韓国アモーレパシフィックの新スキンケアブランド「mimo by MAMONDE」が、10~20代を中心に人気を集めています。韓国ダイソー専売の低価格コスメながら、本格的な成分と“映える”パッケージで話題沸騰し、発売から8カ月で累計販売数200万個超を記録した同ブランドは、新たなブランド戦略の成功例として注目されています。
Mamondeのセカンドブランドとして誕生、Zalhpa世代に大人気のmimo by MAMONDE
2024年9月にローンチされたアモーレパシフィックの新スキンケアブランド「mimo by MAMONDE(ミモバイマモンド 以下mimo)」は、同社の中価格帯ブランド「Mamonde(マモンド)」のセカンドブランドでZalhpa世代(Zとアルファ世代の総称)の肌悩みに根本的なソリューションを提供するというミッションのもと、Mamonde製品の核となる成分から企画された「ミニマルビューティブランド」です。また、コストパフォーマンスを重視する消費者が増えた昨今の韓国ビューティ市場を攻略するために、アモーレパシフィックが初めてローンチした韓国ダイソー専売ブランドでもあります。商品累積販売数は販売開始から4カ月時点で100万個を突破。発売から8カ月が過ぎた2025年4月末時点では200万個を超えたと報道されています。
2025年6月現在mimoは、バラ由来成分+ヒアルロン酸を主成分とする「Rosy-ヒアルロン」ラインと、牡丹由来成分+レチノールの「Peony-チノール」ラインの商品を4種類ずつ、合計8商品を展開しています。商品価格はいずれも1,000〜5,000ウォン(約110〜550円)台で、Rosy-ヒアルロンラインは、リキッドマスク、トナー、アンプル、クリームをラインナップし、保湿と水分補給にフォーカス。一方、Peony-チノールラインは、トラブルクレンジングフォーム、毛穴パッド、毛穴アンプル、トラブルバームと肌トラブルのケアに特化した商品を提供しています。
mimoは「安くてかわいいのに効く!」とユーザー自らが投稿したくなる製品コンセプトと、若年層に馴染みの深い韓国ダイソーという販売チャネルが相まって、大規模な広告キャンペーンを行わなかったにもかかわらずクチコミやSNSを中心に人気が広がり、短期間で消費者の支持を獲得することに成功しました。
主要商品は入荷と同時に品切れ状態が続いているとされ、オンラインで人気を獲得した商品をピックアップして紹介する「韓国ダイソーモールSNSホットアイテム」にも選出されています。製品クオリティと普段使いに負担とならない価格設定、そして、ピンク(Rosy-ヒアルロンライン)と淡いパープル(Peony-チノールライン)を基調にした、スマートで“映える”パッケージデザインもヒットの一因となっているようです。
Rosy-ヒアルロンラインとPeony-チノールライン
出典:韓国ダイソー公式サイト
mimoのなかでも最も売れ行き好調とされている商品は「Rosy-ヒアルロン リキッドマスク」です。Mamondeが開発した花を原料とする効能成分を配合した商品で、肌の保湿および水分補給、古い角質を除去する作用が特徴です。また毛穴トラブルの緩和や鎮静効果をうたう「Peony-チノール トラブルバーム」も、過剰な皮脂に悩む10~20代から人気を得ています。
アモーレパシフィックは、2024年末に韓国ダイソーの大型売場である釜山海雲台マリンシティ店にmimoの体験型ショールームをオープン。8種類の商品をすべて試せるようにしています。また、mimo商品は、各地域の韓国ダイソーおよび韓国ダイソーのECモールで購入可能です。
韓国ダイソー 釜山海雲台マリンシティ店内にある体験型ショールーム
出典:アモーレパシフィック公式サイト
「お母さんが使う化粧品」のイメージから脱却したMamonde
アモーレパシフィックのMamondeは2025年で34周年を迎える老舗ブランドで、韓国国内市場では盤石な認知度を誇る反面、デザインもシンプルで「お母さんが使う化粧品」というイメージが定着していた経緯がありました。そこでアモーレパシフィックは国内外市場のZ世代を取り込むために、2023年10月にMamondeの大々的なブランドリニューアルを実施、中価格帯かつ信頼できるブランドとして若い世代の心を掴みました。
そしてそのブランド体験をZalpha世代にも拡大させるために企画されたのがmimoでした。mimoというブランド名には、必要最小限のMamondeという「My Minimal Mamonde(私のミニマルなマモンド)」との意味が込められています。
アモーレパシフィックの狙い通り、mimoを入り口にMamondeを使用したことのない新規顧客が大量に流入。Mamondeが築き上げてきたブランドへの信頼と高い製品力、そしてコストパフォーマンスを両立させるというアモーレパシフィックの戦略は的中し、mimoとMamonde双方に好循環をもたらしています。
マーケティングは商品を直接体験できるオフライン売場が中心
では、mimoは消費者にどのように受け入れられているのでしょうか。韓国ローカルのSNSには以下のような書き込みがありました。
「思ったよりきめ細かくて水分感も感じる。さっぱりするし顔にツヤもでる。なんだこれは…結構やるじゃない(中略)バラの香りがするのもとてもいい!」(Rosy-ヒアルロンモイストクリームを使用したユーザー)出典:NAVER blog
「正直、これに価格面で勝てる韓国ダイソー(専売ブランド)はないと思う。(他ブランドの)アンプルは安くなっているとはいえ、1万ウォン(約1,100円)以下のアンプルは見たことがない」(Rosy-ヒアルロンモイストアンプルを使用したユーザー)出典:NAVER blog
「ベタつきや重たい感じがまったくなく、とても軽く肌に吸収される。(中略)値段も安いし容量も十分だから気軽に毎日たっぷり使えてよかった」(Peony-チノールポアアンプルを使用したユーザー)出典:NAVER blog
「トラブルバームなので重さがあってしっかりしていると思っていたが、実際はみずみずしいエッセンスタイプ。個人的には油分を感じるバームタイプより、この方が気に入っている」(Peony-チノールトラブルバームを使用したユーザー)出典:NAVER blog
アモーレパシフィックでは、今後も消費者がコストパフォーマンスに優れた価格でmimoの商品を購入できるよう、大規模な広告費用を投下せず、商品を直接体験できるオフライン売場を中心に効率的なマーケティングを実施していく計画だとしています。たとえば、前述した韓国ダイソーの海雲台マリンシティ店のような体験型ブランドショールームを、他エリアにも順次追加していく方針が明かされています。
エチュードのセカンドブランド「Play 101 by ETUDE」も登場
アモーレパシフィックはmimoに続き、2025年2月にはメイクアップブランドのETUDE(エチュード)の韓国ダイソー専売セカンドブランド「Play 101 by ETUDE(プレイ 101 バイ エチュード)」もローンチしました。
こうした施策からは、低価格な韓国ダイソー専売のセカンドブランドで新たな顧客層を開拓しつつ、本家ブランドの価値を高めるmimoの成功事例を、ひとつの戦略モデルとして確立していく意向も読み取れます。
Play 101 by ETUDEによって、mimoの成功事例をメイクアップアイテムでも再現できるとすれば、「韓国ダイソーを起点としたリブランディングや新規顧客獲得」という方程式は、アモーレパシフィックのみならず、ほかの大手美容企業にとってもトレンドになりそうです。
Top image: アモーレパシフィック公式サイト