は「ひげのケアは多くの男性にとってほぼ毎日のケア。注力する部分と言われて想起しやすかったことも理由だろう。そのなかで、青髭など剃ったひげの跡が残る人、カミソリ負けをして肌トラブルが起きる悩みを持つ人もいる」といい、それらをファンデーションやコンシーラーなどのベースメイクで隠す需要があることを指摘します。

「初心者でも簡単」を追求したアンナドンナ「イッツイージー」

イッツイージー店頭でもぱっと目に入るカラフルなパッケージが特徴
画像提供:株式会社ダリヤ

202212月にローンチしたメンズコスメブランド「イッツイージー(IT's EASY」は、こうした時代のニーズを捉えた商品を展開しています。ブランドを手がけるアンナドンナは、ヘアカラーやヘアケア製品を主力として展開する株式会社ダリヤの一事業部です。これまでに数々のオリジナリティのある商品を手がけていますが、メンズメイクを販売するのはダリヤとしても初めての試みです。

株式会社ダリヤ 商品戦略本部 宣伝販促部 広報担当 大木愛美氏は「アンナドンナ自体が若者やトレンドを意識した事業部。近年、Z世代を中心にメンズメイクへの関心が高まり、海外では若い男性がメイクすることも習慣化してきた。近い将来、日本でもメンズメイクが根付くのではと考え、今回の立ち上げに至った」といいます。

また大木氏は、アンナドンナが手がけ、ドン・キホーテやロフトなどで販売されているヘアカラーブランドの「エブリ(EVERY)」のように、「アンナドンナの流通の強みを生かしたいということも、メンズメイクブランド立ち上げの1つの理由だった」といい、ベンチマークとしては、販路や価格帯の近い「ギャツビー デザイナー(gatsby THE DESIGNER )」「バルクオム メイクアップ(BULK HOMME THE MAKEUP)」「リップスボーイ(LIPPSBOY)」などを挙げます。

イッツイージーでは20222月現在、2,000円前後の価格帯で4SKUを展開しています。商品はブランド名の通り簡単であることがコンセプトです。「イッツイージー コンシーラー」はクレヨンタイプで、ニキビやひげの剃り跡などに直接塗布できるものです。また反対側のエンドにはチップを取り付け、簡単にぼかせるようになっています。「イッツイージー アイブロウ」は淡いグレーブラックにすることで調整しやすく、筆圧がわからないという男性でも描きやすく折れない筆ペンタイプを採用しました。

大木氏は「メイクに興味があるけれど何をどう使ったらいいかわからない、という初心者でも一式揃えるだけで使えるブランドになっている」と説明します。アイテム数もベースメイク、アイブロウ、洗顔料に絞ることで、選ぶ難しさを解消しました。またニキビに悩む若者が多いことから、ノンコメドジェニックテストを実施し、パッケージでも「ニキビになりにくい処方」と訴求しています。

20230213_4株式会社 ダリヤ 商品戦略本部 宣伝販促部 広報担当 大木愛美氏

ブランドの企画は2年前からスタート。コスメに対する意識が高く、普段から積極的にSNSを活用している男性10人、女性5人のプロジェクトチームで進行し、市場調査では本当に欲しいもの、使いたいものを見つけるためのインサイト調査に時間をかけ、ワークショップを行って案を絞り込んだそうです。とくに試作でこだわった「イッツイージー BBクリーム」は、色や質感の肌馴染み、べたつきのない質感を出すため数十回の改良を行ったといいます。また商品にはメイクに詳しい女性から見ても自然な雰囲気に仕上がるか、といった視点も盛り込んだそうです。

そのほかにも、パッケージでは遊び心や軽快な雰囲気を出すため、メンズメイクには珍しいポップな色使いを採用。プロモーションではエンタメ系やダンス動画を投稿するインフルエンサー3名を起用し、PR動画をSNSで配信するとともに店頭でも流したそうです。「楽しい雰囲気を出せる方を選ばせていただいた。ファンの方からは『メイク珍しい』『かっこ良すぎます!』など好意的なコメントをもらっている」と大木氏はいいます。

現役大学生とイベントを共創した資生堂「サイドキック」

20230213_5出典:株式会社資生堂 プレスリリース

大手メーカーも続々とZ世代向けのブランドを立ち上げています。資生堂は20226月にアジアのZ世代男性をターゲットに、スキンケアブランド「サイドキック(SIDEKICK)」をローンチ。なかでも、男性用化粧品市場が活性化する中国市場に注力し、同年7月から中国での販売も始めました。

クレンジング5種、ローション、モイスチャライザー、シートマスク各1種に加え、20232月にはモイスチャライザー2種を追加発売しています。

国内では早稲田大学公認の学生コミュニティ「早稲田大学広告研究会」に所属する現役大学生とのブランドコミュニケーション企画「SIDEKICK Let's be Awesomeプロジェクト」を発足。ターゲットであるZ世代が考案したブランドコミュニケーションにより同世代の興味を喚起し、ブランドへの理解を図るもので、20221227日、28日には東京・原宿の「資生堂ビューティ・スクエア」でイベント「SIDEKICKゲームセンター」を開催しました。イベント会場となった店内はゲームセンターをイメージし、UFOキャッチャーやダーツ、ジェンガなど、さまざまなビューティ提案が組み込まれたゲームコンテンツを配置して、来場者が回遊することで、製品の体験をエンタメ感覚で楽しめる設計としていました。 

デジタルコンテンツでハウツーを解説する花王「アンリクス」

sub7出典:花王株式会社 プレスリリース

花王は202212月にメンズコスメブランド「アンリクス(UNLICS)」をローンチ。美を追求するZ世代男子を応援する化粧品ブランドというコンセプトで、男性ならではの肌の特徴や肌悩みに合わせて設計したアイテムを展開しています。肌に潤いを与える化粧水「アクアハグウォーター」と5種の美容液「セラム me」、肌に色や質感を加える4色のベースメイク「インプレスカラーウェア」のほか、20232月にはスクラブ洗顔ジェル「メルティクラッシュウォッシュ」を発売しました。

20230213_82023年2月発売のスクラブ洗顔ジェル「メルティクラッシュウォッシュ」
出典:花王株式会社 プレスリリース

アンリクスは美容意識が高い3人のインフルエンサーをブランドパートナーに、商品開発からコミュニケーション戦略までを共創。またデジタルコンテンツとして「UNLICS BEAUTY DIG-TIONARY」を開設しています。サイトでは20種のルックからなりたい自分を探すことができ、そのルックのつくり方が詳しく分かるレシピのようなコンテンツで、使用商品やテクニックを学ぶことができます。またオンラインでも購入しやすいよう、メイクルックを自分の顔上で試すことができるバーチャルテスターを用意しています。

Text:臼井杏奈
Top image:Kamila Bay via Shutterstock

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