アイスタイルには、「日本最大のコスメ・美容の総合サイト@cosme(アットコスメ)」の膨大なデータ群を分析し、マーケティングに活用する「リサーチチーム」があります。1600万件を超える膨大なクチコミはもちろん、アクセスデータや意識調査やインタビューを通して、消費者に触れ続けているリサーチチーム。そんな彼らの知見をご紹介します。今回のテーマは「ビューティにおけるジェンダーダイバーシティ&インクルージョン」です!
はじめに
コロナウイルス感染拡大により落ち込む化粧品市場。しかしそのなかで男性皮膚用化粧品の出荷金額は前年を超える伸長を見せています(経済産業省「生産動態調査」をもとに株式会社アイスタイルにて加工)。また近年では新たな男性向け化粧品ブランドが登場したり、広告に男性が起用されるなど、美容業界におけるジェンダーダイバーシティ&インクルージョン促進の動きが見られます。
しかしその一方、今年2月の「@cosmeを利用する美容感度の高い男性メンバーの美容事情アンケート」では、20代以下の男性@cosmeメンバーの約3割が化粧品を購入するときに「店頭での周囲の目が気になる」と回答しており、メンズビューティへの理解と受容は十分とはいいがたいと考えています。
株式会社アイスタイルでは、美容におけるジェンダーダイバーシティ&インクルージョンのさらなる促進、そしてメンズビューティ市場の拡大のためには、女性たちのメンズビューティへの受容が重要と考え、「2021年4月@cosmeにおけるメンズビューティ受容調査」を実施しました。
「男性がスキンケア/メイクアップをすること」への女性の受容と実感
95%が男性がスキンケアをすることを受容
18~69歳の@cosmeプロデュースメンバーの女性5820人に調査を実施した結果、95%が男性がスキンケアすることを「まあいいと思う/とてもいいと思う」と回答しました。@cosmeにおいて男性がスキンケアをすることは非常に受容が高いと言えます。一方男性がメイクアップをすることへの受容は、スキンケアに比べれば低いものの、7割弱という結果になりました。
“彼氏の誕生日プレゼントで買いました!男性もスキンケアする時代!!!(24歳/THREE フォー・メン ジェントリング トライアルキットへのクチコミ)”
男性がメイクアップをすることへの受容はこの2年で約25ポイント上がった
この数値は2019年度と比較すると25ポイント高く、この2年間で「男性がメイクアップをすること」への受容は大きく向上したと言えるでしょう。
ただし年代別で見てみると、18~24歳では9割が受容しているのに対し、45歳以上では5割と、今回の調査の中で最も年代間の差が見られた質問でもありました。男性のメイクアップについては、若年層が牽引し、高年齢層の考え方を変えていくことが期待されます。
18~24歳の@cosmeメンバーの6割弱が周囲にメイクをする男性が増えたと実感
では実際に、自身の周囲でスキンケアやメイクアップをする男性が増えたという実感を持っているかを聴取したところ、スキンケアで7割強、メイクアップで4割強となりました。女性たちが受容するほどには、周囲の男性たちの行動は伴ってはいないというのが現実のようです。いま起きている女性たちのメンズビューティへの受容の向上は、実際に周囲の男性たちがスキンケアやメイクアップをするという事実や行動に刺激されてのものというよりかは、知識や社会情勢を反映したものなのかもしれません。
とはいえ年代別に見てみると、18~24歳においては8割強がスキンケア、6割弱がメイクアップをする男性が増えたと回答。若年層を中心にメンズビューティ浸透している様子が見られました。
男性とコスメをシェアすることへの受容は、この2年で約10ポイント上がった
男性と女性とが同じコスメを共有する“シェアコスメ“については、6割強が「まあいいと思う/とてもいいと思う」と回答。2019年度に比べ約10ポイント増加しています。近年、顔にも髪にも使える、チークとしてもリップとして使える、どんな化粧品とも相性がよいといったマルチパーパス性が注目されていますが、今後は「女性にも男性にもよい」こともマルチ機能の1つとしてより重視されるようになるのではないでしょうか。
“クリアなので男性にも使えますから、夫に一本あげましたが、朝起きたら唇のガサガサが治っていました。使い勝手の良い一本です(48歳/キャンメイク プランプリップケアスクラブへのクチコミ)”
もしあなたが購入を検討している化粧品の広告モデルが男性だったら?
化粧品の広告モデルが男性であることに@cosmeメンバーの約8割が好意的
ここ数年、化粧品の広告に男性が起用される機会が増えたように感じますが、それに対し女性はどのように感じているのでしょうか。今回の調査では、@cosmeメンバーの4割弱が「とてもいいと思う」と回答。「まあいいと思う」まで含めると約8割が好意的に受け止めていることが分かりました。化粧品広告におけるジェンダーダイバーシティ&インクルージョン促進を、女性たちは前向きに捉えていると思われます。
化粧品の広告モデルが男性であることで約2割が購入意欲が上がると回答
では男性モデルは女性の購入意欲をあげるのでしょうか?自身が購入を検討している化粧品の広告モデルが男性だったら、購入意欲は変わるのかを聴取したところ、約2割が「やや購入したくなる/とても購入したくなる」と回答し、「あまり購入したくなくなる/まったく購入したくなくなる」の約1割を上回る結果となりました。
“パッケージもおしゃれだし、ジェンダーニュートラルというコンセプトやアジア人の男女モデルをビジュアルに起用してるのもポイント高いです(35歳/LAKA ワイルドブロウシェイパーへのクチコミ)”
「仕上がりがその場で確認できるメイクアップ化粧品は男性モデルであってもよいが、ある程度の継続使用が必要とされるスキンケア化粧品では男性の肌では効果をイメージしにくい」といったカテゴリーの違いがあるのではないかと想定していましたが、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品による大きな差異は見られませんでした。
またターゲットを男性、女性に限定しないジェンダーレスコスメへの受容も約8割にのぼりました。
化粧品の広告モデルとは「そのブランドや商品を使用してなりたい自分像」、つまり憧れや自己投影の具現化という役割があるとも言われます。性別を超えた広告モデルが受容されるということは、いま女性たちが描くなりたい自分像が「男性も含めたジェンダーレスなイメージ」であることを示しているのでしょうか。それとも化粧品の効果感や仕上がりがジェンダーに影響されるものだとは捉えていないのでしょうか。もしかしたら生活者が広告に期待するのは「ジェンダーに影響されない生き方や考え方といった価値観」なのかもしれません。
“男性キャラみたいな目元になりたいという意味のわからない願いを心に抱えて(中略)、ちょうど全国発売が始まった頃だったので買いました。(38歳/UZU BY FLOWFUSHI UZU まつげ美容液へのクチコミ)”
もしあなたが普段お使いの「化粧品売り場」に男性客がいたら?
ドラッグストアなどの化粧品売り場で、化粧品を選ぶ男性の姿を目にする機会も増えたように思います。しかし、今年2月にリリースした「@cosmeを利用する美容感度の高い男性メンバーの美容事情アンケート」によると、20代以下の男性@cosmeメンバーの約3割が化粧品を購入するときに「店頭での周囲の目が気になる」と回答しており、メンズビューティへの理解と受容は十分とはいいがたいと考えています。
“旦那にプレゼントしました。(中略)最近は男性向けのコスメやスキンケアの種類も増えてきましたが、本人的にはやっぱりスキンケアでも買ったりするのがどこか気恥ずかしいみたいなので、シェービングから化粧水などのケア用品から少しづつ取り入れてもらえたらと思います。(34歳/Barber501 シェービングブースター グリーンへのクチコミ)”
約6割が「あまり気にならない/まったく気にならない」
では、女性たちは店頭での男性の視線をどのように感じているのでしょうか。普段利用する化粧品購入チャネル別に男性客の存在が気になるかどうかを聞いたところ、百貨店、ドラッグストア、バラエティショップいずれの利用者も約6割が「あまり気にならない/まったく気にならない」と回答し、「とても気になる/やや気になる」を上回りました。各チャネルとも2割前後の「とても気になる/やや気になる」が見られますが、「とても気になる」と回答したのは5%以下であり、店頭でのジェンダーダイバーシティへの拒否感はそれほど大きくないと言えるでしょう。
周囲の目が気になる男性はバラエティショップでコスメを買え
男性客の存在が「あまり気にならない/まったく気にならない」と回答した率は、チャネルによってやや差が見られました。百貨店利用者の59%に対し、バラエティショップ利用者の67%が「あまり気にならない/まったく気にならない」と8ポイント高かったのです。これはバラエティショップで化粧品を購入する女性が、比較的年齢が若くジェンダーダイバーシティへの受け入れが高いためだと思われます。もし化粧品を購入するときに周囲の女性の視線が気になる男性はバラエティショップで化粧品を購入するといいかもしれません。(百貨店ブランドを女性の目を気にせず購入したい男性は@cosme STOREがおすすめです)
“最近、コスメカウンターやバラエティショップの化粧品売り場でリップやアイシャドウ、ファンデーションを自分用に買ってる男の子をよく見かけるので、どんな人でも気軽に使えるコスメが出来て嬉しい。(42歳/iLLO LASTING SMOOTH LIPSTICKへのクチコミ)”
おわりに
今回の調査は2019年度に続き2回目の実施となります。このわずか2年で、男性が化粧品を使うこと、キレイになることについての女性の受容は大きく向上しました。また、いま女性の周りで起きている広告や店頭におけるジェンダーダイバーシティに対しても高い受容が見られ、大きな拒否は見られませんでした。その変化、受容の高さに驚くほどです。そして美容というカテゴリーがいかに女性に独占されてきたか、「女性らしさ、男性らしさ」というジェンダーにいかに縛られてきたかを改めて考える機会となりました。
この変化の要因には、働く女性の増加、SNSがマイノリティとされていた人たちからの情報発信を可能としたことなど、さまざまな要因が考えられます。いわゆる”同調圧力”もその1つかもしれません。@cosmeメンバーには、化粧品への関心が高いと同時に情報収集力も高いという特徴を持っています。そんな情報に敏感な女性たちですから、いまの世の中の流れを感じとり、自身の考え方を変えることも比較的早いものを思われます。だからこそ、もしかしたら本当は「男性にはメイクをしてほしくない、男性は化粧品売り場に来ないでほしい」と思っていても、アンケートでそう回答することは今の風潮としてふさわしくないと感じている女性たちがいるかもしれません。もしそうだとしたら、女性たちがメンズビューティを本当の意味で受け入れるにはもう少し時間が必要ではありますが、近い将来、美容がジェンダーから解放され、その多様性を互いにリスペクトしあう社会となることは間違いないのではないでしょうか。
調査概要
調査名称 : 美容に関するアンケート
調査対象者: @cosmeプロデュースメンバー 女性18-69歳
調査地域 : 全国
調査方法 : Web調査
調査時期 :
2019年度 2019年5月11日 (土) ~13日(月)
2021年度 2021年4月9日(金)~11日(日)
集計数 :
2019年度 5,723人(@cosmeの年代構成比に合わせ割付)
2021年度 5,820人(@cosmeの年代構成比に合わせ割付)
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