2023年3月10日、「ドランク エレファント」ブランドマネージャーの大沢一友氏をゲストに迎え、@cosme BEAUTYHOOD推進室 室長の篠田慶子と対談するウェビナー「クリーンビューティーの現在地 多様化する価値観と実践すべきコミュニケーションを考える」を開催しました。エシカルな視点で化粧品に関わる消費者の変化を考察し、クリーンビューティを代表するブランドのひとつドランク エレファントが、マーケティングにおいてどのようなコミュニケーションをとっているのかが語られました。
@cosme BEAUTYHOODが考える社会課題と向き合うビューティー
2022年4月に、アイスタイルがエシカルな美容プロジェクトとしてスタートした「@cosme BEAUTYHOOD」は、エシカルな美容情報を発信するプロジェクトとして、性別・年齢・ルーツを超えた多様な人々をつなぎ、より良い社会の実現を目指しています。
今回のウェビナーでは冒頭、@cosme BEAUTYHOOD推進室 室長の篠田慶子が、世の中で広く知られる言葉になったものの、さまざまな要素が絡み合い、その意味するところが曖昧なことも多い「“クリーンビューティー”とは何か」の概念を問い直すとともに、美容を取り巻く日本における社会課題を提示しました。
クリーンビューティーとは、肌への負担が少ない成分の使用や、製造や処方の透明性が高く、動物や環境に配慮したブランドや製品を指すと一般に考えられているものの、その背景には「オーガニック」や「サステナブル」「エコロジー」といった広い範疇をカバーするキーワードがあり、エシカルな企業姿勢や、社会や環境に貢献する企業活動を実践することも、真に「クリーン」であるために求められると篠田はみています。
ただし、その目的や思想を生活者にきちんと伝えていくのは簡単なことではなく、とくに日本では、生活者は「クリーンであることは良い」というイメージはあっても、ブランドの考え方に共感して、意識的な選択肢としてクリーンビューティーを選ぶという方向にはまだなりにくいのが現状です。消費者側も声をあげている欧米とは違い、日本では企業やブランドから積極的にユーザーを啓発する段階にあるともいえそうです。そのなかで、今回のウェビナーは、ブランドはどう生活者とコミュニケーションをとっていくのが望ましいのかを、ドランク エレファントの実例を通して、ともに考えるために企画されました。
同時に、今の日本には、世間的な見方に即した外見を重視する「ルッキズム」や、若いことや若くみえることをよしとする「エイジズム」、女だから、男だから、〇〇であるべきといった、かたよった「ジェンダー」感に縛られるなど、美容をとりまく社会課題がさまざまに存在します。クリーンビューティーとは、こうした課題に向き合って社会を変える力にもなりうるのではないでしょうか。
ブランドの一貫性を重視し多様性のある市場を目指すドランク エレファント
このような状況下で、クリーンビューティーを代表するスキンケアブランドとしてグローバルでも高く評価されている、米国発の「ドランク エレファント」では、日本の生活者に向けてどのようなアプローチをしているのでしょうか。ウェビナーに登壇した、資生堂ジャパン株式会社 プレステージブランド事業本部 戦略ブランドマーケティング部 ドランク エレファント ブランドマネージャーの大沢一友氏は、「クリーンビューティーであることは、差別化の要素ではあるが、マーケティング戦略上の武器にはならないと考えている」として、「“クリーンビューティーだから買ってください”といった発想の発信は避けている」と話します。
大沢氏は、「私たちのブランドのことを知ってもらえれば、クリーンビューティーとしての位置づけが、自ずと理解されると思う」として、そのためには「ブランドの本質をきちんと丁寧に伝えていくとともに、ブランドの人格に一貫性があることが大切」であり、根底にあるドランク エレファントの考え方=思想・哲学を、商品からコミュニケーションの在り方にまでいきわたらせるよう努めているとします。
たとえば、パッケージが可愛いと気になったことを入り口に、ドランク エレファントと出会ったユーザーが、よりブランドを知りたいと思った次の段階で、クリーンビューティーというブランド精神に触れて、製品そのものの良さやエシカルな姿勢に改めて共感し、もっと好きになってくれる、大沢氏が描くのはこうした動線の設計であり、クリーンビューティー好きの人をメインターゲットにしているわけではないといいます。「ファーストアプローチのメッセージは、“クリーンビューティーの私たち(ドランク エレファント)”では決してない」と大沢氏。それが、「クリーンビューティーであることは、マーケティング戦略上の武器にはならない」と語るゆえんです。
2012年創業のドランク エレファントは、多くの肌悩みを抱えていた創業者のティファニー・マターソン氏が、自身の肌を改善するため、原料に対する肌の反応や処方の役割を学ぶことからスタートし、自分の肌に合わないと感じる6種の原料を特定。しかし、当時の市場にはこの6種すべてを含まない製品は存在しなかったため、自ら作ることを決意して誕生しました。この「成分引き算主義」とあわせて、原料選びの際には、ヘルシーな肌のためになるかを判断の基準とし、バイオコンパチブル(生体適合性のある)スキンケアをうたいます。
「商品PRにおいて“この成分が効く”というのはメッセージとしてわかりやすい。だが、“特定成分を使用しないことが肌に良い”ことを理解してもらえるように伝えることは、正直、難易度が高いと感じる。そして、ドランク エレファントの成分引き算主義の効果は、今使っている製品を一度すべてやめて、ドランク エレファントだけを使用していただかないと本当の意味での効果として実感するのが難しい」(大沢氏)
また、日本には、洗顔後、化粧水、乳液、クリームを順番につけていくといった、長年培われた“美容の作法=ルーティン”があると大沢氏は指摘します。「これに対して、ドランク エレファントは、保湿液と美容液とクリームを手のひらで混ぜ合わせて、一度につける。そのため、これまで親しんできたステップを踏まないことへの抵抗感を持つ方もいるだろう」(大沢氏)
しかし逆に、こうした従来の化粧品とは異なる特徴があるからこそ、使い方の多様性の提案ができていると、大沢氏は考えています。薬機法の違いもあり、米国のように肌の改善を前面に打ち出すマーケティングは難しいものがありながらも、「ユーザーの方々に実感してもらい、選んでいただける環境を整えたい」と大沢氏は意気込みます。
「商品を選ぶのは生活者の方々。有益な情報をわかりやすく提示して、魅力的な選択肢のひとつになることを目指す。これまでやってきたことを見直すという発想は、多様な価値観を認める方向に動く今の時代には受け入れられやすいと思う。(ブランド同士が)席を奪い合うのではなく、他メーカーやユーザーとみんなで一緒に、さまざまな選択肢を提供できる多様性のある市場を作りあげていきたい。選ぶ自由が約束され、一人ひとりが運命の一品に出会える市場こそが豊かな市場だと考えている」(大沢氏)
サステナブルな切り口で生活者とブランドのつながりを創出する新サービスプラン
今回のウェビナーでは、@cosme内に集う「新たなブランドや商品を知りたい・出会いたい生活者」に向けて、ブランドや商品が持つ「サステナブルな一面」を伝えることで、新規のお客様との出会いや新たな角度からのアプローチをもたらす新メニューラインナップの紹介も行いました。
サービスリリースの背景には、クチコミ内容としてサステナブル関連ワードの出現率が大幅な増加傾向にあり、生活者のSDGsに対する認知の広がりがうかがわれることや、サステナブル切り口でユーザーとのつながりを創出したいというブランド側からの声が寄せられている現状があります。
同サービスでは、サステナブル訴求要素を盛り込んだオリジナルのLPフォーマットでの情報発信のほか、リアル座談会や、@cosme BEAUTYHOODの寄稿コラムや@cosmeのクチコミコンテンツなどの記事オプションも用意しています。
※本企画は2023年5月~9月掲載分までとなり、事前に掲載可否の審査が必要となります。
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