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杉野服飾大学で美容業界DX講座を開講、@cosme TOKYOからライブ中継も

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20216月、アイスタイルが運営する美容業界のイノベーションを紹介するWebメディア、BeautyTech.jp編集部が、杉野服飾大学のファッションビジネス・流通イノベーションコース「ファッションテック論」を受講する学生を対象にしたオンライン講義を受け持ちました。当日は@cosme TOKYOともライブで結び、美容業界で進むDXについて紹介しました。あわせて、ワークショップでは学生自身が考える未来の購買体験が発表されました。

学生がビジネスの現場で現在進行中のDXを実感

杉野服飾大学 ファッションビジネス・流通イノベーションコース主任を務める五月女由紀子教授は、毎年「ファッションテック論」を開講しています。ファッションテック関連企業のCEOらを外部講師として招き、実際のビジネスの現場でどのようにデジタライゼーションが進んでいるのかを、学生が知る機会を設けるためです。

 BeautyTech.jp編集部も、ファッションに隣接するビューティテックの現在地を紹介する目的で70分の講義を担当。「化粧品業界のOMO」をテーマに、副編集長の十河亜矢子、アイスタイルグループ Dot&Spaceでマーケティング企画を担当する福岡さくらが講師を務めたのに加え、東京・原宿にある旗艦店 @cosme TOKYOのスタッフエキスパート(美容部員)一倉麻衣子とライブでつなぎ、顧客とオンラインで対話しながら商品選びのサポートをする「お買い物コンシェルジュ」を学生にも体験してもらいました。

 美容業界全体で導入が進むオンラインツールやサービス

 2020年から2021年にかけ、パンデミックにより世界的にDX(デジタルトランスフォーメーション)が一気に加速。これは、ロックダウン(都市封鎖)や外出自粛に伴い、リアル店舗に行くことが物理的にできなくなった消費者が、買い物の場をオンラインに移行したためです。美容業界でも、ECサイトを充実させる、非接触でコミュニケーションがとれる新しいオンラインツールやサービスを導入するなど、企業・ブランド側は迅速な対応を図りました。

 講義ではまず第一部として、十河が実際にどのようなツールやサービスが登場したのかをグローバルな事例とともに紹介しました。 

  • ARバーチャルトライオン
    オンラインショップやブランド公式アプリに実装するほか、店頭でも従来のテスターやタッチアップに代わるお試しツールとして導入が進み、非接触の安心・安全を実現するため、ジェスチャーや音声によるコマンド、マスクをして来店する顧客がマスクを外さずにトライオンできる工夫などもみられました。

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  • AI肌診断
    スマホの自撮りや質問への回答をもとに肌状態や特徴を分析・提示するAI肌診断。診断内容や深度にはブランドによって幅があるものの、いずれも肌診断をすることそのものをショッピング体験に組み込み、診断を受ける楽しさや、診断で得た知識を購入意欲の向上に結びつけています。
  • オンライン接客・カウンセリング
    店舗での接客に代わる、オンラインによる遠隔でのカウンセリングとして、11でパーソナルな相談ができるものや、1対多で新商品の発表や商品説明が視聴できるイベント型、LINEなどを使用したライブチャットなどが活用されています。
  • ライブコマース
    TikTokライブやinstagramライブの機能拡充のほか、企業が自社ECサイト上でライブ配信できるクラウド型のプラットフォームが登場したことにより、配信されたライブ動画を視聴しながら、その場で購入にまで進めるライブコマースが活況をみせています。
  • 3Dバーチャルストア
    3Dバーチャルストアは、ブランドの世界観で統一した独自の空間づくりができるところと、いつでもどこからでも消費者が訪れられるところに利点があります。

オンライン体験会やカウンセリングなど顧客視点の接客DX

 上記のような販売の現場で実際に始まっているDXの取り組みをふまえ、第二部では、福岡が@cosme TOKYOを例にあげ、顧客体験を高める接客DXをいかにして企画・設計したかを学生に語りました。

 オンライン接客を導入するにあたっては、最初に「11」「1N(複数人)」で行うのか、「ライブ」「オンデマンド」で行うのかを整理し、8つのサービスを考案しました。

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それに先立ち、サービスの企画において大切にしたポイントが2つあると福岡はいいます。1つは「顧客体験」で、「どのような状況のお客様に、どのような時に、どのような体験をしていただくか」と、あくまで顧客視点に立ったサービスを立案することです。

たとえば、Instagramや広告を見て「ブランドAのある新商品を知り、気になっている」という状況の顧客の場合、従来なら、店舗に行き商品を実際に見てサンプルをもらい、家で試して気に入ったら、買いやすいところを探して買うというショッピングジャーニーをしていました。それをこれからは、「オンライン体験会」に応募してもらい、自宅にいながら、美容部員による商品説明や使用法をライブで視聴しつつ、事前に送られてきたサンプルを試して自分に合っているとわかったら、その場で発行されるオン/オフラインを問わないクーポンを使って購入するという、より豊かな商品体験を目指しました。

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2つめのポイントは「美容部員のおすすめではなく、お客様の状況をお聞きして提案する」という、こちらも顧客の想いを基軸にしたサービス設計とすることです。

これを福岡は「接客はあなた(=お客様)が主語で、インフルエンサーの場合は、わたしが主語。これを区別する必要がある」と説明します。話題の商品を使って良いと思ったものを自分のおすすめとして紹介するインフルエンサーに対し、接客の現場では顧客が主役であり、販売スタッフの役割は、顧客の要望や悩み、置かれている状況を聞き出し、ふさわしい解決策を提案することにあるからです。

講義では実際のオンライン接客を学生に肌で感じてもらうため、@cosme TOKYOの店舗フロアにいる一倉とライブでつなぎ、「お買い物コンシェルジュ」を学生の代表1名に体験してもらい、その模様をシェアしました。

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マスクを一日中着けているせいで、頬や口の周りにニキビができやすいという学生の悩みに対し、一倉はニキビができてしまう仕組みを解説したり、普段の手入れ方法や好みのテクスチャーをたずねつつ、フロアを素早く移動して、相談者の肌状態にあった製品として拭き取り化粧水を選びました。ボトルを振るなどして、画面上でとろりとした独特の質感を見せながら、機能や効果などを説明、この化粧水をおすすめする理由を明らかにしていきます。実際にコットンに含ませて手に塗る様子も示し、力加減など塗るときのコツを含めたアドバイスを行いました。

image006講義内で行われたお買い物コンシェルジュ
のデモンストレーション

1年後の接客を予測するワークショップ 

講義の最後には第三部としてワークショップの時間を設けました。ここまでに話されたことやオンライン接客の実例に触れた経験をもとに、「1年後の2022年、@cosme TOKYOでは、どんな顧客体験が実現していると思うか」という問いを投げかけ、学生一人ひとりにフォームへの入力という形で答えてもらう方式としました。その際に、考えるヒントとして、「消費者が買い物をしたいと思うのはどんな時か」「購入を決断するために今はどのような行動をとっているか」「2022年にはその行動はどのように変化しているか」の3つのステップで想像していくことを勧めました。

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学生からはさまざまな意見が出ました。多かったのは、ネット上で欲しい化粧品や気になる服を見つけたときは、今は実際に店舗を訪れて実物をチェックしたり試着をしたりしているが、AR/VRのバーチャルトライオンの精度がさらに向上した近い将来は、どこにいてもスマートフォン上で本当に身につけているかのような現実に近い体験ができ、色味やサイズ感も含めて自分に似合うかどうかを確認してから購入できるという予測でした。

同様に、店舗スタッフが対面でしている悩み相談やおすすめの提案も、オンラインを介したコミュニケーションが主流になり、移動の手間や時間が省けるという指摘や、自分が信頼している販売スタッフの指名ができ、オンラインで独占して接客が受けられることを望む声もありました。

 また、今はバーチャルメイクアプリなどで色味を試しているヘアカラーなども、美容室のスマートミラーの前に座るだけで多くのカラーや髪型を納得できるまで試し、かつ美容師とその場で相談しながら、より満足度の高い決定ができるようになるとして、生身のコミュニケーションをデジタルが補完して深みのある体験を創るDXのあり方を提示した学生もいました。

小学生の頃からスマートフォンが身近にある学生たちには、DXは自然な流れであり、この世代が社会人となり消費や労働市場の核を担うときには、ショッピングにおいてオンとオフの境目がなくなり、いつでもどこでも店舗スタッフや商品にアクセスできる環境は当たり前のこととして整備されるであろうことを、改めて確認した講義となりました。

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