2020年度ビューティトレンド総まとめ①<全体傾向編>
アイスタイルには、「日本最大のコスメ・美容の総合サイト@cosme(アットコスメ)」の膨大なデータ群を分析し、マーケティングに活用する「リサーチチーム」があります。1500万件を超える膨大なクチコミはもちろん、アクセスデータや意識調査やインタビューを通して、消費者に触れ続けているリサーチチーム。そんな彼らの知見をご紹介します。今回のテーマは、「2020年度ビューティトレンド総まとめ① <全体傾向編>」です。
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去る12月1日、アイスタイルは2020年、生活者に支持されたコスメを総括する「@cosmeベストコスメアワード2020」を発表いたしました。実際に商品を使用したメンバーから、この1年間に@cosmeに寄せられたクチコミ投稿をベースに、今、生活者が支持している商品をランキング形式で表彰するアワードです。
サービス開設当初より毎年発表しており、@cosmeならではの生活者視点に立った受賞ラインナップが、化粧品業界及び美容業界からもご注目いただいています。
受賞ラインナップから見えてくる今年のトレンドやいまの生活者の気持ちについて3回に分けてご紹介したいと思います。
第1回:全体傾向
生活者の気持ちをつかんだ3つのポイント
第2回:総合上位10商品すべてにコロナの影響
スキンケア追い風/ベースメイクはノーカラー化
第3回:2021年のビューティを占う
「自分軸」での商品選択
第1回目となる今回は「全体傾向編」ということで、今年、生活者から最も支持された商品群を俯瞰し見えてきた、【生活者のキモチをつかんだ3つのポイント】をご紹介させていただきます。
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はじめに
コロナ禍だからこそ? クチコミ130%!
2020年、@cosmeには約100万件のクチコミが投稿されました。
これは昨年の約130%にあたります。コロナ禍において大変厳しい局面を迎える化粧品市場ではありますが、@cosmeに関していえば、例年以上に盛り上がった1おうち時間や隙間時間を活用してクチコミ投稿をする人が増えたとなりました。
その背景には新型コロナウイルスの感染拡大が大きく影響していると考えられます。外出自粛やテレワーク等によって生まれたおうち時間や隙間時間を活用してクチコミ投稿をする人が増えたこと、さらには、皆が店舗に買いに行けない、EC購入で失敗したくない、テスターで試せない状況にある中で「購入するにあたって必要な情報を届けたい」という生活者同士の「助け合い」的な気持ちからクチコミ投稿が促進されたのではないかと考えています。
この100万件近いクチコミに加え、どのくらい注目された商品なのか等を加味し、発表しているのが@cosmeベストコスメアワード2020です。
1.安心感と新しさのいいとこどり!ロングセラー×リニューアル
生活者のキモチをつかんだ3つのポイントの1つに、今年は受賞商品に「リニューアル商品」が多かったという特徴がみられました。
これまで@cosmeでは、リーマンショックや東日本大震災など、経済が不安定な時期は、長年、生活者から支持されているロングセラー商品が選ばれる傾向がありました。クチコミやユーザーインタビューなどから「失敗したくない」「安心感がほしい」といった理由が挙げられています。
今年も、新型コロナウイルスという不安定な状況の中、受賞商品におけるロングセラー商品の比率があがっているのではないかという仮説を立て調べてみたのですが、実は減少傾向にあることが分かりました。
もう少し調べてみると、「ロングセラー商品」は減少したものの、新たな傾向として「リニューアル商品」が増加傾向にありました。
そこには、安心感を求めつつも、「閉塞感のある毎日から何かを変えたい」という変化を求める生活者の気持ちが垣間見られます。
またこの流れは、化粧品だけのものではなさそうです。たとえば、2020年に社会現象にもなった「鬼滅(きめつ)の刃」でも、鬼退治という勧善懲悪的な王道ストーリーの要素と、秀でた能力に恵まれた所謂「選ばれし者」ではなく、ときに弱さもみせながらひたむきに一歩ずつ前に進んでいく、読者の共感を呼ぶ新しい主人公像などの要素を組み合わせた「定番の安心感と新しさの共存」が人気の要因の一つではないでしょうか。
具体的な商品事例をご紹介します。今年の顔総合大賞に輝いたランコムの「ジェニフィック アドバンスト N」ですが、2009年に「ジェニフィック」として発売され、2013年に「ジェニフィック アドバンスト」として最初のリニューアル。その後、2017年のベストコスメアワードにて殿堂入りを果たすなど、生活者から長きにわたり支持されてきました。そして2019年に新たに「美肌菌」に着目した形でさらなるリニューアルがなされました。
ウイルスに立ち向かうため、免疫力を高めたい、自分の持っている力を最大限に生かしたいと、例えば筋トレなどをはじめたという人も少なくなかった2020年でしたが、美容に関しても同様の考え方がみられています。
2020年11月初旬に実施した@cosmeユーザー約1万人を対象とした「化粧品に関するアンケート」(以下、ユーザーアンケート)によると回答者の半数以上が「肌の免疫力を高めたいと思うようになった」と回答しており、「美肌菌」に着目した「ジェニフィック アドバンスト N」はまさに今の生活者の気持ちとぴったりマッチした新しさを感じられたのではないかと考えています。
今の生活者が求める「ロングセラー×リニューアル」にも応えた、まさに2020年の流れを体現する商品と言えるでしょう。
ここでお伝えしたいことは、決してリニューアルしなければ人気を勝ち得ることができないということではありません。たとえロングセラーであっても、たとえ新商品であっても、【安心感と新しさ】その両者を伝えることが求められているのではないかと感じています。
2.安心を買う!高価格帯シフト
図は、過去4年間のベストコスメアワードの総合上位3商品を一覧にしたものです。最も左が2017年の上位3商品、最も右が今年の上位3商品です。
グレーに色付けしているのは、これらの商品のうち、いわいるプチプラ、セルフチャネルで販売されている比較的低価格帯商品(ここでは2000円以下と定義)です。こうしてみてみると、昨年まで上位3位のうち2~3商品がプチプラであったのに対し、今年はすべて高価格帯商品であることが分かります。これが「生活者の気持ちをつかんだ3つのポイント」の2つめ、人気商品の高価格帯シフトです。
ユーザーアンケートの結果においても、約3割が「新型コロナウイルスの感染拡大後には、いつもより高い化粧品を購入することが増えた」と回答しています。
そこにはやはり、新型コロナの感染拡大による経済不安から、失敗を避けるために「お金で安心を買う」ともいえる心理が伺えます。
また、生活が制限される中「好きなものにお金を使いたい」という気持ちもあるのではないかと考えています。食事や旅行に行けない分、大好きな化粧品に支出したい、そんな1年だったのではないでしょうか。
3.安心して買いたいから、サンプル買ってでも試したい
「生活者の気持ちをつかんだ3つのポイント」の3つ目にあげるのが、体験機会の提供です。今年投稿されたクチコミには「サンプルサイズ」というワードの出現率が5年前の2.3倍に増加しました。
シャンプーなどでは1回分のサンプルが販売されており、事前に試したうえで、現品サイズを購入するという流れもごく一般的になっていますが、スキンケアアイテムなどでは、まだまだそう言った事例も少なく、「失敗したくないので、メルカリでサンプルを購入する」といった声も聞かれていました。
特に今年は、店舗の臨時休業、店舗再開後も気軽にテスターを試せない環境であったため、お金を払ってでも「サンプル」を試したいという切実な思いを持つ人が多かったであろうことが想像されます。
そうした中で、総合大賞の「ランコム ジェニフィック アドバンスト N」やベスト化粧水3位「ランコム クラリフィック デュアル エッセンス ローション」は、7mlのサンプルサイズの販売を開始しました。そのほか、受賞商品のいくつかでもサンプルサイズやトライアルサイズの販売という同様の動きがみられています。このような施策があったからこそ、高価格帯の商品にもトライできたのではないでしょうか。
この現品購入前にサンプルサイズで商品を体験したいという気持ちは、クチコミを読む行為にも通ずるものがあると感じています。クチコミを読むことで、まるで商品を使ったような感覚を味わえる。この疑似体験こそがクチコミの最大の価値のひとつであると考えています。
特にSNSでの投稿は一般的にポジティブな感想が書かれやすいのに対し、@cosmeのクチコミは、匿名であることや人との繋がりが薄いという性質上、商品のポジティブな面、ネガティブ面双方の率直な感想が投稿されやすい環境にあります。だからこそ生活者にとっての「購入疑似体験の場」となり得るのだと確信しています。
ECでの購入もますます増えることが予測される中、サンプルやクチコミといった購入前の体験機会提供は、今後も、商品が生活者に広く支持されるためのカギを握る取り組みとなるのではないでしょうか。