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成分からサステナブル容器までSDGsコスメの本流、韓国「TOUN28」

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韓国の化粧品市場では環境保護などSDGsを意識した「クリーンビューティ」の存在感が増しています。なかでも近年、認知度が上昇しているのが、環境重視とそのための行動という価値追求を、手段ではなく目的としている、サステナブルなスキンケアブランドTOUN28(トーン28)です。

エンジニアと天然由来原料の専門家が創業

TOUN28は2016年8月に韓国で設立されたビューティスタートアップで、同名のブランドを展開しています。パク・ジュンス氏とチョン・ヤンスク氏が共同代表を務め、ブランドメッセージとして「環境と個人のために行動するブランド」を掲げます。

パク氏はもともとLG電子で電子機器のUXデザインや消費者データ解析に従事していたエンジニアでした。美容機器の開発に携わったこと、また自身が化学成分に対してアレルギーを発症したことなどがきっかけで、化粧品の天然由来原料の研究員だったチョン氏とともに、化粧品業界での起業に踏み切りました。

TOUN28が注目されたのは、2017年当時から「ビッグデータ」「サブスクリプション」「パーソナライズ」「クリーンビューティ」など、最新トレンドをビジネスに持ち込む戦略を構築していたからです。具体的には、気候変化のビッグデータとユーザーの肌データを複合的に解析し、28日ごとに各自に最適なオーガニックスキンケア製品を届けるというサブスクリプションモデルを打ち出しました。同時に、アプリや店頭にユーザーが訪れるのではなく、最初にTOUN28のスタッフがユーザーと実際に面談して肌データを測定、カウンセリングを行うというアプローチも話題となりました。

環境保全とそのためのアクションが最終的な企業目的

TOUN28はどのような方針で商品づくりやマーケティングを進めているのでしょうか。パク代表は韓国メディアの取材に対して次のように答えています。

「最近は、(企業として)環境保全に価値を置くことや行動を起こすことが、まるでマーケティングのひとつの手段になってしまっている。(中略)それは(SDGsに配慮する姿勢に)マーケティングとしてのメリットが下がれば、企業はほかの手段を探すということ意味する。TOUN28は、環境重視とそのための行動という価値追求を、手段ではなく目的としていく」(TENANT NEWS「新年注目の親環境ブランドTOUN28」より)

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商品づくりに関してTOUN28は、「オーガニック原料をなるべく多く使う」「合成防腐剤などの化学成分は一切使わない」など、シンプルかつ厳格な自社ルールを順守しています。

TOUN28の商品の処方におけるオーガニック原料の比率は、最低でも60%、最高で95%。原料の仕入れ先も徹底的に検証し、信頼できる生産者からのみ供給を受け、仮に仕入れが難しい場合は、自ら原料を栽培するといいます。

それら商品づくりのルールは、経営的に高いコストとなって跳ね返り、原料費は全体支出のうち40%を占めます。また、天然防腐剤を使用するため、一般的な化粧品に比べて使用期限が短いデメリットもあります。しかしTOUN28は、顧客や社会にもたらす価値を考慮し、今後も商品づくりの方針を変えるつもりがないと宣言しています。

オーガニック認証を放棄し、紙製容器は自社開発

あわせて、「自らを装飾しない」「“環境に優しい”をうたい文句で終わらせない」ことも、TOUN28の重要な経営指針です。

たとえば、オーガニック認証機関やマークはいくつもありますが、なかには該当成分が10%含まれていれば認証を受けられるケースもあり、パク代表はそのような行為は「装飾」に過ぎないばかりか、いずれの認証にも維持費がかかり、その負担はそのまま価格に転嫁されるとして、マーク認証を放棄。代わりに全ての成分の配合量をありのままに商品に記載することを選びました。

さらに、商品の過剰包装やデザイン的な“装飾”も放棄し、環境に配慮した紙製の容器を独自開発しました。TOUN28の容器は、キャップ部分を除くすべてを紙に置き換えることで、プラスチック使用量を92%削減。使用せざるをえないプラスチック部分も、100%リサイクル可能な無色としています。

画像3自社開発の紙パッケージ

国際的なNGOから評価、大手グローバル企業とのコラボも

TOUN28の製品は基本的にはサブスクリプションモデルで提供されます。ユーザーはWeb上で会員ID登録を行ったのち、TOUN28のスタッフと直接対面して面談し、専用端末などを使った詳細な肌診断やカウンセリングが行われます。そして最終的に各自にカスタマイズされた商品が定期的に届く仕組みです。

ただし最近では、一般商品と呼ばれるカテゴリーの商品に限り、公式サイトや、特定の店舗で直接購入ができるようにもなりました。顔、手、全身用のスキンケア商品や、洗顔、ボディウォッシュ等のソープ類、美容液などがラインナップされています。成分チェックができるコスメアプリ「ファへ」でのクチコミも多く、人気が高いものとしては、「S19 バオバブの木オイル」というヘアソープ、「H1」というハンドケア用クリームなどがあります。

画像4S19ヘアソープ(左)とH1ハンドクリーム

環境保護をブランドの手段でなく目的として据えたTOUN28の経営は、国連の主要機関との特別協議資格をもつNGO組織、ASD(Association for Supporting the SDGs for the UN)にも評価され、2020年には同協会が選ぶ「Global Sustenable Brand 30」にも選定されました。

2021年に入り、内燃機関自動車の開発中止を宣言した自動車メーカーのボルボとも、環境保護のためのコラボキャンペーンを韓国国内で進めています。ほかにも、大手食品会社とタイアップ、大手ホテルとアメニティコラボなど、TOUN28のブランド価値を認めた企業から、業界横断的なオファーが続々と寄せられています。またTOUN28は、チャリティ・プロギングキャンペーン(ごみを拾いながらランニングするフィットネス)を開催し、集まった寄付金を環境団体に贈るなど、自社独自の社会貢献活動も積極的に行っています。

韓国化粧品業界においてクリーンビューティやヴィーガンコスメはトレンドとなっているものの、TOUN28のようにこの分野に正面から取り組む先進的なブランドは、まだほかに例を見つけにくい状況です。TOUN28が、どれほどのビジネス的成長を遂げていくかは未知数ですが、その軌跡は今後、世界のクリーンビューティブランドにとって重要な指標になっていくことが期待されます。

 

 

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