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コロナ禍で加速!香港で支持される@cosmeから始める中華圏マーケティング

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@cosmeは2018年に香港に進出。2021年には、香港の20代〜30代女性の3分の1以上にリーチできるオフライン店舗として、またオンラインでは信憑性の高いクチコミが投稿されているプラットフォームとして、香港の生活者に認知・支持されるようになりました。今後は、日本から中国大陸へのマーケティング導入地点としての活用も見据えています。

コロナ禍の中、ストアのローカル会員は21万人超に

istyle Retail (Hong Kong)は、20186月、コスメセレクトショップ@cosme STOREの香港1号店を、香港で最も繁華な地区のひとつである九龍・尖沙咀にオープンしました。202111月現在は同じ九龍エリアにもう1店舗と、新界東部の新興住宅街エリア、香港島エリアに1店舗ずつの計4店舗を展開し、各店舗で約400の日本の化粧品ブランドの商品を販売しています。

@cosme STOREの香港1号店(星光行店)は20223月に閉店いたしました

202111_global01新界東部の新興住宅街エリアにある@cosme STORE 東港城店

香港の女性たちにとって日本の文化や化粧品はとても身近な存在です。新型コロナウイルス流行前の2019年、香港から日本への訪日客数は年間のべ230万人でした。これは世界の国・地域別にみると、中国、韓国、台湾に次いで第4位のボリュームです。香港の総人口約750万人からすると、3人に1人が訪日していたことになり、香港の生活者の日本への関心の高さ、関係の深さがうかがわれます。

コロナ禍で日本を訪れることができなくなった香港の生活者は、それまで日本でしていた買い物を香港内で行うようになりました。それに伴い@cosme STOREの香港ローカル会員の数も増え、202111月現在、会員数は21万人を超えています。

今では香港の20代~30代女性の約15%が会員とみており、「数値的な統計ではないが、年間を通じた来店客層を鑑みた感覚的には、20-30代女性のおそらく3分の1以上にリーチしているのではないか」と香港の@cosme STOREの運営責任者であるistyle Retail (Hong Kong) Co., Limited 代表取締役 山本佑樹はいいます。

パンデミック前は、中国大陸から香港を訪れる人々でも賑わっていた香港の@cosme STOREは、観光客の往来が無くなったことで、「香港の人たちに愛される店にする」という進出当初の目標に沿った、純粋に香港ローカルの生活者に向けた店舗作りに注力することになりました。

店舗の品揃えについて、山本は「現在は100%香港の生活者の嗜好を反映している。以前は中国大陸からの旅行客が大量購入するアイテムに隠れてわかりにくかったが、日本の@cosme STOREで人気のものがそのまま人気となり売れていく傾向が強いことがわかってきた」といいます。そしてその傾向は「日本のインフルエンサーをSNSでフォローし、情報収集して、気になったアイテムを@cosme STOREで試し、購入し、実際に使ってみる、という流れのなかで生じている。使ってみて『確かにいいものだ』という実感が、@cosme STOREへの信頼にもつながっている」とします。 

「『@cosmeにいけば良いものがある』という意識の下地ができ、定期的に来店して回遊し、購買してくださる。それが積み重なって、店舗全体でいい循環が生まれている。そんな『ローカルに支持される店』であることは、今後、また香港に観光客が戻ったときにも、観光客への説得材料として大きな強みになるだろう」(山本)

@cosme STOREでのプロモーション効果が他の販売チャネルにも波及

@cosmeにいけば良いものがある」というユーザー意識は、これから売り出したい無名ブランドのプロモーションにもプラスに作用しています。

たとえば、香港に初進出した際は認知度がなかった「b.glen(ビーグレン)」や「philosophy(フィロソフィー)」は、日本の化粧品の購買意欲がある@cosme STORE来店客を、販売員が入店しての積極的なプロモーションでとりこみ、今では@cosme STOREの売り上げランキングの常連となっています。

両ブランドとも、現在は香港内に複数の販売チャネルをお持ちですが、「売り上げを作るのもさることながら、接客時のお客様の反応が圧倒的に良いのも@cosme STOREだと言ってくださっている。@cosme STOREによるランキング棚や新商品や季節商品などを集めた企画棚、公式SNS、特定会員グループへのサンプリングトライアルイベントなどでの無料のご紹介もフックとして活用していただきながら、お客様に、どのように自社ブランドを知っていただき、試していただき、購買につなげていくか、を綿密に考え、アプローチをされているブランドは、総じて数字を作れている」と山本は説明します。

202111_global02店舗スタッフ手書きのPOPを配した星光行店のランキング棚

また、@cosme STOREの店頭でクチコミや、期待できる効果などの情報を、POPやサイネージで発信すると、他の販売チャネルでも売上が増加する、という影響力もあるといいます。「来店客が香港の20代〜30代女性の約3分の1ということは、イノベーター理論におけるアーリーマジョリティーのゾーンに入ってきている。そうした『ちょっとおしゃれで美意識が高い人』たちが@cosme STOREには集まっており、購買し、クチコミや情報を拡散させていくことで、売り上げの全体的な底上げにつながっている」(山本)

202111_global03店舗内に設置したプロモーション棚

オンラインでは台湾のクチコミ情報も閲覧可能な環境に  

一方で、オンラインメディア「@cosme(香港)では、商品情報、クチコミ、美容トレンド記事、ランキングなどを公開しています。

タイアップ記事やクチコミ投稿を促すモニター企画も実施可能で、これまで複数のブランドがタイアップ記事を利用し、自社ECに誘導するなどの施策をおこなっています。また「ettusais(エテュセ)」など、ベストコスメアワード受賞商品の訴求を目的に、店舗のプロモーション棚と連動したタイアップ記事を公開し、店舗での売上成果を上げているブランドもあります。

201910月に香港版アプリも正式公開しました。このアプリは日本の@cosmeアプリに近いUIで、@cosme(香港)の各コンテンツを閲覧できます。202111月現在の会員数は65,000人、商品登録数24,000件、香港で投稿されたクチコミ数は約32,000件で、2021年春にはECサイトもオープンし、実店舗とECの両方で共通して使えるポイントカード機能も実装したことで、店舗の新規会員のアプリ会員化、日本の@cosme@cosme STOREのような会員データ統合も進んでいます。

今後はアプリでクーポンを取得し、@cosme STOREで提示することでサンプルを受け取れるサンプルクーポンなど、オンラインから@cosme STOREへの送客機能をより強化していく方針です。

202111_global04香港版アプリの主な機能

「香港では新製品の売り出しのタイミングなど、実は台湾との共通点が多い。そのため、台湾の@cosme18年蓄積してきたデータベースを活用して、初期の商品登録など、香港のデータベースの土台づくりに役立てた」と話すのはアイスタイルグループの台湾子会社で、台湾と香港の@cosme オンラインメディアを運営統括するi-TRUE Communications Inc.の代表取締役社長 陳宗明(Justin Chen)です。

2021年夏には近しい書き言葉(中国語繁体字)を採用している台湾のクチコミも香港アプリで閲覧可能になりました。「同じ繁体字というだけでなく、もともと台湾@cosmeのクチコミはその信憑性から中国大陸や香港などからも閲覧されており、香港のユーザーにとっても価値ある情報だ」(陳)とします。同じ広東語圏で、地理的に香港と隣接する広東省の人口は日本の総人口と同等の約1.26億人であり、今後このマーケットへ@cosmeが切り込んでいける可能性も陳は示唆します。

また、香港ではオンラインメディア開設から2年で商品情報やクチコミのデータボリュームがまとまってきたことで、「ランキングやベストコスメの商品カテゴリの細分化を、信憑性を担保しながら行うことができるようになってきている」(陳)といい、今後のサービス開発に意欲を見せます。2020年に初開催し、香港内外の約50メディアに露出して話題となった香港の@cosme ベストコスメアワード「@cosme 2021年度香港美妝大賞 THE BEST COSMETICS AWARDS」は、2021年は129日に日本、台湾と同時発表となりました

香港・台湾は日本国内と中国大陸の中間にあるマーケット

山本は、現在の香港における@cosmeの存在感を次のように強調します。「お客様は新しい日本の化粧品に出会いたくて、@cosme STOREに立ち寄ってくださる。購買意欲のある状態の来店客に対し、ブランドは販売員を入店させてのプロモーションが可能で、オンライン施策で店舗やECに送客していくこともできる。日本の化粧品だけにフォーカスして、そうした環境を作れているリテールは他にはない」。

こうした香港ローカルの生活者との信頼関係を下地とした店舗に、コロナ前には年間6,000万人(中国大陸からは5,000万人強)にものぼったインバウンドが戻れば、「香港生活者に人気の商品が『ローカルに人気』という説得力を持って、観光客に受け入れられるだろう」と山本は考えます。香港ニュースメディアでは、20222月に北京で予定されている冬季オリンピック開催が見えた段階で、香港と中国大陸の往来再開が調整されるとの報道もあります。

「香港や台湾では日本で人気のものが共通して売れるということ、日本の@cosmeとの付き合いの延長で、香港・台湾という海外チャネルも同じように使えるということを知ってもらいたい。『中国に頑張って出るぞ』という意識ではなく、国内の少し延長として、もっと気軽に進出してもらって大丈夫な場所だ」と山本は強調します。

たとえば、中国大陸と比較して、香港へは関税フリーで輸出でき、化粧品はFDAの許認可申請が不要です。また香港の@cosme STOREは、原則買取仕入れであり、ブランド側での負担が少ない仕組みです。「日本の@cosmeと同様に、香港の生活者が気になる商品の商品情報やクチコミにアクセスできる状況をもっと作りだし、人気のものは仕入れて販売する循環を活発化していきたい」(山本)

日本の@cosmeランキングロゴ利用サービスなど、香港でのプロモーションにも有効活用できるサービスもあります。「香港市場自体はニッチな市場と考える向きもあるかもしれないが、香港から中国大陸へ波及させていくマーケティングも大いに描ける場だ」と中国進出を検討する日本ブランドへのメッセージとして山本は話します。

>>アイスタイルの地域別海外事業支援(香港)に関する概要およびお問い合わせはこちら

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