2026年の美容業界のトレンドはいかに。アイスタイルによる美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディア「BeautyTech.jp」では、グローバルにおいて、ビューティ、テック、ウエルネス、パーソナライズを掛け合わせた「メタボリックビューティ」への注目度アップや、「センソリアル」な五感への刺激や人間らしさに価値を感じる志向性の高まり、また、「C-Beautyの躍進」の状況などを報じています。
この記事はBeautyTech.jp 2026年1月5日公開の記事を再構成しています
「AI」はますます日常に浸透。若々しく健やかに長生きすることを意味する「ロンジェビティ」もなお高い注目度を維持
2025年に世界で開催された主要なテックカンファレンスでも話題の中心はAIでしたが、2026年はその進化がさらに加速。単に質問に答えるだけでなく、設定された目的のために自ら意思決定をして動く「エージェント型(自律型)AI」が、秘書のように個人の生活をサポートしたり、職場で実務を担ったりするようになる活用はますます進むと考えられます。
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美容大手企業もすでにこうした技術の導入を始めています。たとえばロレアルは、AIが自動で広告予算を最適化し、売上予測を行うシステムを運用。ECプラットフォーム各社×複数ブランド×複数市場のデータにもとづく売上予測に沿って、効果が高い広告には予算を増やし、低い広告からは予算を引くという調整を自動で行うなどしています。またユニリーバは、工場やサプライチェーンで「自律プロセス(autonomous processes)」により最適化や自動意思決定をしていると公表しています。
また引き続きトレンドキーワードとして注目され続けているのが、若々しさを保ちながら健やかに長生きすることを意味する「ロンジェビティ(Longevity)」です。ライフスタイルや生体データをもとにAIがパーソナライズしたエイジングケアを提案したり、将来の病気の可能性を未然に予知するなど、予防医療に関わるイノベーションが活発化するに伴い、より多くの生活者にとっても、こうした技術がますます身近になってきています。
そしてロンジェビティを希求する生活者は、臨床レベルの高機能・ハイテクなソリューションを日常のウエルネスツールとして取り入れる方向にますます向かっています。ユーロモニターの調査でも、4人に3人がアプリやデバイスで体の内部の状態をトラッキングしており、35%が現状の健康のためのソリューションに何らかの不満があるため、新しい方法や技術を探しているといいます。
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これは、自身の体の内側で何が起きているのか知ることが美と健康につながるとの考え方が生活者に浸透していることを意味します。アプリ、デバイス、ホームキットなどによる在宅検査・計測と接続した「常時モニタリング」型の体験が一般化するにつれ、サービスも進化し医療と交錯していくことが示唆されています。
美容、テック、ウエルネス、パーソナライズが融合する「メタボリックビューティ」
調査会社のミンテルも2026年はビューティとウエルネスが本格的に交差する「転換点」になると示唆。つまり、血糖値、睡眠、ホルモンバランス、ストレスなどの体の内側の状態を、ウェアラブルデバイスなどを通じて正確にデータ化して各ユーザーにパーソナライズしたケアや製品提案を行うウエルネス診断的ツールを、ビューティブランドが開発する動きが進行するというのです。
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ミンテルは「バイオマーカー検査、代謝モニタリング、バイオインテリジェンス(ライフサイエンス)などの技術は一般の人々も広く利用しつつあり、たとえば、エネルギーや水分補給、細胞修復のためのカスタマイズされたソリューションなどはすでに実現可能」と説明。ウエルネス重視のビューティ企業にとって2026年は重要な年と位置づけ、ビューティ×テクノロジー×ウエルネス×パーソナライズを掛け合わせた「メタボリック(代謝)ビューティ」に注目しています。
さらにミンテルは、2030年までには自撮り画像や簡単な検査キットで得られる「肌や髪の状態」そのものが、体内の健康状態を示す重要な指標(バイオマーカー)として認識されるようになると予測。体内の代謝の状態を映し出す肌や髪をケアする保湿剤や美容液などの化粧品は、贅沢品ではなく不調を予防する必要不可欠なセルフケア製品であり、それを開発・提供するビューティブランドは「人々の健康を守る門番」のような立ち位置になるとしています。
完璧なデジタルに飽きた生活者が求める「五感への刺激」や「快適な居場所」、あえて「不完全」であること
一方2026年、生活者は「効く・便利」といった機能的価値だけではなく、感情的な心の動き(エモーショナル)、倫理観との整合性(エシカル)、そして、感覚的な満足(センソリアル)を同時に求めるようになるともミンテルは予測しています。これまでは効能や機能性が主役で、クリームや美容液の肌触りや香りは従属的なものとされていましたが、購買の主要ドライバーが「感覚刺激」という体験に移るというのです。
ただし、効能や高機能性が不要になるのではありません。あくまでも商品における絶対条件であり続けるため、「特定の効能を“記憶に残す”のが体験設計の役割」となるといいます。そして、ニューロサイエンス(神経科学)など科学的に裏づけられた、香りやテクスチャーなどのセンソリアル・デザインや、VRといった没入型技術を推進・取り入れることが、継続的な使用や情緒的ロイヤリティを押し上げるとしています。
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同時に、次々に現れる新技術や新製品、めまぐるしいSNSのトレンドから離れ、自分にとって快適な場所(コンフォートゾーン)を大切にし、シンプルで続けやすいルーティンを好む層も増えているとの指摘もあります。
そして、AIが生成した極度に人工的な画像や、多用されるフィルター、過度に磨かれたマーケティングなどへの反動から、人間的で感情的な、生々しい現実感があり、ときに不完全な美が支持されることが予想されています。不揃いでも人が作ったことが伝わる誠実さが尊重され、手仕上げのパッケージの微細な個体差や、未加工の舞台裏動画のような「クラフトの痕跡」を見せることで、「生活者は“欠点を隠す圧”から解放され、自分の価値観(真正性・個性)をシグナルできる」との分析もあります。
上記のような“2026年の生活者の気分”は、ピンタレストが発表した「Pinterest Predicts 2026」においても同様の傾向が提示されています。ピンタレストでは、2026年のピンタレストユーザーの傾向を「感情的な安心感/居場所(Comfort & Belonging)」「コピーではなく自分流の編集(Curating, not copying)」「地に足のついた楽観(Grounded optimism)」の3つの柱で定義。
つまり、日常的な快適さを重視する人が多く、ノスタルジックで癒される質感が支持され、トレンドにのる場合も自分らしいものだけを選び、自分にとっての真正性を優先する生活者像が浮かび上がります。あわせて、先の読めない今の時代にあって、“今ここ”の気分を上げるための没入感や非日常感を提供できるものが流行るという見立てです。
ピンタレストが予測した21のトレンドキーワードには、ビューティの分野でも生活者意識を理解するうえで興味深いものが含まれていました。たとえば、グミのぷるるんとした質感やラバーのようなぷにぷにした触感が人気を得て、ゼリーチークやぷっくりネイルが流行するという「Gimme Gummy(グミタッチ)」、「完璧じゃない美しさ」の表現として、アシンメトリー(左右非対称)やミスマッチ、2トーンのリップやアイメイクなど、あえて「ずらす」ことで個性を出す「Glitchy Glam(アシメ・ビューティ)」、宇宙やSFの世界をテーマに、ホログラムやオパール調のきらめきアイシャドウなど、日常を離れ異次元への脱出を感じさせる「Extra Celestial(銀河系ルック)」などです。
中国発「C-Beauty」のグローバル進出加速
また、ユーロモニターは「Global Consumer Trends 2026」において、東アジア発、とくに中国企業が「手頃な価格、イノベーション、そしてデジタルファーストの体験を組み合わせることで世界的な影響力を高めている」として、美容業界においても、2025年グローバルでブームを巻き起こしたK-Beautyに続き、C-Beautyの海外進出の加速を予想しています。
ユーロモニターは2025年7月の段階で、多くの新興ビューティブランドの台頭に伴い中国国内での競争が激化したことを受け、地理的な近さに加え、ECプラットフォームやTikTokなどのソーシャルメディアを通じた認知・購入といった、デジタル主導の生活者行動に類似性が高い東南アジアで、C-Beautyブランドが積極的に展開を始めていると伝えています。
あわせて、C-BeautyはR&Dと生産のスピードが速く、手頃な価格でも新しい色や質感の商品を次々と投入できる強みがあり、たとえば、インドネシアのマス向けカラーコスメ・カテゴリーでは、中国発の上位7ブランドの合計シェアが2019年の2%から2024年には15%超に達したといいます。さらにここにきて、SHEIN傘下のコスメブランド「SHEGLAM(シーグラム)」が世界展開を拡大させるなどグローバルでの認知が進み、中国ブランドの見られ方に変化がおきました。「低価格=低品質」の単純なくくりではなく、C-Beautyの費用対効果に価値が見出されてきています。
米大手美容小売アルタ・ビューティが中国ブランド「Florasis(花西子、フローラシス)」と「FlowerKnows(フラワーノーズ)」の取り扱いをスタートしたとの報道もあり、カラーコスメ領域でのC-Beautyブランドの海外進出・拡張は確実に進むとともに、スキンケアにおいてもC-Beautyの海外での活発な挑戦が2026年は予想されます。
BeautyTech.jpによる最新のイノベーション動向のインプットを盛り込んだ「美容業界イノベーションプログラム」
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本記事でご紹介したトレンドは、美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアBeautyTech.jpが発信する膨大なイノベーション情報のごく一部です。BeautyTech.jpは、単なるトレンドの紹介に留まらず、国内外のビューティ・テクノロジー・サイエンス・社会情勢といった多角的な視点から「美容業界の未来」を捉え、ビジネスのヒントを発信する専門メディアです。イノベーションが生活者の意識をどう変え、業界構造をどう再定義していくのか。BeautyTech.jpでは常に、その本質を問い続けています。
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