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【アルビオン】創立70周年を前に「美容業界イノベーションプログラム」2DaysワークショップやISDCの「 アイデア創出プロセス開発支援」で新生マーケティング本部の「顧客視点のものづくり」を加速

【アルビオン】創立70周年を前に「美容業界イノベーションプログラム」2DaysワークショップやISDCの「 アイデア創出プロセス開発支援」で新生マーケティング本部の「顧客視点のものづくり」を加速 サムネイル画像

20263月に創立70周年を迎えたアルビオン。その前年の2025年にはマーケ、クリエイティブ、研究、商品開発などの部門を統合した新生「マーケティング本部」で、アイスタイルの「美容業界イノベーションプログラム」2Daysワークショップや、ISDCの「アイデア創出プロセス開発支援」を実施しました。そこにはどんな意図があったのか。株式会社アルビオン マーケティング本部 商品開発部 部長 龍哲弘様 と同社 研究所 スキンケア製品研究グループ グループ長 中島めぐみ様 に導入の背景と成果についてお話を伺いました。

【今回お話をお伺いした方】

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株式会社アルビオン マーケティング本部 商品開発部 部長 龍哲弘様
プロフィール/商品開発にてスキンケア・メーキャップを担当後、海外ブランドのマーケティング、商品開発を経て、2026年1月より現職。
株式会社アルビオン 研究所 スキンケア製品研究グループ グループ長 中島めぐみ様
プロフィール/研究所にてメーキャップ製品の処方開発、品質保証、素材開発などを担当し、2024年1月より現職。

美容業界のイノベーションを発信する専門メディア「BeautyTech.jp」の知見を体系的に整理したインプット「美容業界イノベーション講座」に加え、未来戦略コンサルティングのディー・フォー・ディー・アール株式会社による約150種類の「未来コンセプトカード」や、「生活者インサイトカード」「社会課題カード」などのツールを使ったワークショップ。参加者の内発的動機と自社の強みを掛け合わせた新しいビジネスアイデアを生み出します。戦略や実行フェーズに関わる方をはじめ、研究開発からマーケティング、営業まで部署を問わず参加でき、組織の壁を越えた連携や一体感を生み出す効果も期待できるプログラムです。

<2日間の基本的な流れ>
Day 1
美容業界イノベーション講座やバックキャスティング思考法のインプットと、参加者個人の興味関心を可視化するワーク、グループ内でのディスカッション


Day 2
個人およびグループでビジネスアイデア創発、会場全体での発表・評価、ディスカッション

新・マーケティング本部のマネジメント層と実務層それぞれに「美容業界イノベーションプログラム」2Daysワークショップを実施

――アルビオンでは20251月の組織変更で、マーケティング戦略部、クリエイティブ制作部、美容開発室、商品開発部、研究部が「マーケティング本部」として統合されました。どういった経緯があったのでしょうか。また、「美容業界イノベーションプログラム」2Daysを実施するに至った理由について教えてください。

龍: 2025年の組織統合には、大きく2つの目的がありました。一つは、組織全体で「顧客視点のものづくり・マーケティング」を行うように転換し、競争力を高めること。そしてもう一つは、多岐にわたる部門が一つになることで、情報共有や意思決定のスピードを上げ、組織としての一体感を醸成することです。

「商品を作るチーム」と「お客様に届けるチーム」とが、同じ方向を向くことは不可欠です。しかし、部門が統合されただけでは、真の共通認識は生まれません。商品開発からお届けまでの全プロセスを一貫した顧客視点で推進していくために、経営側としても強い危機感を持っていました。そこで、マネジメント層も含めた全員の意識を揃え、新しい体制を実質的に機能させるために、今回「美容業界イノベーションプログラム」2Daysワークショップを実施することにしました。

――マネジメント層と実務層で日程を分け、同じ内容を別日程で2回実施させていただきましたが、この狙いについてもお聞かせください。

龍:マネジメント層だけが意識を変えたとしても、実際に現場で施策を動かし、形にしていくのは実務層の皆さんです。中堅メンバーや、将来の管理職候補となる若手メンバーにも同じ方向を向いてもらわなければ、組織の中に温度差が生じてしまいます。そのために、あえてマネジメント層と実務層で日程を分け、それぞれの立場で自分事として深く落とし込めるような形をとりました。

ワークショップが生んだ気づきと連帯感。研究・企画・マーケが「一気通貫」で動くために

――「美容業界イノベーションプログラム」2Daysワークショップを実施して、印象に残った点や気づきを教えてください。

今回アルビオンでの「美容業界イノベーションプログラム」 2Daysワークショップは、美容業界イノベーション講座によるトレンドのインプットやバックキャスティング(未来からの逆算)思考法のインプットの後、マーケティング戦略部、クリエイティブ制作部、美容開発室、商品開発部、研究部のメンバーを混合したグループ編成で、次のようなステップで進行しました。

1. 個人の興味・関心を可視化
まずは「会社のため」ではなく「自分自身」を主語にして思考。約150種類の「未来コンセプトカード(技術変化、社会・産業、人間の価値観などの観点から予測される未来の変化を整理したカード)」の中から、参加者が個人的に興味や関心のあるカードを選択。「なぜその事象が気になったのか?」を深掘りし、ワークシートに記入してグループ内で発表・ディスカッションを行うことで、自身の想いや関心の傾向を言語化・整理。

2. 個人でビジネスアイデアを創発
1で言語化した個人の想いや気づきをベースに、ビジネスアイデアの種を創発。その際、ターゲットとなる顧客像を具体的に描くための「生活者インサイトカード(370項目)」や、解決すべき課題を見つけるための「社会課題カード(107項目)」といったツールを活用し、解像度を高める。

3. グループで一つのビジネスアイデアに統合・ブラッシュアップ
個人で考えたアイデアをチーム内に持ち寄り、共有。多様な視点をすり合わせながら、自社の強み(アセット)なども踏まえ、チームとしての一つの強力なビジネスプランへとまとめ上げる。

4. 全体発表・相互評価とアクションプランの策定
各チームで作成したビジネスアイデアを会場全体で発表。参加者全員で、複数の評価軸を用いて客観的に点数付けを行い、フィードバックをし合う。 さらに、そのアイデアをバックキャスティングの視点で捉え直し、「どのようなビジネスモデルにするか」「実現のためにどんな技術や提携先が必要か」といった具体的なアクションプランへと落とし込む議論を行う。

このように、単なる座学やアイデア出しで終わるのではなく、「個人の情熱」を「チームの共創」へと広げ、最終的には「明日から動ける具体的なビジネスプラン」まで落とし込むのが、「美容業界イノベーションプログラム」2Daysワークショップです。

グランドルールとして「肩書を外して 『ひとりの人間』 として参加すること」「考えをオープンにし、思っていることを率直に述べる こと」「意見を否定しない、意見の良し悪しの批判をしないこと」も周知し、心理的安全性が保たれた中で実施します。

龍: 率直に「自分も参加者として混ざりたかった」と感じるほど、熱気のある場でした。会場の後ろで見守っていて、ワークを通じてメンバー間に強い連帯感が生まれていくのが伝わってきました。普段の業務におけるコミュニケーションは、どうしても部署間等の利害関係が伴うものですが、「美容業界イノベーションプログラム」によって、心理的安全性が保たれた中で、一人の人間として未来をワクワクしながら描く時間は、参加者にとって何物にも代えがたいものだったと思います。期待以上の動きを見せるメンバーや、この場を通じて一皮むけた若手もいて、大きな手応えを感じました。

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また、ワークの光景を見て「マネジメント職同士の横のつながり」の大切さにも改めて気づかされました。そこでワークショップ終了後、マネジメント職だけの懇親会を開くことに決めたんです。まずはリラックスして話し合える関係性を作り、組織としての連携をさらに強めていきたいと考えています。

中島: 私は、全く違う環境に放り出されたときにどう考え、動くかという「対応力」の面に注目していました。管理職はやはり自分の得意領域の中で仕事をするシーンが増えていると思いますが、全く違うことに放り込まれた時にどう考え動けるかという気づきが、参加者の皆さんそれぞれにあったのではないかと感じています。参加者の話を聞いていても、そう思いました。

一方で、横のつながりの大切さを私も感じました。特に研究所は物理的に本社と離れているため、今回のように半ば強制的に横のつながりを作る機会は、非常に意義深いと感じました。

――「美容業界イノベーションプログラム」2Daysワークショップを経て、今後どのように組織をレベルアップさせていきたいですか。

龍: 今回の「美容業界イノベーションプログラム」2Daysワークショップは、すぐに目に見える成果を求めるものではなく、数年後に本人の糧として花開く「中長期的な種まき」だと捉えています。これまでの社内研修は年次ごとの形式的なものが中心で、クリエイティビティが必要な部門においても、そのスタンスの習得は個人のセンスやキャリアに委ねられている側面がありました。しかし、こうした根本的な思考のアプローチを組織的に学ぶ場は、非常に重要だと改めて感じています。ですので、今回は参加していないメンバーも含め、ある程度のレイヤーまでこの機会を広げていくことも、検討すべき一つの大きな方向性だと考えています。第2弾やさらなる展開も含め、マネジメントとしてその可能性を探っていきたいです。

中島: 具体的な施策はこれから検討ですが、研究のメンバーが自分のアイデアを形にして発信する「アウトプット力」をさらに強化したいと考えています。研究員にとって技術を突き詰めることは非常に重要ですが、それに加えて、その魅力をどう伝えるかも同じくらい大切だと考えています。社内で味方を作り、自分の「野望」を実現していくためにも、技術を今の世の中の文脈に乗せて提案していく力が必要です。次のステップとしては、より実践的に、小さなチームで企画を具体化するような場を作りたいです。自分たちだけで進めるのはまだ難しいため、今回のアイスタイルさんのような専門的な知見も借りながら、より実効性の高いトレーニングを継続していければと思っています。

「アイデア創出プロセス開発支援」でISDCが4カ月伴走。座談会などの定性リサーチも組み合わせて生活者理解を深める

――マーケティング戦略部の実務メンバーに対しては「美容業界イノベーションプログラム」2Daysワークショップのほかに、ISDCの「アイデア創出プロセス開発支援」も実施いただいています。この背景をお聞かせいただけますか。

アイスタイルデータコンサルティング株式会社(ISDC)が提供するデータコンサルティングサービスの一環として、ブランドの新商品アイデア創出プロセスそのものを開発・強化することを目的としたプログラム。日本最大級の化粧品・美容の総合情報サイト「@cosme」に集積された膨大な生活者クチコミ・購買・行動データを分析するとともに、生活者座談会などの定性リサーチも組み合わせて実施。アルビオンではマーケティング戦略部の実務メンバーが「生活者起点のアイデア創出」を実践的に習得できるよう、4カ月にわたるプロジェクト型で伴走し、最終報告会でのアウトプット共有まで支援しました。

龍: アルビオンでは商品開発において、独自性や高級化粧品としての価値を大事にしています。新生マーケティング本部が新しいものを生み出す部署として、「今までのやり方だけでいいのか」というのが出発点です。トップとの話の中でも「今までにないものを作ろう」という話は出ますが、実務層が日々の業務をこなす中でそれを実行するのは難しい。その局面を変えるために、自分たちにないものを持っているアイスタイルさんと協業することで、強制的に学びのきっかけを作ろうと考えました。データを読み解いてその先を考える手法として、お願いしたのがきっかけです。

――市場の変化か、あるいは社内的な課題か、どのような要因があったのでしょうか。

龍: 両方です。まずお客様が大きく変わりました。今までのやり方が間違っていたとは思いませんが、これからの時代に受け入れられるためには、新しいものをアルビオンらしく消化してマッチングさせるプロセスが必要です。これまでは属人的な力に頼っていた側面もありましたが、今の風を感じて新しい提案をするフェーズに来ています。もう変わらなければならないフェーズ、むしろ少し遅れているのではないかという危機感もあります。働き方が多様化し、人が入れ替わる中で属人化しているとリスクが大きいです。誰かがいないと作れないという状態を避け、一定の基準で安定的に新製品を生み出せる、体系化された組織にしたいと考えています。

――4カ月のプロジェクトを経て、変化を感じられたところはありますか。

龍: メンバーは通常業務との間で大変そうでしたが、数年後にこの経験が生きると信じています。実際、メンバーが提案してきた新製品企画の中に今回の知見を自分事として取り入れている様子が見られました。データの見方や、企画のシーンの切り取り方といった思考のアプローチが確実に変わってきていて、そういう成長の循環のきっかけを作っていただけました。データの見方や企画の捉え方が強くなり、決裁する側から見ても、以前より内容がリアルになったという手応えを感じています。

中島: 最終報告会は非常に面白かったです。生活者起点を捉えていて、ターゲットとする方の解像度が今まで以上にくっきりしていたのが印象的でした。プランナーがアイデアを出し、それを研究員が形にしていく開発プロセスにおいて、その解像度が高いほど、よりコンセプトに沿った技術提案につながりやすいと思います。今回のプロジェクトが、研究とマーケの間に新しい対話を生み出す契機になったと感じています。

生活者のリアルに触れると、アイデアの質は変わる。マーケ担当や研究員の「伝える力」が、商品を変える

――座談会でリアルな生活者の声に触れると、マーケティング戦略部メンバーの皆さんのテンションは明らかに上がって、アイデア出しのスピードも質も変わっていったそうです。データは感性を刺激するヒントですが、実際の生活者を間近で見られる機会が持てるかどうかで大きく変わる。これは商品企画メンバーだけでなく、研究部門にも広げていける可能性があると思うのですが、いかがでしょうか。

龍: アルビオンは提案型のブランドで、その基本スタンスは変わりません。ただ、お客様のことを何も知らずに提案するのと、深く理解した上でその一歩上を行く提案をするのとでは、意味がまったく違います。今回のプロジェクトを経て、出てくれたメンバーの企画がリアルになってきていると感じているのも、まさにそこだと思っています。

中島: 研究所でもこういったプロセスをぜひ経験したいと思いました。研究員がもつ様々な技術の可能性を生かすためにも、生活者の課題や文脈の中で技術を位置づけることができると、提案の説得力がまったく変わります。プランナーから「こういう方がこういう課題を持っている」「こういう方をターゲットにしている」というリアルな言葉が届くと、何を作るべきかの方向性が一気にクリアになる。処方や機能性成分だけでなく、「製品になったらどんなキャッチフレーズで届けられるか」まで研究員が思い描けるようになれば、本当の意味での「一気通貫」が実現するはずです。

――@cosmeのデータで見ていても、アルビオンのユーザーさんはリピート率が高く、ブランド愛が強いという特徴があります。対面接客を大切にされてきた強みを活かしつつ、今後データや生活者起点でどのような展望をお持ちですか。

龍: 今回は「アイデア創出」という大きなテーマでご相談しましたが、次は例えば新カテゴリーの立ち上げや特定商品のプランニングといった、より具体的な文脈で@cosmeのデータを活用するプロセスを取り入れていけると面白いと考えています。「お客様がこう言っているから作る」のではなく、お客様を深く理解した上でその一歩上を行く提案をするのが私たちのスタンスです。これまで提案型スタイルでヒット商品が生まれてきたのも事実ですが、お恥ずかしい話ですが期待通りにならないこともありました。これを機に生活者理解を深めることで、これまで大事にしてきた大胆な提案の的中率を上げていきたいです。

中島: 研究部門でもデータをどう活用していくか、まだ課題ですが、@cosmeのデータからは様々な開発のヒントが得られるのではないかと思います。そうして生まれたアイデアや技術を、研究員が自ら言語化して社内に提案し、フィードバックを得て磨いていく、そんなサイクルを作れたら面白いと思います。研究員の人生の中で「自分が発端になった製品が世に出て、お客様に喜んでいただけた」という経験を、一回でも多く作れる組織にしていきたいです。

―― ありがとうございました。


創立70周年。アルビオンが描く「顧客視点のものづくり」の次のステージ

20263月に創立70周年を迎えたアルビオン。その前年に実施した「美容業界イノベーションプログラム」2DaysワークショップとISDCの「アイデア創出プロセス開発支援」は、新生マーケティング本部に有形・無形の変化をもたらしました。部署を越えて自然に生まれ始めた横の連携、そして生活者のリアルに触れることで変わったアイデアの解像度。これらはすべて、中長期的に花開く可能性を秘めた「根」として、一人ひとりのメンバーの中に根付いています。顧客視点のものづくりをさらに深化させる組織へ——アルビオンの挑戦は、着実に次のステージへと歩み始めています。

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