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LVMHやエスティ ローダー、サステナブルな容器や包装を推進するグローバル大手

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カーボンニュートラルやSDGsの達成目標を、2025年など年次を示して掲げる大手化粧品メーカーでは、その実現のために次々と具体的な施策を打ち出しています。化粧品商材のボトル容器や包装パッケージにサステナブルな素材を使用して環境負荷の軽減につなげる試みもその1つ。グローバルブランドが推進する施策を紹介します。

使用済みの製品を使い捨てる文化は、環境に確実な悪影響を及ぼしており、製造者も消費者も多くの人々がそのことを理解し、地球規模での環境保全が叫ばれています。にもかかわらず、「Circularity Gap Report 2022」によれば、過去数年で事態はむしろ悪化しており、グローバルでのリサイクル率は2018年の9.1%から、現在では8.6%に低下しているといいます。この現状を念頭に、大手化粧品メーカーおよびブランドでは、容器や包装を4RReduce・減らすReplace・置き換えるReuse・再利用Recycle・リサイクル)可能なものに転換する動きが目立っています

プラスチックを脱炭素素材に置き換えるLVMH

LVMHは、非食品バイオマスに含まれる炭素を回収する技術などを開発するオリジン・マテリアルズと契約を結んでおり、LVMHグループの化粧品と香水ブランドの包装を、カーボンマイナスPET(ポリエチレンテレフタレート)を使用した新しいエコパッケージに順次切り替えていくとします。

オリジン・マテリアルズが提供する素材は、石油由来のPETを脱却し、持続可能な木材残留物をカーボンネガティブ(温室効果ガスの排出量より吸収量が多い状態)材料に変換して作られています。LVMHは従来のプラスチックをこの脱炭素素材に置き換えていくことで、CO2排出量を劇的に削減できるとして、ディオールやジバンシイ、ゲランなどのブランドで採用していく予定です。

LVMH Beautyの取締役社長兼マネージングディレクターのクロード・マルティネス(Claude Martinez)氏は、「我々はLife 360プログラムにもとづき、近い将来、すべてのパッケージで化石資源由来のプラスチックを一切使用しないことを決定した」と宣言しています。

PCR素材の50%増加を目指すエスティ ローダー

エスティ ローダー カンパニーズ(ELC)は、2025年までにパッケージの75%100%において4Rを実現するという目標に向けて、PCR(ポストコンシューマーリサイクル)素材の量を最大50%増加するとしています。あわせて、可能な限り責任ある紙製品の調達を行い、2025年までに森林由来繊維製カートンをすべてFSC認証とすることを目指します。また、2021年、ELCは素材企業イーストマンと提携。同社が持つ分子リサイクル技術や、(最大100%リサイクル素材を含む)Renew樹脂をELC傘下のブランドで採用していくことも発表しました。

同じく2021年には、クリニークが、フランスのモールディング(成型)専門会社のRoctoolおよびパッケージ会社Pinard Beauty Packと提携し、容器の製造時の廃棄物の量を1015%削減可能なパッケージの制作に着手しました。一方、ヘアケアブランドのアヴェダはXelaPackと提携し、紙ベースで作られたリサイクル可能なパウチ型パッケージを開発すると発表2022年中に地域限定で発売を開始する計画です。

20220616_2出典:Beauty Packaging

 4Rにもとづきパッケージの最適化を進めるバイヤスドルフ

ドイツを拠点とするバイヤスドルフは、4Rというサステナビリティの4原則に従いプラスチックパッケージの最適化の推進と、完全に機能する循環型経済の確立に向けて集中的に取り組んでいます。その実現のために、2025年をめどに、2019年比で石油系バージンプラスチックの使用量を50%削減すること、プラスチック製パッケージに30%以上の再生材料を組み込むこと、すべてのパッケージを詰め替え可能、再利用可能、リサイクル可能にすることなど、具体的な目標を掲げています。

実際の製品としては、ニベアの「ナチュラリーグッドボディローション」の容器では、従来品よりプラスチックの使用量を50%削減し、100%リサイクル可能なものにしました。また、「Nivea EcoDeo」には、トイレタリー分野では世界初となる、PCRアルミニウムを100%使用したアルミ缶容器を採用。あわせて、空気から抽出した窒素を噴射(スプレー)剤とするエコバルブ技術を用いて温室効果ガスを削減すると同時に、これまでより2倍長持ちする製品設計により包装廃棄物の削減にも貢献するとしています。

20220616_3出典:Personal Care Insights

プラスチック包装材の最適化を図るユニリーバ

日用消費財大手のユニリーバは、2025年までに「プラスチック包装材の使用量を10万トン以上削減」「バージンプラスチックの使用を半減」「販売数以上のプラスチック包装材の回収と処理の支援」「プラスチック包装材の完全再利用可能化」、そして「包装材のPCRプラスチックの使用率を最低でも25%まで増やすこと」などを目指し、世界規模で取り組みを進めています。

ユニリーバはまた、TRESemmeやLynxなどの製品において、リサイクル工場のスキャナーで検知可能な黒色顔料を容器に使用し、分別がよりスムーズで確実になるようにしたパイオニアでもあります。これにより、毎年約2,500トンのペットボトルを分別しリサイクルに回すことができるようになりました。

現在、Simpleブランド製品の大部分が完全生分解性で、バナナやメロンなど果物の皮よりも早い約6週間で堆肥にと分解されるといいます。また、Simpleのスキンケアシリーズのボトルも100%PCRプラスチック製で、洗顔料のリニューアルに伴い、チューブのパッケージのプラスチック含有量を最大25%削減し、リサイクル可能なデザインに変更しました。

20220616_4出典:Simple公式サイト

ラグジュアリー化粧品ブランドの高価格帯商品での試み

高価格帯の化粧品では、ガラスなど重厚感のある素材や、黒やゴールドなどの色や光沢で高級感を演出した容器が多くみられます。これには、ブランドのイメージや品質に即したデザインとすることで、消費者に対し価格に見合った処方の効果や高い品質を印象づける狙いがあります。高級化粧品を購入する層は、見ためを含めた製品全体としてのクオリティを求めているため、環境に配慮したパッケージであることが、必ずしも購入動機につながるとは限りません。そこでラグジュアリー企業では、ブランドイメージに合致したサステナブルな容器を開発することで、顧客の期待に添いながら環境に配慮した製品づくりを進めています。

ジバンシイ

高級化粧品に多く採用されるガラス容器は、その重さから輸送時にCO2をより多く排出するとされます。そのため、ガラスを薄くしたり、サイズを小さくして軽量化したり、PCRガラスを配合するなど、環境負荷を低減する技術が登場しています。LVMHグループのジバンシイも、「ソワン ノワール クレーム」において、ガラス容器の軽量化を図ったブランドのひとつです。

同製品の容器は、重さを従来品の44%減、ボリュームを59%減、また、環境インパクトの60%減を実現し、あわせて、従来からあるリフィル製品を再考しました。

20220616_5ソワン ノワール クレーム 
出典:ジバンシイ 公式サイト

リフィルのオプションをつける場合、ガラス容器を軽量化しても、リフィル容器の重さが加算されることを考えて容器をデザインする必要があります。また、リフィルが余剰在庫とならないように、消費期限前に完売するよう製造計画を立てなければなりません。ソワン ノワール クレームでは購入者の30%がリフィルを買って外側の容器を使い続けると想定したシミュレーションにもとづき、リフィルを開発したといいます。

2022年5月31日〜6月1日に仏パリで開催された持続可能なプレミアムパッケージに特化したBtoB展示会「Edition Spéciale by Luxe Pack」のパネルディスカッションで、ジバンシイとともに容器を含むエコデザイン設計に携わったパートナー企業の担当者は、単純にプラスチックの使用量を減らしたり、リサイクル性を高めることを考えるのではなく、現時点でのブランドの環境インパクトを把握し、段階的にどのように改善していくかを熟考することが大切であると語りました。一般的にリフィル=エコとのイメージがありますが、リフィルを促進するならば、環境インパクトが良くなる適切な設計が必須であり、最適なビジネスモデルを見出すまでに、さまざまな試行錯誤を繰り返したことを明かしました

ランコム

ロレアル傘下のランコム「アプソリュ」のクリームは、キャップも含めゴールドカラーのガラス容器を採用しています。同じくEdition Spéciale by Luxe Pack のパネルディスカッションに登壇したランコム テクニカル パッケージの担当者によると、持続可能な開発におけるロレアルのプライオリティは、重さの削減、リサイクル、リフィルの3つであり、同製品の容器もこの3つのポイントで改善しているといいます。

20220616_6アプソリュ ソフトクリーム
出典:ランコム公式サイト

商品の開発当初は160gだった容器を120gにまですることを目指した軽量化は現在も進行中で、また、PCRガラスの含有量も10%から25%に高めました。さらに、容器表面の金属処理を加工してリサイクルしやすい仕様にしているとします。

あわせてランコムでは、リフィルが本体よりも安価であることはリピートを促す動機のひとつではあるが、消費者が環境インパクトを意識し、廃棄を少なくするためにリフィルを購入するように、企業が適切な方法で継続的に伝えていく必要性を訴え、ブランドイメージを保ちつつ、リフィルの価値を高めていきたいとしています。 

Top image: JasminkaM via Shutterstock

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