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女性を支援するコスメバンクプロジェクト2023、継続的な活動で支援の輪を拡大

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2023年5月29日に開催された「業界が取り組むべきSDGs 〜女性のエンパワーメント推進活動事例〜」ウェビナー。シングルマザーなど困窮する女性世帯に化粧品をギフトとして届ける「コスメバンクプロジェクト」を運営する一般社団法人バンクフォースマイルズの代表理事であり、アイスタイルの共同創業者の1人で、現在は非常勤取締役の山田メユミと、同社団法人の理事を務める北澤恒夫氏が登壇し、コスメバンクプロジェクトの活動の現況と今後の取り組みについて紹介しました。

>>「コスメバンクプロジェクト」については、こちらの記事もご参考ください。
『2022年コスメバンクプロジェクト本格始動、経済的困難下の女性世帯にコスメギフトを配布』

誰も取り残されることのない社会に向けて女性エンパワーメント

ウェビナーではまず、第一部として「化粧品業界が女性エンパワーメント活動に取り組む意義」について話し合われました。山田は「日本においても、企業がどう社会に関わっているのかを生活者が注視するようになってきた」として、多くの化粧品メーカーが、健康・ヘルスケア関連や女性活躍・就職支援、教育の分野などで、さまざまなESG(環境・社会・ガバナンス)施策を進めているとします。

つまり、多様性や包括性のある社会、誰も取り残されることのない社会はより良きものであり、実現を目指そうという意識が、一般の人々の間にひろがり始めているなかで、企業は、生活者と真摯に向き合って社会課題に取り組む姿勢を示すことが、事業規模の大小を問わず必要とされ、それによって生活者からの信頼が得られ、企業にとって大きなメリットになると山田は示唆しています。 

株式会社コーセーで、開発、企画、宣伝など幅広い業務に従事した経験を持ち、ビューティ業界への知見が高い北澤氏も「一人ひとりの人格を尊重することが基本」と話します。「人々に美しさと自信を与え前向きな気持ちをもたらしてくれる化粧品はポジティブな商材であり、その効果を求めて購入する方々に対し一歩踏み込んだコミットメントをすることが、化粧品企業には必要だ」として、企業は生活者から期待される以上の提案と行動を示していくべきではないかと北澤氏はいいます。

余剰在庫の化粧品を経済的にハンディキャップがある女性に無償ギフトとして届ける

コスメバンクプロジェクトは、日本全国のシングルマザーら経済的困難を抱える世帯に、リニューアルに伴う旧仕様品や未開封の店頭販売品といった、化粧品メーカーが持つ余剰在庫の化粧品の寄付を募り、ギフトとして詰め合わせたセットを、支援団体などを通じて無償提供するプロジェクトで、営利を目的としない一般社団法人バンクフォースマイルによって運営されています。

2021年12月に、ひとり親支援団体や母子生活支援施設/シェルターなど80団体38施設を通してギフトセットを届けるパイロットテストをスタート。続く2022年は春夏、秋冬の2回の配布を行い、これまでに延べ約15億円に相当するギフトを支援しました。

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プロジェクトを立ち上げたきっかけは、「子どもの卒業式に出席する晴れの日なのに、口紅1本なく、マスクで顔を隠して参列したというシングルマザーの声にショックを受けた」ことだと山田は明かします。化粧品は人々の暮らしの質を高め、幸せをもたらすものという自負を持って業界に携わってきた山田は、化粧品を買うことのできない人々がいて、化粧品がないことで悲しい気持ちになっている事実に全く気づいていなかった自分を恥ずかしく感じるとともに、化粧品業界が抱える余剰生産と廃棄の問題をかんがみ、品質にはなんら問題がないにもかかわらず再販が難しい商品を、困窮している女性に届けることができれば、笑顔になる人が増え、企業にも地球にも貢献できるのではないかと考えました。

「パイロットテストはもう少し小さな規模でやるつもりだった。ところが、コスメバンクの構想を持って企業に声をかけたところ、同じように感じている方々がたくさんいて多くの賛同が集まり、思った以上に輪が広がった」(山田)

細やかなマッチングで、必要とされている商品を必要な人々に

企業との連携も重要ですが、シングルマザーの支援団体や施設などとより多くの連携を図ることが、本当に化粧品を必要としている人のもとに、必要とされているタイプの商品を届けるマッチングの鍵になると山田はいいます。

「小規模な施設に同じ商品が大量に届いても使い切れないし、施設側の負担になる。私たちは、基礎化粧品やベースメイク、カラーメイクなどの各カテゴリーからバランス良く詰め合わせ、扶養している子どもの数や年齢といったそれぞれの世帯属性に合わせたセットを届けることに努めた。2022年秋冬ギフトでは120パターンのセットを作成した」(山田)

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各カテゴリーで満遍なく商品が揃うためには、ただ企業から寄付されるのを待っているだけではダメだと山田は指摘します。

「参画企業に、提供いただける商品の内容と数量を事前に聞き取り、コスメバンク側でリスト化して、何が充足しているか、足りない商品は何かをあぶり出す。同時に、届け先の女性にも不足しているもの、欲しいものをたずね、企業側にフィードバックして、提供商品を再考してもらうこともある」(山田)

「バラエティに富んだ商品があれこれ詰まったコフレのような、もらってうれしいギフトにしたい」との思いをもとに、2022秋冬は、商品の寄贈総額は約6億2,000万円、1セットあたり約1万8,000円となりました。

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7割が年間世帯収入200万円未満、化粧品に使う費用は年間3,000円以下

では、どのような女性がコスメバンクプロジェクトからの支援を受けているのでしょうか。ギフトを受け取った女性のアンケートからは、30代、40代の子育て女性世帯が中心であることがわかります。そして、回答者の年間世帯収入は200万円未満が7割を占めます。2020年の厚生労働省が公表した数値によれば、子どものいる世帯の平均世帯収入は814万円、そのうち母子世帯の収入は373万円、父子世帯が606万円で、このことから、コスメバンクプロジェクトの対象者の収入はかなり低い水準にあり、子どもの食費や生活費が優先され、母親が自分の身だしなみにお金をかけることが難しい状況であることがわかります。実際、アンケートのサマリーでは、シャンプーや石鹸などの日用品を含めた化粧品に使う金額は年間5,000円以下で、3,000円以下という回答が最多を占めました。

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このように、女性ひとり親家庭の困窮度が高いことから、コスメバンクプロジェクトでは、地方自治体との協力関係も強めています。2022年8月には、千葉県柏市と連携し、児童扶養手当を受給する約2,000世帯へコスメギフトを配布しました。仕事と育児に多忙なシングルマザーは、手当の受給に必要な届出のために市役所を訪れることがなかなかできないケースが多く、柏市の行政側には実態の把握が難しいという課題がありました。そこで、「化粧品ギフトがもらえる」と広報することで、届出をする動機づけとし、住民との接点が増えたといいます。運営事務局側にとっても、自治体がギフトの袋詰め作業を行って、希望者に手渡しをしてくれるため、物流に費やすリソースの軽減となりました。

柏市では同年10月には、面接など就活に役立つ就業支援のためのメイクアップ講座も開催しています。当日の午前と午後の2回、コスメバンクプロジェクトのボードメンバーである資生堂ジャパンとコーセーの担当者がそれぞれ講師を務めた今回の講座は、2022年度は柏市の財源で実施されました。2023年以降は予算化し、「母子家庭就業・自立支援センター事業」の助成金申請を行い、国からの資金も受けて継続していく予定です。

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化粧品の持つ力が女性たちをポジティブに変える

北澤氏は、コスメバンクプロジェクトによって「自身が企業側の立場だったとき、化粧品を買うことができる人々のことしか見ていなかったと気づかされ、大いに反省した」と明かします。そして、前述の柏市主催のメイクアップ講座を見学した際には、講座が始まる前は下を向いてうつむきがちだった参加者たちが、講義が終わる頃にはみな晴れやかに顔を上げていて、「表情がまるで違っているのを見て驚いた。化粧品の力で人々が前向きになれる姿を目の当たりした」と話します。

「企業にとっても、自分たちの製造した商品が本来の機能を発揮できないまま過剰在庫となる状況は、決して好ましいことではない。コスメバンクプロジェクトは企業とユーザーの距離を縮めてくれる効果もある。より多くの企業や個人の方の参加やサポートをお願いしたい」(北澤氏)

コスメバンクプロジェクトでは、1口50万円/年のメンバーシップ費と年間2回(春夏・秋冬)の商品の寄付をする「ボードメンバー企業」と、プロジェクト運営のための寄付(1口10万円)と商品の寄付(1口につき2,000個程度)を行う「協力企業」を募集しています。参加企業には、公式サイトや印刷物に掲載し社内外に向け活動状況をPRするのに役立てられる認定ロゴマークと感謝状が発行されるほか、自社の社員を梱包や仕分け作業など運営事務局でのボランティアに派遣するなど、社員の意識向上を促す機会も設けられます。また、ギフトに同梱するリーフレットにはボードメンバー企業のロゴや社名を記載。あわせて、ギフトを受け取った女性たちにLINEの友だち登録を推奨し、寄せられたダイレクトな声や感想・意見を参加企業にシェアしています。

>>コスメバンクプロジェクト参加についての詳細はこちら

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