言葉ではなく体感させる。韓国コスメが支持される理由|連載:@cosme編集長の「いつもなにかを考えている」Vol.14
@cosme編集長・篠田による定期連載。ユーザーの姿を通して気づいたこと、そしてちょっと先の未来のことなどについて独自の目線で語ります。Vol.14のテーマは近年のトレンドをリードする「韓国コスメ」について。
世界観で注目
4月28日から@cosme TOKYOと@cosme SHOPPINGにて、韓国のコスメブランド「hince」の取り扱いがスタート。コロナ禍にも関わらず多くのお客様にお越しいただき、hinceの人気を実感しました。
hinceは、アイシャドウやチーク、リップ、ネイルに至るまで洗練されたトーンのカラーアイテムが充実していて、日本に上陸する前から大人気のブランド。最近ではベースメイクも加わり、その仕上がりの良さで@cosmeユーザーからも注目されています。
hinceが掲げるコンセプトは「Mood-Narrative」。コンセプト通りhinceのアイテムはどれも直接的ではないけれど、"ムード"を感じさせる設計になっているような気がします。使ったり見たりしたひとそれぞれが「感じたこと」がhinceです、というような。
成分で注目
hinceに代表されるように、韓国コスメは@cosmeで注目度の高いジャンル。メイクアップアイテムの人気はもちろんですが、マスク生活が長引いたことによって、2020年からは韓国のスキンケアブランドの人気もぐんと高まっています。
韓国のスキンケアブランドの謎を紐解いてみると、成分の話にたどり着きます。ツボクサエキス由来のシカを配合した「VT COSMETICS」のシカデイリースージングマスクは@cosmeでも常に上位の人気。美容業界では数年前から注目されていたシカが、@cosmeユーザーにも定着してきたことを実感しています。
韓国のスキンケアブランドがめきめきと人気を博してきた理由は、成分をアピールし、どういう効果が期待できるのかをわかりやすく伝えている点にあります。素肌そのものを美しくしたい、という欲求の高まりによって、成分に着目してアイテムを選ぶ人も増えてきていて、その結果韓国のスキンケアにたどり着くというのは容易に想像できます。
言葉ではなく体感させる
そして、韓国コスメの人気を後押ししているのは、サステナブルやジェンダーニュートラルなど社会的に良いことを当然にしているブランドが多くあること。
「BEIGIC」は、どのアイテムにもグリーンコーヒービーン由来の成分を配合したヴィーガンのスキンケアブランド。スキンケアからハンドケア、ヘアケアなどのアイテムを扱っています。動物実験を伴わないクルエルティフリーであることや、フェアトレード認証を取得したクリーンな植物性由来成分を使用するなど、サステナブルな取り組みを実践しています。
メイクアップで人気なのが「LAKA」。コンセプトにジェンダーニュートラルを掲げていて、好みやそのときの感情に合わせて自由に選択できるアイテムを提案しています。なので、わざわざ"メンズコスメ"という必要すらない。誰もが好きにメイクを楽しんでいいよね、といういまの気分を忠実に反映してくれています。
hinceもLAKAにも共通しているのが、コンセプトを言葉で説明するのではなく、体感させようとしていること。そのためにクリエイティブが存在して、ブランドがより洗練されていくことにつながっていきます。言葉ではなく、クリエイティブでメッセージを伝えるーー。スマートフォンでユーザーとコミュニケーションをとるいま、クリエイティブの重要性はとても強くなっています。
あらゆるジャンルで人気の韓国カルチャー
世の中の情報を日々摂取していると、いま、韓国のカルチャーの人気がすごいことを実感します。韓国文学、韓国映画 / ドラマ、K-Pop、美容…。
韓国文学は日本でも多くの本が出版されていて、フェミニズムのジャンルも充実。読み応えのある作品が多く、私は翻訳本が出るたびに読んでいます。韓国映画では、『パラサイト』がアカデミー賞で作品賞を受賞するレベルのクオリティ。また、音楽性の高さがなければ、評価さえないアメリカでBTSは次々と記録を塗り替えていっています。
どのジャンルにも共通していえるのは、世界観を表現力する秀逸さとクリエイティブの質が高さにあるのではないでしょうか。映画や小説だったら、ストーリーがおもしろいことと、表現力、K-Popはそもそも曲が良い、といったシンプルなことが出発点。
韓国コスメも、秀逸な世界観の表現とアイテムの実力のふたつが備わったものが人気を博しています。そして、さらに熱狂させられてしまうのは、ビハインド・ザ・シーン(舞台裏)を見せてくれること。「こういう想いで作り出しましたよ」をきめ細やかに伝えてくれる韓国カルチャーは、知れば知るほどのめり込んでいってしまうというループを生み出しているのです。
この連載に対するご意見・ご感想などぜひお聞かせください。より良い美容業界のためにみなさまと対話していけたらと思っております。
写真・文/篠田慶子
profile
篠田慶子(しのだ けいこ)
@cosme編集長。東京都生まれ。大学卒業後、ファッション誌でスタイリスト・編集者を経験。その後、フリーペーパーの編集者を経て、株式会社メディアジーンにてcafeglobe編集長、GLITTY編集長を経て、2017年10月に独立し、現職に至る。Pinterestのフォロワー数は26万人を超える。
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