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Japan BeautyTech Awards 5周年を記念して、2040年を考えるワークショップやセッションが開かれたアイスタイルイベント「BeautyTech Innovation Hub 2025」

Japan BeautyTech Awards 5周年を記念して、2040年を考えるワークショップやセッションが開かれたアイスタイルイベント「BeautyTech Innovation Hub 2025」 サムネイル画像

2025年1月21日、アイスタイルでは「Japan BeautyTech Awards」5周年を記念する招待制の特別イベントとして「BeautyTech Innovation Hub 2025」を開催。いまから約15年後、2040年に社会や生活者がどう変化し、そのとき美容業界や近しい領域にいる我々はどうあるべきなのか。ワークショップやパネルディスカッションで熱く議論された内容をレポートします。

歴代の受賞者も参観した第5回Japan BeautyTech Awards授賞式

株式会社アイスタイルが主催する「Japan BeautyTech Awards」が5周年を迎えたことを記念し、第5回Japan BeautyTech Awards授賞式をはじめ、2040年の社会やイノベーションを考える参加型ワークショップや、日本のビューティ業界を代表する企業のマネジメント層が登壇したパネルディスカッションを含むプログラムの特別イベント「BeautyTech Innovation Hub 2025」が2025年1月21日に開催されました。

会場である世界中のイノベーションの結節点としてスタートアップを支援する東京都の施設Tokyo Innovation Base(TiB)には、Japan BeautyTech Awardsの歴代受賞者、審査委員、そしてイノベーションに関わる企業・スタートアップなど、100名超のゲストの方々が集まり交流を深めました。

冒頭で開会の挨拶を行った株式会社アイスタイル 代表取締役会長 CEOの吉松徹郎は、Japan BeautyTech Awardsが5回目を迎えることができたこと、そして、歴代の受賞企業・サービスが今も存続し進化を続けていることへの喜びを語り、今後もJapan BeautyTech Awardsを美容業界やビューティテックを盛り上げる“仲間”が集う機会とし、ともに成長していきたいとしました。

20250217_7-1株式会社アイスタイル 代表取締役会長 CEO 吉松徹郎

次に登壇したのは、第1回のJapan BeautyTech Awardsから審査委員長を務めているA.T.カーニー 日本法人会長、CIC Japan 会長の梅澤高明氏です。梅澤氏は、美容のほか、ファッション、ヘルスケアなどの関連領域をまたがり、「人を幸せにするイノベーション」としての可能性をもつ「商品・サービス」「技術」「活動・取り組み」を表彰するというJapan BeautyTech Awardsのコンセプトを紹介。審査する過程では多くの企業によるユニークなアイディアがたくさんあることを改めて実感し、審査委員の側にもいろいろな学びと楽しさがあると話しました。

20250217_6-1第5回 Japan BeautyTech Awards 審査委員長 梅澤高明氏

そしてステージでは、歴代Japan BeautyTech Awardsの大賞、準大賞、特別賞の受賞企業18社/プロジェクトの受賞対象商品やサービス、現在のビジネスについてスライドで紹介、あわせて、来場した各受賞企業の担当者が一言コメントで受賞当時を振り返りました。

受賞企業は、2019年第1回の大賞と2021年第2回の特別賞を受賞し「殿堂入り」を果たしたパーフェクト株式会社や、第1回の特別賞と2022年第3回の大賞を受賞した株式会社ファーメンステーションなどをはじめとして、いずれも受賞後成長を続け、ビューティやファッション、ヘルスケア業界のイノベーションをけん引する企業です。

20250217_5-1歴代Japan BeautyTech Awardsの大賞、準大賞、特別賞の受賞企業の紹介風景

続いて2024年の受賞者を表彰する「第5回Japan BeautyTech Awards授賞式」が執り行われました。2024年12月に発表された2024年度大賞、準大賞、特別賞は以下のとおりです。

■大賞 

株式会社資生堂:「彩る美容液、を新しい化粧文化へ『ファンデ美容液』」

資生堂独自の乳化技術により“美容液にファンデーションを入れる”という新発想で、スキンケアとメイクを越境する「ファンデ美容液」という新しいベースメイクカテゴリーを打ち立てた製品

準大賞 

株式会社モーンガータ :「SminkArt」

余剰コスメを、絵具・印刷インキ・樹脂・金属・文具・紙・内装塗料・建材などの色材へとアップサイクルする技術を構築。自社の廃棄せざるをえないコスメ原料をパッケージに転用するなど、ナラティブを込めたブランディングの可能性を醸成
特別賞 

株式会社comvey:「シェアバッグ®︎」

ダンボール箱などの代わりとして50〜100回以上繰り返し使用できるリユーサブル梱包バッグ。ユーザーは記載の二次元コードをスマホで読み取りリワードを選んだのち、バッグを折りたたんで郵便ポストに投函することで返却が終了

特別賞 

HONESTIES株式会社:「裏表のないスマートウェア オネスティーズ事業」

裏表も前後もない独自のデザインのユニバーサルウェアを企画・販売。着衣を苦手とする子ども、障害者、介護を要する高齢者などがストレスなく着衣・脱衣でき、サポートする親や介護者の負担も軽減

>>【関連記事】「人を幸せにするイノベーション」2024年度大賞は資生堂「ファンデ美容液」【The 5th Japan BeautyTech Awards】

審査委員長の梅澤氏から、チームを代表して大賞のトロフィーを受け取った株式会社資生堂 ブランド価値開発研究所 室長/理学博士の三浦由将氏は、この彩る美容液はファンデーションに美容液成分を入れるのではなく、美容液のなかにファンデーションを入れるという逆転の発想から生まれた製品であるとして、資生堂の長年の研究開発があってこその成果であることを述べ、今後も日本発の技術で世界の人々に幸せを届けたいと話しました。

また、梅澤氏は講評として、単なる逆転の発想にとどまらず、製品化にこぎつけ、しかも市場で大きな成功を得るクオリティを実現したところを高く評価し、アイディアの面でも、その後の研究開発やマーケティングにおいても、ホームラン級の素晴らしさを感じたとコメントしました。

20250217_11第5回Japan BeautyTech Awards受賞者
左から、株式会社comvey 代表取締役CEO 梶田伸吾氏、株式会社資生堂 ブランド価値開発研究所 室長理学博士 三浦由将氏、資生堂ジャパン株式会社 新価値創造マーケティング本部 本部長 北原規稚子氏、株式会社モーンガータ 代表取締役 田中寿典氏、HONESTIES株式会社 CEO 西出喜代彦氏

2040年のイノベーションアイディアをグループで創発するワークショップ

休憩を挟んだ後半は、「2040年『人を幸せにするサービス』を考える」をテーマに、招待者の方々6〜7人が着席している各テーブルごとにディスカッションを行う参加型ワークショップが開かれました。これは、アイスタイルと未来戦略コンサルティング会社D4DRが共同で行なっている美容イノベーション研修をぐっと縮小したミニバージョンです。D4DRが開発した、これから2040年にかけて起こりうる変革キーワードとその説明が書かれた「未来コンセプトぺディア」のカードから、とくに美容と親和性が高いと思われる未来コンセプトカード29枚を抜粋して使用します。

スクリーンショット 2025-02-17 9.13.32ワークショップのプロセス

そのコンセプトは3つのカテゴリーに分かれており、「人間拡張・サイボーグ技術」「五感の伝送技術」といった技術変革を示す青色のカード、社会や産業の変革を示す「アート産業・マーケットの拡大」「可処分時間の増大」といったオレンジ色のカード、消費者のライフスタイルや価値観の変革を示すピンク色の「マルチパーソナリティ」「多拠点生活」といったカードから、参加者は自分が気になるキーワードを各カテゴリーから1枚ずつ選び、それをもとに「人を幸せにするサービス」の具体的なビジネスアイディアを創発します。まずは一人ひとりでアイディア出しを行い、それをグループで共有してディスカッション、グループとしてのアイディアにまとめて発表するという流れです。

20250217_3-1ワークショップでの作業の様子

どのテーブルも和気あいあいとしたなかにも熱気がこもる会話が繰り広げられ、ときに笑いや拍手が起きる盛り上がりとなりました。ワークショップの最後には、祖父や祖母が作ってくれた思い出の味の料理レシピをVRで蓄積・再現可能にし若い世代に伝えていく試みと、「脳直」と称して、脳をダイレクトにつなぎ脳の状態をコントロールする伝送技術により翌日のパフォーマンスを良くするための睡眠を設計するという2つのグループの15年後の未来の暮らしのアイディアが発表されました。また、各グループがまとめたアイディアシートは後日、ワークショップの参加者全員にシェアされました。

パネルディスカッションで語られた2040年ビューティ業界とブランドのあり方とは

ワークショップの熱気がまだ残るなか、ゲスト登壇者によるパネルディスカッション「2040年以降の美容業界を共に考える」がスタートしました。

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モデレーターの梅澤氏のリードによりセッションの口火を切った株式会社ポーラ 代表取締役社長/株式会社ポーラ・オルビスホールディングス 取締役 兼務 小林琢磨氏が問いかけたのは、リアルな人間に劣らない理解力で気配りができるエージェントAIがさまざまなサービスの裏側で働く主流になるであろう2040年、AIとユーザー(人間)の関係はどうなるのかということでした。デジタルネイティブな世代にはコミュニケーションの相手がヒトでもAIでもどちらでもよく、むしろAIの方がより自分をわかってくれていると感じるならば、“ヒトにしかできないこと”も現在とは変わってくるのではないかと小林氏は提起しました。

それを受け、コーセープロビジョン株式会社 代表取締役/株式会社コーセー 執行役員 マーケティング 戦略部長 命尾泰造氏は、生体データの取得が簡単にできるようになり健康寿命が伸びて少子化の進むなか、エージェントAIが高齢者を物理的・精神的にサポートする役割を担えるであろうことを一例に、AIを賢く便利なツールと位置づけます。同時に、創造性が発揮できるのは複雑な感情や感動といった人間の心の領域と考えているとします。

一方、花王株式会社 化粧品事業部門 プレミアムブランドビジネスグループ長 池辺順子氏は、今の“幸せをつくるイノベーション”とは現時点の課題の解決を目指すものだが、今までできなかったことができる15年後には固定概念そのものがひっくり返ると予想、どうなるのか先が読めない不安と同時にワクワクする気持ちもあると話します。資生堂ジャパン株式会社 CSO/資生堂インタラクティブビューティー株式会社 共同代表取締役社長 笹間靖彦氏がAIをドラえもんやアトムのような良き友人とみるか、ターミネーターのような敵として警戒するのかという2つの視点を語り、AIと人間の関係性をさらに深掘りする方向へとディスカッションをいざないます。

20250217_2-1パネルディスカッションの登壇者
左からモデレーターの梅澤氏、株式会社ポーラ 代表取締役社長/株式会社ポーラ・オルビスホールディングス 取締役 兼務 小林琢磨氏、コーセープロビジョン株式会社 代表取締役/株式会社コーセー 執行役員 マーケティング 戦略部長 命尾泰造氏、資生堂ジャパン株式会社 CSO/資生堂インタラクティブビューティー株式会社 共同代表取締役社長 笹間靖彦氏、花王株式会社 化粧品事業部門 プレミアムブランドビジネスグループ長 池辺順子氏

さらに語られたのは、ストレスのないインターフェイスが実現しユーザーエクスペリエンス(UX)の差がなくなったとき、ブランドも製品も好きか嫌いで選ぶしかない、そんな時代にビューティブランドが果たせる役割とは何かという、未来に向けた重要なテーマでした。セッションの全編は下記から視聴できます。

>>セッションの全編視聴はこちら

あわせて今回、ステージの脇にはJapan BeautyTech Awards歴代受賞企業/プロジェクトや今回の参加企業による商品やサービスを実際に見ることができる展示スペースを設けました。ネットワーキングの時間にはそれぞれPRのためのショートスピーチやデモンストレーションを行うなど、参加者、TiBの館内からの来場者の方々との交流も活発でした。

20250217_1-1 展示スペースでの交流風景

最後に閉会の挨拶に立った株式会社アイスタイル 代表取締役社長 COO 遠藤宗は、イノベーションとはまず想像することから始まるとして、ワークショップやセッションを通して来場者の方々と未来を一緒に考える機会が持てたことを嬉しく思うと述べました。そして、企業・ブランドとユーザーをつなぐというミッションを掲げるアイスタイルが、業界のプレーヤーたちをつなげるハブにもなれることを実感し、このようなイベントをまたやりたいと話し会を締めくくりました。

20250217_8-1株式会社アイスタイル 代表取締役社長 COO 遠藤宗

Text: そごうあやこ
Top image & photo: 中山実華
Introductory Video: 河野大吾

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