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メルカリとアイスタイルの共同調査から明らかになった二次流通のポテンシャルと顧客インサイト

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日本最大のフリマアプリであるメルカリでの化粧品売買の取引は年々増えているものの、一次流通における購買はその影響で減るのではなく、むしろ売上増のカギとなることがわかってきました。この今までみえていなかった二次流通と一次流通の関係をデータから明らかにしたのが、メルカリとアイスタイルの提携及び調査プロジェクトです。

2020年2月、メルカリは、一次流通企業が保有するデータとメルカリが保有する二次流通データを連携し、包括的な商品のライフサイクルやカスタマージャーニーを可視化することで、一次流通市場の活性化と新たな購買体験・顧客体験の創造を目指す「コネクト戦略」を発表しました。同時にアイスタイルとの包括業務提携を締結し、化粧品ブランドをはじめとする企業に向けた新たな価値の提供による一次流通の活性化に乗り出しています。

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メルカリとアイスタイルのデータ連携の内容

そして2021年10月には、両社が行なった「コスメ化粧品の二次流通市場に関する共同調査」発表会が開催されました。同調査は、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授の山口真一氏が監修し、国内における化粧品/コスメの二次流通市場規模の推計が年間1,555億円にのぼるなど、二次流通市場にまつわる数々の興味深いデータが提示されました。

なぜ、二次流通市場の主要プレイヤーであるメルカリが、一次流通市場の活性化に貢献しようとしているのか、メルカリとアイスタイルのデータがつながると、化粧品ブランドにどんなメリットがもたらされるのか、共同調査の結果から浮かびあがる顧客インサイトも含め、このプロジェクトを率いる株式会社メルカリBusiness Operations(東京海上日動火災保険からの出向)入門大介氏と、株式会社アイスタイル データ戦略推進室長 勝並明子に話を聞きました。

メルカリがコスメ・美容カテゴリーに注力する理由

メルカリにおける化粧品/コスメの取引状況を2014年と2020年で比較すると、年間購入数は約12.4倍、年間購入額は約24.7倍へと大きく成長しています。また、出品者は20代が多いものの、購入者は20代から60代まで偏りがないという結果が出ました。

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メルカリの流通取引総額の比率をカテゴリー別で見ると、コスメ・美容は約7%を占めます。こうした成長の背景には、「メルカリの月間利用者数(MAU)が対前年比13%増で成長し母数が増えていること、加えて『メルカリでコスメが売れる』というクチコミが広がっていること、これら2つの理由が考えられる」と入門氏は話します。

※FY2022.6 1Qメルカリ決算資料より

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株式会社メルカリ Business Operations
(東京海上日動火災保険からの出向)
入門大介氏

共同調査によると、メルカリ以外のフリマアプリやオークションサイトも含めた化粧品/コスメの二次流通市場規模は、推計で年間1,555億円。これは化粧品/コスメの一次流通取引総額の約10%に相当します。 

メルカリがコスメ・美容カテゴリーの拡大に注力するのは、「化粧品をメルカリで売買するユーザーは、アクティブ率が非常に高い」(入門氏)ことがわかっているからです。メルカリの流通取引総額は、多い順にエンタメ・ホビー(28%)、レディース(17%)、メンズ(13%)、家電・スマホ・カメラ(9%)、スポーツ・レジャー(8%)、コスメ・美容(7%)と続きます。

ただ、メルカリの女性ユーザーのうちコスメを売買するのはまだそれほど多くない事実もわかっており、コスメ・美容は日常使いされるものであることを考えると、メルカリにとってもポテンシャルの大きい分野ということになります。

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ブランドが着目すべき二次流通市場のデータ3つのポイント

一方、アイスタイルが運営する@cosmeには美容感度の高いユーザーが集まり、MAUは約1,450万人にのぼります。@cosmeで2021年9月に行ったユーザー調査によると、「この1年でコスメをどこで購入したか?」という質問に対し、「メルカリ等のフリマアプリ」と回答した人は14%でした。「2年前の11%からじわじわと伸びており、スーパーやディスカウントストアで買うのと同じくらいの割合にまで浸透してきている」と勝並は明かします。

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株式会社アイスタイル 
データ戦略推進室長 勝並明子

しかも、コスメをメルカリで購入するユーザーが求めているのは、安さだけではないといいます。メルカリと@cosmeのデータを突き合わせてみると、化粧品ブランドが把握しておくべき3つのポイントがみえてきました。

1つ目は、メルカリでは現品だけでなく、サンプル品の購入が活発に行われている点です。@cosmeユーザーへの調査では、9割の人に「化粧品は試してから買いたい」というニーズがあり、また、化粧品をフリマアプリで購入したことがある@cosmeユーザーに、フリマアプリやオークションサイトで化粧品を買う理由を尋ねたところ、「その化粧品を試したいから」と回答した人が56.6%にのぼりました。メルカリが化粧品の試し買いの場の1つとなっているのです。実際にメルカリで化粧品を探すと、プチプラからハイブランドまで、数多くのサンプルが出品されています。

ユーザー側としては、カウンターなどの売場に行けば無料で手に入るサンプルやテスターがあっても、「カウンターに行く時間がない」「自分の好きなタイミングで、面倒な個人情報の登録などせずにサンプルを手に入れたい」「店頭の美容部員に相談すると目当てではない商品をすすめられる場合があり苦手」「テスターだと顔に試せない」「商品を購入する前にしっかり試したい」といったニーズがあり、コロナ禍で店頭に足を運びにくい状況も、メルカリが商品を試したい人々の受け皿となることを後押ししました。

2つ目は、二次流通市場による一次流通市場への消費喚起効果です。監修の山口氏は、二次流通市場での購入をきっかけに、次に新品を購入する(一次流通で購入する)金額が52億円増えるとします。この数字は、二次流通市場を利用したことで満足して一次流通市場での購入をやめたマイナスの効果も考慮して算出されたものです。また、「二次流通でのトライアル消費実施者(フリマアプリで試し買いをする人)」と「二次流通非購入者(フリマアプリを使わない人)」を比較すると、直近6カ月の間に化粧品/コスメを一時流通で購入した額が、前者の方が約2.6倍だったこともわかりました。「二次流通のせいで、一次流通で商品が売れなくなるというのは大きな誤解」と山口氏は説明します。むしろ、メルカリで試し買いするユーザーを増やすことが、一次流通市場の活性化につながると証明されたといえます。

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3つ目は、二次流通市場のデータからユーザーのインサイトを深掘りできる点です。メルカリとアイスタイルのデータを連携することで、ブランド別、カテゴリー別に、月次の取引件数や取引金額を分析して、購入者像を浮かびあがらせることができるようになりました。たとえば「10代・20代向けのプチプラブランドの商品を、メルカリでは40代が多く購入している」といった一次流通市場のデータではみられない消費者行動が起きています。

勝並は「メルカリで試し買いをしているユーザーは、ブランド側からすると顧客リストに入っていない可能性が高い。けれど見方を変えれば、『わざわざメルカリで検索してサンプルを購入する』という、ブランドに対して非常に興味・関心の強い潜在顧客であるともいえる。こうしたこれまでとは違う角度からのユーザーインサイトを読み解きながら、新規顧客創出に貢献できればと考えている」として、ブランドのニーズに応じて個別にデータが提供できると話します。

メルカリとアイスタイルが目指す未来

2021年10月1日からは、@cosme SHOPPINGでメルペイ(メルカリを通して支払いができるスマホ決済)が利用可能になりました。メルカリで売上金(メルペイ残高)を貯めて@cosme SHOPPINGで使うという流れができたことで、「メルカリでブランド名を検索している人に対し、@cosme SHOPPINGの商品ページへ誘導する」「メルカリでサンプルを探している人に対し、正規品のサンプルを購入できる@cosme SHOPPINGの『TRY at HOME』を紹介する」などのアプローチが実現します。

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まずは2021年11月1日〜15日に、メルカリと@cosmeで共同キャンペーンを実施。メルカリの商品紹介ページから@cosme SHOPPINGの商品紹介ページへ誘導し、メルペイ利用を促進します。こうして徐々にメルカリと@cosmeの両方を利用するユーザーを増やしつつ、最終的にはメルカリと@cosmeのID連携を目指すとします。 

@cosmeの閲覧情報、@cosme SHOPPING(EC)や@cosme STORE(リアル店舗)での一次流通の購買データと、メルカリの保有する二次流通市場の商品別取引数や平均価格などの統計情報を合わせて分析することで、一次流通市場と二次流通市場をうまく使いこなしているリアルなユーザーインサイトを明らかにし、ブランドにとってこれまでのやり方ではコミュニケーションが難しかった潜在顧客へのアプローチを可能にする試みです。

「今回のアイスタイルとの取り組みのような、特定の業界カテゴリーに特化してメルカリにとってもグロース要因となる施策を行うのは初めての試みで、コネクト戦略の第一歩としてコスメ・美容市場でノウハウを蓄積し、他のカテゴリーへと広げていきたい」と入門氏も今後に向けて意欲を語りました。

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Text:野本纏花
Top image: 2021年10月開催「コスメ化粧品の二次流通市場に関する共同調査発表会」より。右からメルカリ株式会社 執行役員 Mercari Japan CBO兼CMO 野辺一也氏、株式会社アイスタイル代表取締役 吉松徹郎、同データ戦略推進室長 勝並明子

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