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熱量の高さと継続的な認知拡大を兼ね備えるSNSプロモーションとは

熱量の高さと継続的な認知拡大を兼ね備えるSNSプロモーションとは サムネイル画像

2023年11月7日に開催された@cosme for BUSINESS主催のウェビナー「美容関心層の“イマ”を知り、設計する 『SNS×@cosme』プロモーション連動の重要性」では、SNS美容メディアMimiTVを運営するトレンダーズ株式会社 MimiTV Div. 事業責任者の中谷友里氏と、株式会社アイスタイル ブランド体験ユニット 副ユニット長 田中大介が登壇。ブランドが各プラットフォームにおいて、商品認知・話題醸成を行う際のヒントや、長く愛されるブランド・商品になるために必要な施策設計の考え方、そして、MimiTVのSNS「フロー型」と@cosmeの「ストック型」の期待できる効果の違いと役割について話しました。

MimiTVと@cosmeの違いを活かすマーケティング支援

20231129_9出典:@cosme 

冒頭、アイスタイルの田中は「MimiTVと@cosmeは競合なのでは?と聞かれるが、@cosmeというメディア・店舗・ECを運営するプラットフォームと、SNS上でメディアを持つMimiTVでは異なる属性、マーケティング支援の在り方があり、それはどちらか二社択一という話ではない。いわば“A or B”ではなく“A & B”。どちらか1つだけでは補完出来ない要素があり、掛け合わせることでより効果的なマーケティング施策が可能になることを今日は伝えたい」として、今回のウェビナーの大テーマを提示しました。

@cosmeはメディアの月間ユニークユーザーは1万9,000人、国内・海外合計40店舗を展開、ECでの取扱商品数は約4万7,000点にのぼります。一方、MimiTVは、X(旧Twitter)やInstagramTikTokなど主要SNSプラットフォームにおいて、総フォロワー数576万人を擁します。

20231129_4出典:MimiTV 

現在、生活者の暮らしの一部として日常に溶け込んでいるSNSやクチコミ。

@cosmeのユーザーもMimiTVを利用するなど、どちらもみている人は多いとされます。また、それぞれのユーザーには共通項もあり、それは「ほかの人のリアルな感想や評価を知りたい、また、商品そのものの使用感や色味などを、他者の投稿を通じて“擬似体験”したいという2つの欲求がある点だ」と田中は指摘します。

中谷氏もそれに賛同しつつ、加えて「MimiTVには純粋に美容が好きな“美容オタク”の方々が集まっている。(SNSをするのは)同じ美容好きのほかの人の投稿からブランドや製品に対するみんなの本音の評判を確認するためというのはもちろん、ユーザー同士のコミュニケーションがとりたいとか、自分の情報が誰かの役に立つのがうれしいというポジティブなモチベーションで能動的に投稿している」と説明します。そして、MimiTVではクチコミをもとにコンテンツを制作することも多く、「美容オタクの方々は人気商品が生まれる鍵を握っている」と話します。

20231129_6@cosmeとMimiTVについて

リップ製品では美容オタク層からミーハーとマスへの拡散を導く

では、MimiTVでは具体的にどのようなプロモーションや施策でブランドのマーケティングを支援しているのでしょうか。今回のウェビナーではまず、あるリップ製品における新商品プロモーション事例を取り上げました。

MimiTVでは、2022年2月の同リップ製品の情報解禁と同時にギフティング施策を行い、美容オタク層からの注目を集めて発話量を同年4月4日の発売に向けて一気に高め、発売時点でSNSでの評判形成を固めました。その後も定期的に発話を醸成し定着を図るとともに、一部のコアユーザーだけではない層へも認知を拡げる施策を継続することで、トレンド層以外にまで好感認知の獲得に成功しました。

中谷氏は、一連の施策の前提として、MimiTVでは美容感度により生活者を大きく3つにわけた、MimiTV独自のプロモーションターゲット分解をしていると明かします。すなわち、美容モチベーションが高く、“早く知りたい、早く試したい”と能動的に美容情報を収集&発信する「美容オタク」(15歳~34歳の女性の約15%)。“トレンドを取り入れたい”気持ちが強く美容のトレンドに乗り遅れたくない「美容ミーハー」(同 約30%)。そして、日常的にメイクは行うがこだわりは弱く、“失敗したくない”と思い人気品・定番品を利用している「同 美容マス」(約50%)の3タイプです。あわせて、特定の個人像を想定するペルソナ型ターゲットよりも、SNS施策の最適化がしやすくなるのがこの3パターンのターゲット設定の特徴とします。

20231107_MimiTV独自のプロモーションターゲット分解

施策概要として、最初に美容オタク層をターゲットに、Xでモニターを募集するギフティング施策を通して大量の発話を生み、まもなく登場する新商品の前評判の拡散が大きく進み、コアユーザーの期待を高めました。続いて、やはりX上で一つの広告に複数の口コミ画像を広告で拡散する施策を行い、ターゲットの範囲を美容ミーハーまで拡大し商品の評判を広く浸透・定着。そして、次の段階では美容マス層へのリーチを狙い、第三者の美容メディアによるTikTokInstagramのショート動画施策で露出を広げました。

中谷氏はこの段階的な施策について「初動で美容オタク層をグリップしつつ、一過性にならないよう定期的に発話を醸成することで、好きになってもらうための施策を心がけた。繰り返しやることはとても大事。続けていくことで、ユーザーが製品をあっちでもこっちでもみたという状況を作る」と説明します。

一方、田中は、SNSの発話量の推移を示すグラフを提示し、垂直的な立ち上げから断続的な施策の継続を1年以上のスパンで続けた結果、最初に瞬間風速的な大きな山ができ、その後もポイントポイントで小さな山が現れる同グラフの波形は、@cosmeのデータからの波形とも重なると指摘します。

SNSの発話量に、@cosmeへのアクセス、クチコミの投稿に関する同期間の推移を重ねると、SNSの発話と連動して@cosmeのなかでもクチコミ醸成が確認できる。また、商品発売のタイミングで、副次的な効果の一つとして商品ページへのアクセスが集中。クチコミの中身を見に来たユーザーが多くいたことが推察される」と田中は解説し、SNSと@cosmeには一定の相関性があるとします。

シートマスクプロモーションにみるブランドとユーザーの接点の作り方

次に2つめの事例として、あるシートマスクの新商品プロモーションでの施策が共有されました。中谷氏は同商品について「成分やシートの形に特徴があるマスクで、美容関心層の間での事前の期待が大きかった」と話します。

20231129_3トレンダーズ株式会社 MimiTV Div. 事業責任者 中谷友里氏

2022年12月中旬に発売後、ブランドが露出を高めたいタイミングでの依頼にもとづき、2023年1月末〜3月にかけて、MimiTVではオンライン体験会やギフティング、X広告配信施策を実施したと中谷氏は話します。MimiTV主催のオンライン体験会は、美容オタク層に向けて商品理解の促進と熱量のアップを図ることを目的に、ブランドの担当者が登壇して商品の特徴や使用法を説明するウェビナー形式で行われます。イベントに先駆け、参加者を募る告知にあわせて人数限定でモニターを募集したため、実際に商品を手にしながら視聴できる参加ユーザーもいるといいます。

「一方で、オンライン体験会には商品が手元にない人もかなりの数で参加してくれている。モニターに当たらなくてもウェビナーだけでもいいから聞きたいという人は多い。(効果を引き出す)正しい使い方が知りたいし、話を聞いて良いと思えば自分で買って試してくれる。加えていわゆる美容オタクの方々は、ブランドだからこそ知っている背景や裏話にすごく興味をもち、拡散の意欲も高い」(中谷氏)

そして中谷氏は「ブランドの担当者のなかには自分の話でユーザーが満足してくれるのか心配という方もいるが、製品に愛情があるブランドの思いはユーザーに必ず伝わる。ブランドのことをどんどん伝えていく、何度でも伝えていく、それがユーザーの熱量を促す」として、オンライン体験会などを通じてブランドがどこまで率直に開示できるか、熱意を持って取り組んでいけるかが大切だと話します。

他方、@cosmeは、同シートマスクのプロモーションに関しては、発売時に@cosme上で記事型のプロモーションを掲載し話題醸成と体験機会を創出。翌月には@cosme TOKYOの店舗内で売り場を強化し、オフラインでも新商品の体験機会を設けました。続いて、参加者全員が商品を手元に持って参加する方式のオンライン体験会を開催。ブランドからユーザーへ直接商品の魅力や使い方を伝え、さらなる商品理解につなげた後、それらを通して得た熱量の高いクチコミを活用した記事型のプロモーションを再度実施。継続的な情報露出と評判形成により、人気商品への育成しました。

「MimiTV+@cosmeでそれぞれ施策を実施することで、断続的なSNSの発話と@cosmeにおける反響が大きくなり、店頭およびECにおいても購買点数が時系列とともに増えた。発売から9カ月という時間軸を経て、反響と売上のどちらも拡大できた。また、@cosmeの店頭とECでの購入者の属性は、約半数が20代後半から30代前半で、ブランドが届けたいユーザーに手に取っていただけたと思う」(田中)

ストック型とフロー型の掛け合わせで長期的な相乗効果

上記2つのブランド支援プロモーション事例から、得意分野の異なるMimiTVと@cosmeを掛け合わせることで相乗効果を生み出すマーケティングが可能であると田中は話します。

20231129_2株式会社アイスタイル ブランド体験ユニット 副ユニット長 田中大介

「メディア・店舗・ECを持つ@cosmeはストック型で、美容オタクの方々からマス層まで幅広くカバーし、長期的な話題化と商品育成、ユーザーのファン化が期待できる。SNSプラットフォームで展開するMimiTVはフロー型だ。美容オタクの方々にアプローチする早期の話題醸成に長けていて、そこからより広い層に拡散させ話題感を作り、認知を拡大させることが得意だ。それぞれの役割が違うからユーザーは両方を行き来してくれる」

また田中は、@cosmeのクチコミにおけるSNS関連ワードの出現率は上昇傾向にあり、なかでも「インスタグラマーが絶賛していたから」「いろいろな美容YouTubeで紹介されていたから」「SNSでよく見かけたから」など、SNSをきっかけに商品を知って購入したという@cosmeのクチコミの投稿は2018年以降拡大し、もはや定着しているとします。そして「SNSをきっかけに商品を認知して、@cosmeで実際のクチコミと商品を確認する動きが定着してきている」と結論づけます。

参加者から質問:スキンケアアイテムでの攻め方やバズを生むための方法は?

今回のウェビナーでは、事前アンケートで登壇者に聞きたいことを視聴者から募集するとともに、セッションの最中にもさまざまな質問がチャットで寄せられました。

Q1:メイクアップアイテムではなく、スキンケアアイテムでの攻め方を知りたい

SNSというと“映え”のイメージからメイクアイテムの投稿が多いように思われがちながら、「MimiTVとプロモーションをご一緒するブランドの投稿の6割〜7割はスキンケア関連だ」と中谷氏は明かします。

「一般的にメイク製品より価格が高いこと、また、ある程度の期間使い続けることを想定するため、スキンケア製品は購入ハードルが高い。逆にいえば、だからこそさまざまなSNSをまたいで投稿やクチコミを見て丁寧に調べる。こうしたユーザーに向けて企業側は積極的に情報を流すべきだ。オンライン体験会など、ブランドや製品の良さや魅力を知ってもらう機会をつくれば、ユーザーの気持ちをつかむきっかけになる」(中谷氏)

さらに中谷氏は、新商品でなくとも話題の醸成や認知の拡大は十分に可能だといいます。「世の中にたくさんの化粧品がある今、昔からあるブランドの製品でも、意外に知らない人はたくさんいる。良いモノだから長く続いているわけで、以前やったプロモーションをもう一度やるのもありだし、新規ブランド同様にリニューアルや新ラインの発表に合わせて設計することもできる」(中谷氏)

「(老舗ブランドの場合)人々の持つイメージが固定しているケースもあるだろう。実はこんなこともしているブランドだとか、本当はこんな商品であるなどをどんどん発信していくのも効果的だと思う。MimiTVに集う美容オタクの方々は、世の中であまり知られていない魅力的な製品を見つけ出し、自分たちの力で知らしめたい、ヒットさせたいというモチベーションを持つ方が多い。ブランドありき、製品ありきで動き、自分が好きと思う気持ちを熱量高く拡散してくれる」(中谷氏)

Q2 広告感なく意図的にバズらせるには?

2023年10月1日から景品表示法の禁止行為にステルスマーケティング(ステマ)が指定される法改正がありました。SNSやインフルエンサーを活用したマーケティングにより一層注意を払う必要が出てきたといえるでしょう。

田中は「これまでは“PR”や“広告”という表示があると見ないとか、嫌だと思うネットユーザーもいたが、これからは、広告として認識して見るのが当たり前になるので、当然プロモーションのあり方も変化するだろう。広告に見えないというアプローチではなく、正しい情報をどう伝えていくかという方向性に意識を変えていくべきではないか」と見解を示します。

中谷氏も、PR表示をつけるのが当然になればユーザーの意識も変わるとし、また、(規制により)グレーゾーンの情報発信が一掃されれば、よりクリアな情報をユーザーのもとに届けやすくなると話します。また、今後は規制をきちんと守っているブランドが愛されることになるとしたうえで、広告風にみえるコンテンツかどうかということよりも「どのタイミングを狙って何を仕掛けていくかという戦略をきちんと設計することで、いわゆるバズのような瞬間最大風速的な盛り上がりを作るのは十分可能」と話しました。

Text: そごうあやこ

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