2025年5月28日開催のウェビナー「年間100万人が視聴!@cosmeライブショッピングの秘密」では、株式会社アイスタイルリテール リテールカスタマーエクスペリエンス本部 リテールデジタルコンテンツ部で「教えて!美容部員さんライブショッピング」の企画立案とディレクターを担当する山田沙季と、実際に配信の出演者として活躍する福井智之が、同サービスの実践から得たライブ配信における“視聴者との距離を縮める接客”のコツを紹介しました。
国内ライブ配信の滞在人数×滞在時間はコロナ前と比べて約4倍に。EC市場も拡大中
日本ではコロナ禍をきっかけにライブ配信市場が拡大し、視聴時間はコロナ前の約4倍に増加。視聴者の約54.8%が実際に商品を購入しているという調査結果もあり、とくに20〜30代の購入率が高いのが特徴です。EC市場全体も成長を続け、2025年6月には「TikTok Shop」が日本正式導入されるなど、ライブコマースを取り巻く環境はますます活発に。
こうしたなか、2021年に始まった@cosmeの「教えて!美容部員さんライブショッピング」は、2025年5月に累計視聴者数が200万UUを突破。@cosmeの公式EC「@cosme SHOPPING」において実店舗のような接客体験をオンラインで提供する人気コンテンツに成長しています。
ECの満足度を高める「教えて!美容部員さんライブショッピング」
教えて!美容部員さんライブショッピングは、実店舗の店頭で豊富な接客経験を持つ@cosme美容部員が出演し、売れ筋商品やおすすめ商品を紹介する毎週定期配信のライブ配信番組です。ブランドを横断した豊富な知識を持ち、中立的な立ち位置である@cosme美容部員が視聴者のお悩みなどテーマにそって寄せられたコメントにリアルタイムで回答し、視聴者の商品理解やお買い物をサポートしています。平均視聴者数は2025年7月現在約6,000名を超えます。
アイスタイルリテール リテールカスタマーエクスペリエンス本部 リテールデジタルコンテンツ部で教えて!美容部員さんライブショッピングの企画立案とディレクターを担当する山田沙季は、「ECは、買いたいものがすでに決まっている人にとっては便利だが、買いたいものがまだ見つかっていない人にとっては、自分に合ったアイテムを一から見つけ出すことが実店舗より難しい。とくに化粧品は購入時に8割以上の女性が悩んだことがあると言われるほど色味や成分など悩む要素が多い商材。教えて!美容部員さんライブショッピングは、視聴者がECで自分に合うアイテムを見つけられずに失望する経験を少しでも減らそうと取り組んでいる」と説明します。
@cosme TOKYOの美容部員で、教えて!美容部員さんライブショッピングの出演者としても活躍するアイスタイルリテール リテールカスタマーエクスペリエンス本部 リテールデジタルコンテンツ部 福井智之も「対面接客と同じように、コスメ選びがよりわかりやすく、楽しい体験になるようにという想いで日々出演し視聴者と向き合っている。教えて!美容部員さんライブショッピングは、対面接客の延長線上にある」と想いを語ります。
視聴者が思わずコメントしたくなるように投げかけ、会話し、引き込む
福井は「@cosme TOKYOなどの実店舗では、@cosme美容部員が1対1でじっくりと接客。いっぽうライブ配信の醍醐味は『インタラクティブコミュニケーション』、つまり双方向のやりとりが1対N、もしくは1対1対Nでできること。視聴者が知りたいことをコメントして、出演者が答えるというやりとりによって、より深い納得や理解、そして共感といった感情を多くの視聴者と共有することができる」といいます。そしてとくに視聴者の「自分ごと化」を促すために有効な3つの手立てを紹介しました。
回答のハードルが低い選択肢質問を投げかけ
1つめは視聴者も自分のことを「伝えたい」「知って欲しい」と思っているという気持ちに寄り添うとともに、選択肢を提示し回答しやすい質問を投げかけることです。
2025年3月14日に配信した教えて!美容部員さんライブショッピングでは、春先に起こりがちな肌の不調をいくつか選択肢で示し、視聴者から自分に当てはまるものを回答してもらいました。
福井は「唐突に『ゆらぎや敏感っていつ気になりますか?』と問いかけても、パッとは回答しにくい。具体例をきちんと提示し、自分のこととして想像しやすい状態で『みなさんのこと教えて下さい!』と投げかけた。そして教えてくれたらそのコメントを読みあげて反応する。店頭接客でもお客様のことをまず知らないと、その後にどんな商品を紹介するか決めることができないように、この寄り添う姿勢はすごく重要だと考えている」といいます。
店頭接客の会話を配信でも再現
2つめは一方的な情報の伝達ではなく、あくまで視聴者を接客し、会話しているのだと意識し、たとえば手元に商品がないからこその香りや質感に対する質問や、「自分の肌状態に合うのかどうか」等、視聴者が自分ではわからないからプロに聞きたいという質問に丁寧に答える余裕を持つことです。「色味をお見せする時には『見えてますか?』『伝わってますか?』と確認するようにしている。こうした気遣いや心遣いも、ライブショッピングが対面接客の延長線上にあるという考えから大切にしている」(福井)
インパクトのある視覚ポイントを作る
3つめは、商品の魅力を視覚で伝える工夫で、例えば、サイズ違いを並べて見せたりすることで視聴者が思わずコメントしてしまうポイントを作ることです。「温活ベルトを紹介した際は、実際に同商品を身につけて出演したところ、『福ちゃん体張っている』といった共感のコメントや、視聴に熱中しているコメントをいただけた」と福井は振り返ります。
KPIはコメント件数。ただし半期ごとの累計で評価
山田は教えて!美容部員さんライブショッピングの重要目標達成指標(KGI)は視聴ユニークユーザー数、重要業績評価指標(KPI)はコメント件数と設定し、とくにコメント件数は視聴者との双方向コミュニケーション(インタラクティブコミュニケーション)品質のバロメータと位置付けて重要視しているといいます。
前述のように出演者が投げかけ、視聴者が反応して質問する、それに出演者が反応して答える、このラリーが行われることで、配信が盛り上がっていきます。だからこそ、コメント数は視聴者とのコミュニケーションがどれだけ成立しているかを示す、重要な指標というわけです。
前項で紹介したように視聴者の自分ごと化を促したところ、直近のコメント件数は前年比160%以上アップしているといいます。
一方で山田は、コメント件数を稼ごうとするあまりむしろ接客から遠ざかってしまった下記の失敗3つをきっかけに、コメント件数を配信ごとに評価するのではなく、半期ごとの累計で評価することにしたといいます。
コミュニケーションを詰め込みすぎた
1つめは、出演者からの質問の投げかけを多くしすぎたために、返ってきたコメントも多すぎて拾えない状態になってしまい、結果、相互コミュニケーションが疎かになってしまったケースです。限られた配信時間の中で、視聴者にとって満足度の高い相互コミュニケーションを維持するには、質問の投げかけ数を絞る必要があるという学びになりました。
新規視聴者を置き去りにしてしまった
2つめは常連の視聴者とのやり取りが多くなってしまい、新規視聴者を置き去りにしてしまったケースです。ファンを作るために「常連トーク」は必要ですが、新規視聴者のコメントを読む頻度が減ると新しい層の獲得はし辛い状態になってしまいます。「ファン化」「新規視聴者のリピート化」を両立するコミュニケーション設計が重要だという学びになりました。
演出先行の配信になってしまった
3つめは「これをやれば絶対に盛り上がるだろう」と演出先行の配信になってしまい、肝心の視聴者の自分ごと化を促すアプローチが十分でなかったケースです。
配信が回を重ねるごとに、学びの要素が多い配信、たとえばテクニックを紹介するような配信では視聴者が出演者の話に聞き入ったり、画面に集中するとコメントがつきにくくなる傾向もわかってきました。そうした配信でコメント件数というKPIを意識しすぎると、かえって視聴者の需要から離れた内容になってしまいます。そのため、教えて!美容部員さんライブショッピングでは、KPIを半期ごとの累計で評価することにするとともに、視聴者とのコミュニケーションを活性化する「コメント件数をしっかり稼ぎながら盛り上げる配信」と@cosmeならではの「じっくり情報提供をする配信」の2つに役割を分け、その両輪でコミュニケーションを設計し、支持を伸ばしています。