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受賞アイテムから読み解く”今”のユーザーの気持ち|@cosme上半期新作ベストコスメレポート2022

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アイスタイルには、「日本最大のコスメ・美容の総合サイト@cosme(アットコスメ)」の膨大なデータ群を分析し、マーケティングに活用する「リサーチチーム」があります。1,800万件を超える膨大なクチコミはもちろん、アクセスデータや意識調査やインタビューを通して、消費者に触れ続けているリサーチチーム。そんな彼らの知見をご紹介します。今回のテーマは「ビューティトレンド総まとめ!~2022年度上半期新作ベストコスメ版~」です!

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「上半期べスコス2022ウェビナー」
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はじめに/少しずつみられる期待感

株式会社アイスタイルはこの半年間(2021年11月1 日~2022年4月30日)に発売された新商品を対象とした中から今、生活者が支持している商品を表彰する「@cosmeベストコスメアワード2022 上半期新作べストコスメ」を発表しました。

外出機会やマスクを外す機会が増えてきたことにより、化粧品の売上も回復傾向にあると言えるでしょう。店頭に徐々に人が戻り、@cosmeのクチコミをみても「コロナ禍」や「マスク」といったワードが減少傾向にあります。また、政府からマスク着用に関する見解が示されたことにより、さらに回復が見込まれるのではないかと期待が高まっていることと思います。

しかし一方で、一斉に皆がマスクを外すという行為には至らなそうだという現実も徐々に見えてまいりました。またコロナ以外でも、世界情勢、商品やサービスの値上げラッシュなど不安な要素は尽きません。

最初に、政府のマスクに対する見解が示された3日後、2022年5月23日から実施した15~69歳までの@cosmeメンバーへのWeb調査(以下「アンケート」)の結果をご紹介したいと思います。

いまの気持ちとして、「不安」と「期待」どちらの気持ちが強いのかを調べてみたところ、依然として「不安」が「期待」を大きく上回りました。しかしながら半年前の数値からは多少改善がみられており、不安の中にも期待が少しずつ芽生え始めている、そんな生活者心理を垣間見ることができました。

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こうした気持ちを理解しながら、上半期新作べストコスメの受賞商品を改めてみていくと、なぜこれらの商品が支持されたのか共通点を見出すことができます。今回は、特に象徴的な2つのことを中心にお伝えしたいと思います。マスクを突然外せないのと同様、気持ちの変化も緩やかに起きていくものと考えています。もう過ぎた上半期のトレンドで終わらせるのではなく、今後を考えるうえでのヒントとして捉えていただけますと幸いです。

いま起きているトレンドは、きたるべき「日常生活」へ向けてのリハビリ

まず上半期新作べストコスメ総合10位の顔ぶれから見ていきましょう。昨年2021年度の上位10商品が左、今年2022年度が右になります。

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2022年の顔ぶれでまず目がいくのが、一般的にマスクによるマイナス影響が大きかったと言われている「チーク」(3位)と「口紅」(7位)が入っていることです。2021年も4位と8位に「口紅」がランクインしていたものの、いわゆるマスク移りに強いといわれる「ティント系リップ」でした。今回、上半期では久々の「リップステック」がランクインし、コロナ以前への戻りを予感させます。(※2021年12月の通年ベストコスメではケイト「リップモンスター」が総合3位を受賞)

しかし2商品の、@cosmeで最も投稿される数が多いカラーを調べてみると、以下の画像が示す通り、鮮やかな赤やピンクといった所謂カラー物として思い浮かべるものとは少し異なる傾向がみられました。

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3位のアディクション 「アディクション ザ ブラッシュ ニュアンサー」は、多彩なパールの光により透明感が出せる、ハイライトとしても使える商品であり、少しずつ戻りつつある日常にあわせて、メイクのニュアンスも変化させたい。そうした生活者の気持ちにマッチした商品として支持されています。また、7位のイヴ・サンローラン 「ルージュ ヴォリュプテ キャンディグレーズ」は、見た目の美しさ、香り、触感、カチカチと回す際の音、重量感など五感すべてが満たされるとの声が寄せられています。色を十分に楽しむのはまだ先であっても、「口紅」をつける感覚や気持ちを呼び起こさせてくれるような商品です。

上記2つの商品に共通するキーワードは【リハビリ】。そしていまの生活者の気持ちを理解するうえで、最も大事な点のひとつと考えています。

メイクを変えるのは恥ずかしい?

続いて、1つデータをご紹介します。15-69歳の@cosmeメンバーに対し、あなたが普段「メイクや髪型を変えた」ことを「友人や会社の同僚」など周囲の人から指摘された際、「うれしい」もしくは「恥ずかしい」どちらの気持ちを抱くのかを聴取したものです。

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上記の結果から大きく3つのこと言えそうです。

1.多くの人が「ヘアスタイルー・ヘアカラー」についての変化を指摘されることが「うれしい」  
2.「メイク」の変化を指摘されることは「ヘア」より「恥ずかしい」と感じる人が増える
3.「メイクが濃くなった」ことを指摘されることは「恥ずかしい」と感じる人が「うれしい」と感じる人を上回る

マスクを外す頻度が増え、チークや口紅をしたいという気持ちが少しずつ芽生えているのと同時に、急にしっかりとしたメイクをすることに対する居心地の悪さも感じているのかもしれません。

2021年、ヴィレッジヴァンガードから白マスクからグレー、黒へと徐々に黒マスクに近づけていく7枚セットのマスクが発売され話題となりましたが、メイクも徐々に色を取り戻していく、そんな日常生活に戻るリハビリ過程にあるのではないかと考えています。

sub1出典:ヴィレッジヴァンガードプレスリリース

チークやマスク以外でも、ファンデーションは美容液効果の高い薄付きの商品が選ばれていることも(総合2位ディオール「ディオールスキン フォーエヴァー フルイド グロウ」、総合4位マキアージュ「ドラマティックエッセンスリキッド」)、少しずつファンデーションに戻るための準備と言えるかもしれません。

また、手持ちのものに足して使えるものも人気の傾向がみらました。これも、今あるものを少しずつアップデートしていこうという一種のリハビリに似た心理であろうと考えています。

アンケートの結果、@cosmeメンバーの約7割が今後コロナが終息したら「化粧品を買いたい、美容にお金をかけたい」という気持ちが高まりそう」と回答しています。脱マスクが期待される中ですが外すタイミングは個々人で異なりますし、気持ちもすぐには追い付かない。はやる気持ちを抑えつつ生活者の歩みに寄り添っていくことが、メーカーやブランドに求められることなのかもしれません。

総合大賞は発売25年を迎えるロングセラーのリニューアル商品

緩やかな変化は、総合大賞からも垣間見ることができます。@cosmeベストコスメアワード2022 上半期新作べストコスメ総合大賞には、1997年の初代発売以来、定期的にリニューアルを繰り返しているロングセラー商品であるファンケル「マイルドクレンジングオイル」が輝きました。

2021年12月に発表された通年のベストコスメ総合大賞もロングセラーのリニューアル商品であるイプサ「ザ・タイムR アクア」でしたが、 特にコロナ禍以降、生活者は安心感を求め定番商品を支持する動きがみられています。そしてそのマインドは今もなお続いていると言ってもいいでしょう。

ファンケル「マイルドクレンジングオイル」には、これまでリニューアル前の商品を含めると約3万件の購入者からのクチコミが投稿されています。2021年11月にリニューアル発売された受賞商品へのクチコミは、リピーターからの投稿が5割を占めており、愛用者からの投稿が多いことが特徴のひとつと言えるでしょう。

変わらない価値を維持することの大変さ

投稿されたクチコミ本文をテキストマイニングで分析したのが以下の図です。

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黄色く囲われた項目が、リニューアル前も含めた商品の発売年月を表したものです。今回は@cosmeにクチコミのある6商品を対象としています。

図の中央に付置されているワードは、いずれの商品においても出現率の高いワードつまり、不変の価値と言える評価軸を表します。「落ちる」「優しい」「うるおう」「こすらない」「なじむ」「すっきり」。これらの変わらない点があったからこそ25年の長きに渡り支持され続けてきたと言っても過言ではないでしょう。一見、簡単な様にも思えますが、アンケートでは6割強の方が、自分が使用していた商品がリニューアルするとしたら、「好きなところが変わってしまうのではないかという不安がある」と回答しています。期待を裏切らない価値提供の難しさがうかがえる結果となりました。

変わる価値/コロナの逆境に負けない新提案

続いて、変わる価値について見ていきたいと思います。過去からの流れを追っていくと、2002年に発売された商品のクチコミには、「さっぱりとした使用感、低刺激。ニキビ肌にも良いと言った」メイク落ち以外の肌に対するクチコミが特徴的にみられていました。その後、「アイメイクやウォータープルーフなどのメイク落ち」についての言及が増えていきます。昨年2021年11月発売された新商品は、メイク落ちの話題から、再び肌効果に対する話題へシフト。特に「角栓」についての話題が特徴的にみられるようになりました。

コロナによりメイクの頻度が減少し、クレンジングの出番も少なくなっていくことが予想される中、メイク落としだけではなく、「角栓」や「毛穴ケア」用途での使用が増えており、新商品のクチコミの中で「メイクをしない日」という記述が、受賞商品ではリニューアル前商品の5倍出現しました。またユーザーアンケートでも、2割強が「メイクをしない日でもクレンジング料を使うことが増えた」と回答しており、まだまだ多数派とは言えませんが、今後の拡大が期待されます。

前述の通り、もともと肌ケアとしての評価を得ていたことがこうした提案を受け入れてもらえる礎となっていたのではないかと考えています。ユーザーと商品が持続可能な関係性を作り上げることが、いかに大事なことなのかを再認識させられます。

生活者はみている。企業の努力を

@cosmeのクチコミの中で直近増加傾向にあるワードのひとつに「企業努力」が挙げられます。同様に「応援する」というワードも増加傾向にあり、自分たちに「寄り添う、向き合ってくれている」と感じられることが評価の対象となってきている様子がうかがえました。「企業努力」を評価する声は、これまでの@cosmeにはあまり見られなかったことであり、新しい化粧品の選択方法として拡大していくのではないかと考えています。

そして今回総合大賞に選ばれた、生活者のニーズに合わせて進化し続けるファンケル「マイルド クレンジングオイル」からもそうした「企業努力」を感じ取っていると言えるでしょう。

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今後、原材料価格や物流費の高騰を受け値上げを余儀なくされる状況となる商品も増えていくことが予想されますが、そういう時期だからこそますます大切にしていかなくてはならないのではないかと感じております。

おわりに

生活者が企業努力をどのようなところから感じ取るのか、「リニューアル」はその一部に過ぎません。あたりまえの話とはなってしまいますが、生活者が何を求め、その背後にはどのような気持ちをいただいているのかの理解が必要とされるでしょう。

株式会社アイスタイルは、「@cosmeベストコスメアワード2022 上半期新作ベストコスメ」と同時に「@cosmeベストコスメアワード2022 下半期トレンド予測」を発表いたしました。ここでは、今後トレンドとなり得る芽をご紹介しています。生活者に向き合うためのヒントとなりましたら幸いです。

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「@cosmeベストコスメアワード2022 下半期トレンド予測」は@cosmeベストコスメアワードの新企画であり、@cosmeに投稿されたクチコミや@cosme STOREや@cosme TOKYOでの売り上げ等の分析、その他関連情報からみえる生活者の意識変化と美容プラットフォーマーとしての知見から、今後の生活者インサイトや美容トレンドを予測するべく発足された「@cosmeトレンド予測部」が、2022年の下半期のトレンドをキーワード化したものです。

>>詳細はプレスリリースをご参照ください

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