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上半期新作ベストコスメ総合大賞受賞、ファンケル「マイルドクレンジング オイル」リニューアルの舞台裏

上半期新作ベストコスメ総合大賞受賞、ファンケル「マイルドクレンジング オイル」リニューアルの舞台裏 サムネイル画像

アイスタイルでは先ごろ、「@cosmeベストコスメアワード2022 上半期新作ベストコスメ」を発表しました。それに伴い、2022629日、総合大賞に輝いたファンケル「マイルドクレンジング オイル」の担当者の方々をゲストに招き、ウェビナー「@cosme上半期新作ベストコスメレポート2022 」を開催。大賞受賞製品の裏側、そしてアイスタイルのリサーチプランナーが答えるトレンドについてもレポートします。

@cosmeベストコスメアワード」とは、@cosmeに寄せられたクチコミをベースに、今、生活者が支持している商品をランキング形式で表彰するアワードです。なかでも「上半期新作ベストコスメ」は、この半年間(2021111日〜2022430日)に発売された新商品を対象としており、「@cosmeベストコスメアワード」の上半期における新人賞と位置づけられます。今回は2021年にリニューアルをした新「マイルドクレンジング オイル」(ファンケル)に「上半期新作 総合大賞」が授与されました。

20220713_22022年上半期新作 総合大賞 のファンケル「マイルドクレンジング オイル」

@cosme上半期新作ベストコスメレポート2022 受賞商品とクチコミから読み解く生活者の今とこれから 〜キーワードは『リハビリ』と『企業努力』」と題したウェビナーは、三部構成で行われました。そのなかから、第一部「総合大賞受賞ブランドに聞く リピーターの心をつかみ続ける商品リニューアルとコミュニケーション」と、第三部「@cosmeリサーチプランナーへの質問セッション」の内容をピックアップして紹介します。

>>第二部「2022年上半期クチコミから読み解く生活者の今とこれから」の要約記事はこちら 

「落とす」×「守る」商品リニューアルと体験機会創出のコミュニケーション

上半期新作ベストコスメにおいて、総合大賞を含む3部門で1位となったマイルドクレンジング オイルは、ファンケルから1997年にデビューし、累計販売本数1億本以上を誇る25年のロングセラー商品です。その間、24年に1回、計6回のリニューアルを経て、進化し続けているのが最大の特徴です。

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ウェビナーに登壇した株式会社ファンケルでマーケティング部門に所属する深川氏は、同製品がユーザーから長く愛され評価を受けている理由のひとつとして「何度リニューアルしても、変えないこだわりがあるからだと考えている」と話します。すなわち、マイルドクレンジング オイルの商品設計において大切にし続けていること、「落とす」×「守る」という基本コンセプトは決してブレないというのです。「(自己再生力のある)人の肌が唯一できないのは汚れを落とすこと。だから、メイクや皮脂、毛穴の汚れはしっかり“落として”残さない。同時に、肌のバリア機能を保ち、肌本来のうるおいはしっかり“守る”」として、肌の上に混在する落とすべきものと守るべきものの双方に対処する姿勢は常に不変であると深川氏は強調します。

2021年の最新のリニューアルでも、このバリューにもとづいて大きく3つの改良がなされました。1つにはメイク&毛穴汚れの洗浄力をアップ、2つめにはバリアを守る独自成分を配合し、よりうるおいとキメのある美肌へと導く処方とし、さらに、3つめとして、「とろすべオイル」で洗顔時の肌の摩擦(こすることでの刺激)を抑え快適な使い心地としました。加えて、プロモーションにおいても「とろすべオイルで うるおい守って 毛穴つるん」というキャッチコピーで商品特性をわかりやすく訴求しています。

デジタルプロモーションを担当する大久保氏は「使ってもらえれば、違いがわかる商品なので、コロナ下においても体験機会の創出を工夫した」と話します。具体的には、積極的にサンプリングをすると同時に、事前にユーザーに商品を送付して、テレビ会議ツールを通して参加者が一緒にお試しをするオンラインイベントや、直接コメントを受け付けながらのライブショッピングを開催しました。

さらにSNSではブランド側からの発信にとどまらず、第三者からのクチコミを重視し、使用したユーザーからの感想が集まるよう、特徴的なとろりとしたテクスチャーを「とろすべ」「美容液のような」といった印象的なワードで表現し、思わずクチコミを投稿したくなる環境づくりも心がけたといいます。

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長く愛され続けるロングセラーであるためのリニューアル

ロングセラーの商品であれば、長く使い続けるユーザーが評価している“昔ながらの良さ”をキープしてあえて変わらないことを選ぶという戦略も可能です。実際、アイスタイルが@cosmeメンバーを対象に行った化粧品に関するアンケートでは、「リニューアルしたことで商品がより好きになった経験がある」人が47%いる反面、「リニューアルしたことでがっかりした経験がある」と答えた人も44%にのぼります。

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なぜ、ファンケルのマイルドクレンジング オイルはリニューアルを繰り返すのでしょうか。この質問に深川氏は「時代の流れやニーズの変化に伴い、お客様も変わってゆく。それにあわせてより良い商品を探求していく。(私たちには)もっとできるはずという思いで、時代に応じて“次”を目指す、それが私たちの考えるリニューアルだ」と答えます。深川氏が先述したように、商品設計における「こだわり」は変えることなく、時代を読み、顧客の声を聞きとり期待に応える形でアップデートしているのです。

そのため、生活者には日頃「どんな悩みがあるのかを気をつけている」ことを深川氏は明かします。大久保氏も、@cosmeにおいてどんなクチコミがあがっているかを常に注視しているとして、「InstagramなどのSNSでは、化粧品に関してわざわざ悪い点を書くことは少ない。でも、コスメ好きの方が集まる@cosmeでは、好きなところも不満なところも率直なレビューが書かれているので、とても参考になる」といいます。

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今後のファンケルのマーケティングについて、「人口減少で市場が小さくなるのは避けられないなか、長く付き合っていただけるようにブランドとお客様の接点を一層大事にし、良いものを作り続けていくことが大切だ。また、ファンケルのコアユーザーである40代〜50代はもとより、20代〜30代へのリーチも進めたい」と深川氏は話します。

また、大久保氏は「(店舗の休業など)コロナの影響もあり、ECチャネルに顧客を呼び込むことができてきた。これまでは、店舗とオンラインは分けて考えていたが、チャネルにかかわらず全体としてのアプローチを設計していく必要がある。一方で、リアルな店舗はお客様と実際に会える貴重な機会である。店舗でしかできないことも考えていきたい」と、オンライン/オフライン双方での展開を示唆しました。

リサーチプランナーがみた「成分」「韓国コスメ」「SDGsコスメ」の動向

今回のウェビナーの第三部では、アイスタイルのリサーチプランナーである原田彩子と西原羽衣子が、視聴者の方々から事前に寄せられた質問に対し、@cosmeのクチコミの分析から得た知見をもとに回答しました。以下はその抜粋です。

質問12022年上半期に話題になった成分にはどんなものがあったのか

質問では、雑誌やSNSで、たとえばセラミド、ビタミンC、レチノールなど、成分切り口の特集やまとめ記事をよく見かける印象とのことですが、特定の成分に関心がある風潮は感じられるものの、成分そのもののクチコミ件数は減少傾向にあります。そのなかでは、「レチノール」「ナイアシンアミド」「ビタミンC」というワードは伸びています。ただし、上半期はこうした美肌効果が高いとされる成分が、いわゆるプチプラと呼ばれる安価な製品に配合されているとの文脈で出てくることが例年と比較し多く、コストパフォーマンスの証明として特定成分名がピックアップされているようです。生活者は「美肌成分」という大きなくくりでは興味を持っていますが、すべての成分名が商品の購入を決める際の決め手なのかというと疑問に思います。

質問2:韓国コスメの今後について何か新しい動きはあるか

「韓国コスメ」というワード自体が伸びています。興味深いのは「韓国スキンケア」というワードが目立ってきたことです。カラーコスメに比べ、自分の肌に合うかどうかや安全性など、より慎重に商品を選ぶスキンケアのカテゴリーで、韓国製品が取り上げられるようになってきました。下半期向けて注目しているのが「アンプルスティック」です。cosmeの姉妹サイトであり、韓国最大級の化粧品クチコミサイト「GLOWPICK」の分析によると、韓国では「#スティックバーム」がネクストトレンドの兆しを見せていおり、日本でも同様の動きがみられるのではないかと期待していますこうした韓国コスメへの注目はまだまだ続くと考えられます。

質問3:環境に配慮したコスメがユーザーに受け入れられているのか知りたい

「サステナビリティ」「SDGs」というワードのクチコミ出現率は、前年と比べて1,000倍を超える伸びをみせています。これは、環境課題への取り組みやSDGsを積極的にうたう企業・ブランドが増えたからの反応ともみられます。しかし、環境に配慮する企業姿勢は、まだまだ直接の購入には結びついていないのが現状といえるでしょう。こうした企業を応援したいというポジティブな流れは感じられますが、実際のクチコミはシビアで、紙パッケージは分別しなくて済むので捨てやすいから、安いからという理由で商品を選ぶなど、自分のベネフィットを優先する方向性が強いのは明らかです。つまり、環境にやさしいだけではダメで、自分にもやさしいもの、自分にとって良いものかどうかが絶対条件としてあります。そのうえではじめて、環境配慮を企業努力として評価するのです。

生活者のなかには「自分が使い続けられるものがサステナブル(持続可能)=高額な商品は使い続けられない(持続可能じゃない)」というように、サステナブル という言葉をSDGsという文脈ではなく、自分にあてはめて使用する例も少なからずあります。より多くのお金を払ってでも環境に配慮している製品を選んで購入するという意識は、まだ一般的とはいえないと思います。

>>本記事の該当ウェビナー(アーカイブ動画)はこちら

Top image: 株式会社ファンケル

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